日本語の発音体系 大胆な試論 3
B 子音 舌や唇や口蓋が触れたり、口内の一箇所を強くすぼめる音。日本語の子音は、母音を融合させて発音する。
日本語の子音には、調音点によって八つの段階がある。
①わ(ゐうゑを) …調音点は唇の外側。ただし、「わ」以外は退化して消滅した。
② ばびぶべぼ/ぱぴぷぺぽ/まみむめも … 調音点は唇。「バ行」は上あごの外側を振動させ、「パ行」は上あごの内側を緊張させ、「マ行」は鼻腔を振動させて言い分ける。
「ば」と「ま」が同類である傍証として、トラさんで有名な「柴又」(しばまた)は、江戸時代以前は「嶋俣」(しままた)と言った。(竹内誠編『東京の地名由来辞典』東京堂出版)
③ふ … 調音点は唇の内側。「は」行のほかの音(は、ひ、へ、ほ)は調音点が喉頭に後退したが、「ふ」だけは唇の内側に残留した。これはおそらく、「う」が唇の外に調音点をもつため、「ふ」が前方に引っ張られつづけたためであろう。
④らりるれろ …調音点は歯茎直上部。舌をはじいて上あご上部を振動させる一瞬の音。
⑤たちつてと/だぢづでど/なにぬねの … 調音点は歯茎裏側上部。「タ行」は上あごの内側を緊張させ、「ダ行」は上あごの外側を振動させ、「ナ行」は鼻腔を振動させて言い分ける。
「だ」と「な」が同類である傍証として、「静かだ」の連体形が「静かな」となる。
⑥ ざじずぜぞ/さしすせそ … 調音点は上あご。「ザ行」は上あごの外側を振動させ、「サ行」は上あごの内側を緊張させて言い分ける。
⑦ がぎぐげご/かきくけこ … 調音点は軟口蓋。「ガ行」は下あごの外側を振動させ、「カ行」は下あごの内側を緊張させて言い分ける。
⑧はひへほ … 調音点は喉頭。「ハ行」は、古くは唇の内側が調音点で、「ふぁ、ふぃ、ふぇ、ふぉ」のような音であったが、「ふ」だけを唇の内側に残して、他は調音点が喉頭に後退し、現在の音になった。
「ハ行」が喉頭へと追放されたのは、上記の②のように唇周辺に多くの音が集中しているため、「玉突き」的に後ろへと追いやられたのかもしれない。
「は」が語中や音節末にくるときは、唇の外側の「わ」音に移行する(例「言はば」=いわば)。
このように「ハ行」は、歴史のなかで一家離散的な運命をたどった。
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