理念から行動へ:会社のマニフェスト作成にあたり
東京を拠点に活動しながら、国内外で多岐にわたるプロジェクトを手がけるエージェンシー、YL Projects (通称YL)。今年、私たちは新たな挑戦として、理念やビジョンを体現する「マニフェスト」の作成に取り組みました。このプロジェクトをリードしてくれたのはナタリー。彼女がこのアイデアに至った背景や、プロジェクトに込めた思いを語ります。
「来年、YLで何かやりたいことある?」
ちょうど昨年の12月、永田町のオフィス近くの寿司屋で、過ぎ去った一年を振り返りながら、次の年の計画についてチームで話していたときのことです。YLチームに加わってから3ヶ月が経ち、ようやく仕事やチームの雰囲気に慣れ始めた頃でした。その中で、新しいメンバーとして任されたのが、会社のウェブサイトをチェックし、改善できる点がないか考えて提案することでした。
大トロの握りを頬張りながら、ふと思いついたことがあります。
「YLのマニフェストを作ってみたら面白いんじゃないかな。」
以前から創業メンバーと親しくしていたこともあり、外部から見ていたYLの姿を、今度は内部から改めて見つめ直すことに大きな意義を感じました。日本のような均一性が強調される環境の中で、バイリンガルのクリエイティブエージェンシーとして活動することは、独自の課題と可能性を秘めています。異なる価値観や仕事観、そしてコミュニケーションスタイルが交錯する中で生まれる独特のダイナミズムは、私たちの挑戦であり、大きな強みでもあります。
スウェーデン出身でありながら日本で長年生活してきた私は、日々の仕事を通じて文化の違いを学んできました。スウェーデンでは、自分の期待や意見を率直に伝える文化が根付いている一方、日本では「察すること」や「ニュアンス」を重視したハイコンテクストなコミュニケーションが求められます。この違いは、チームビルディングやコミュニケーションにおいて時に難しさを生むこともありますが、それ以上に多様な視点を得る貴重な機会を提供してくれます。異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まり、それぞれの個性を尊重しながら互いに磨き合うことで、共に成長できると感じています。そのためにも、YLの「らしさ」とは何か、その核に向き合い、深く掘り下げるプロセスが必要でした。
私たちは何を信じているのか?
どんな価値観を大切にしているのか?
未来にどんなビジョンを描いているのか?
これらの問いに向き合う中で、「どのような職場環境を一緒に作りたいか」といったテーマを深掘りするため、人事関連のアンケートも取り入れ、数ヶ月にわたりチーム全体で議論を重ねました。Miroを活用してビジョンボードを作成し、匿名にすることで、全員が率直に考えを共有できる環境を整えました。
そこには、職場環境に関する率直な意見だけでなく、まだ形になっていない挑戦したいアイデアや、これからYLで実現したいビジョンも自由に書き込んでもらうことにしました。同じような意見が集まることもあれば、まったく異なる視点や新鮮なアイデアが出てくることもあり、それらを通じて個々人にとって、そしてYL全体にとって何が大切なのかが徐々に明確になってきました。たとえば、丁寧でコンテキスト(文脈)を添えたコミュニケーションの重要性が挙げられます。
ポストイットとチームの意見を元に、Creative Director のYoichiroが重要な10項目を選び出し、マニフェストを作成しました。
下記、Yoichiroより。
私たちにとって、マニフェストの作成は、エージェンシーとしての独自性を深く掘り下げる重要な一歩でした。このマニフェストは、YLのアイデンティティと使命を明確に示し、共通の目標に向かってチームを一つにまとめると同時に、個々の個性を尊重する余地を提供するものです。
今年の初めに書き留めた言葉を振り返ると、小さなデジタル付箋に記したフレーズの一つひとつが、今もなお私たちの中心にある価値観を象徴していることに気づかされます。それらは、道徳観、幸福、そして未来へのビジョンという、YLの根幹を成すものです。そして、このマニフェストの作成プロセスは、一度きりの取り組みにとどまらず、私たちがより良いエージェンシーへと進化し続けるための出発点であり続けるのだと感じています。
Written by Nathalie Cantacuzino