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家庭は父親を縛り付ける 2024/06/12

高校生のころ、父はリビングのダイニングテーブルに突っ伏して眠るのが日課になっていた。テレビを点けたまま晩酌の途中で寝落ちして、だらしなくイビキをかく姿は痛々しかった。酒量も多く、相当ストレスを溜めていた様子だった。本当は仕事も辞めたかったのだろう。

家庭を支えるというのは、ストレスフルな環境にひたすら耐えることなのだと、私はその日々で刷り込まれたのかもしれない。子供として「養われる」立場にいることは受け入れ難かった。結局私は実家から遠く離れた大学に逃げるように進学して、父を見捨てた。

いまの私には、いまのまま働いていても幸せにはなれないんだろうなぁ、という予感がある。結婚して身を固めてしまえば、簡単に転職もできなくなり、苦痛な仕事に潰されていくのだろう。父親のイメージというのは絶大で、「ああはなりたくない」という拒絶感と、「いつかはああいうふうになってしまうのだろう」という諦めが、私には拭いがたくある。楽しそうに働く男性を、そして仕事を通じて社会に貢献していく大人を、見ずにここまで来てしまった。

そういう父は、私の卒業後に転職して、現在はよくわからないけれど楽しそうに働いている。収入はけっこう減ったらしかったが、なんとか暮らしてはいけているらしい。父がそれなりに楽しそうでいてくれるというのは、子供としては気が楽だ。私もそうであるはずだが。

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