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理念から行動へ:会社のマニフェスト作成にあたり

東京を拠点に活動しながら、国内外で多岐にわたるプロジェクトを手がけるエージェンシー、YL Projects (通称YL)。今年、私たちは新たな挑戦として、理念やビジョンを体現する「マニフェスト」の作成に取り組みました。このプロジェクトをリードしてくれたのはナタリー。彼女がこのアイデアに至った背景や、プロジェクトに込めた思いを語ります。


「来年、YLで何かやりたいことある?」

ちょうど昨年の12月、永田町のオフィス近くの寿司屋で、過ぎ去った一年を振り返りながら、次の年の計画についてチームで話していたときのことです。YLチームに加わってから3ヶ月が経ち、ようやく仕事やチームの雰囲気に慣れ始めた頃でした。その中で、新しいメンバーとして任されたのが、会社のウェブサイトをチェックし、改善できる点がないか考えて提案することでした。

大トロの握りを頬張りながら、ふと思いついたことがあります。
「YLのマニフェストを作ってみたら面白いんじゃないかな。」

以前から創業メンバーと親しくしていたこともあり、外部から見ていたYLの姿を、今度は内部から改めて見つめ直すことに大きな意義を感じました。日本のような均一性が強調される環境の中で、バイリンガルのクリエイティブエージェンシーとして活動することは、独自の課題と可能性を秘めています。異なる価値観や仕事観、そしてコミュニケーションスタイルが交錯する中で生まれる独特のダイナミズムは、私たちの挑戦であり、大きな強みでもあります。

YL 2024 チームの写真

スウェーデン出身でありながら日本で長年生活してきた私は、日々の仕事を通じて文化の違いを学んできました。スウェーデンでは、自分の期待や意見を率直に伝える文化が根付いている一方、日本では「察すること」や「ニュアンス」を重視したハイコンテクストなコミュニケーションが求められます。この違いは、チームビルディングやコミュニケーションにおいて時に難しさを生むこともありますが、それ以上に多様な視点を得る貴重な機会を提供してくれます。異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まり、それぞれの個性を尊重しながら互いに磨き合うことで、共に成長できると感じています。そのためにも、YLの「らしさ」とは何か、その核に向き合い、深く掘り下げるプロセスが必要でした。

  • 私たちは何を信じているのか?

  • どんな価値観を大切にしているのか?

  • 未来にどんなビジョンを描いているのか?

これらの問いに向き合う中で、「どのような職場環境を一緒に作りたいか」といったテーマを深掘りするため、人事関連のアンケートも取り入れ、数ヶ月にわたりチーム全体で議論を重ねました。Miroを活用してビジョンボードを作成し、匿名にすることで、全員が率直に考えを共有できる環境を整えました。

価値観のボード

そこには、職場環境に関する率直な意見だけでなく、まだ形になっていない挑戦したいアイデアや、これからYLで実現したいビジョンも自由に書き込んでもらうことにしました。同じような意見が集まることもあれば、まったく異なる視点や新鮮なアイデアが出てくることもあり、それらを通じて個々人にとって、そしてYL全体にとって何が大切なのかが徐々に明確になってきました。たとえば、丁寧でコンテキスト(文脈)を添えたコミュニケーションの重要性が挙げられます。

出てきたキーワード

ポストイットとチームの意見を元に、Creative Director のYoichiroが重要な10項目を選び出し、マニフェストを作成しました。

下記、Yoichiroより。

最初のマニフェスト「オーシャンズ11の精神」は、社内のワークショップでも挙がった「コラボレーション」というキーワードから着想を得ました。我々の社名に含まれる “Projects” という言葉には、各分野のプロフェッショナルが集まり、力を合わせてプロジェクトを達成させるという意味が込められています。

例えるなら、映画『ワイルド・スピード (Fast & Furious)』の「家族 (Family)」的な組織ではなく、『オーシャンズ11』のような組織。個々が自立して戦える力を持ちながらも、チームとして行動することで、より大きなプロジェクトを成し遂げる。そのイメージをマニフェストの一つ目に反映しました。ちなみにこの精神は、男性中心の『オーシャンズ11』だけでなく、女性が中心となって活躍する『オーシャンズ8』にも通じる部分があります。どちらも、異なる強みを持つ者たちが集まり、協力して目標を達成するという点で共通しています。

次の「対価には敏感であれ、その価値はYLでしか生み出せない」に関しては、YLの最大の魅力は「多様性」です。さまざまな国やバックグラウンドを持つ人々が集まったチームであること。クリエイティブな価値は、単にその場で考えたから生まれるものではなく、これまで見たものや体験したものが結びついたとき、さらには異なるバックグラウンドを持つ人々の意見が交わるときに生まれるものです。このようにYLでしか生み出せない価値を創出するチームだからこそ、その対価を正当に得るべきだと思っています。そして、その対価を新たな挑戦や投資に充てるべきだという考えを二つ目のマニフェストにしました。

三つ目の「無理に売るな。客に本当に必要なものを提供しろ。」では、正当な対価を得ることは大事だが、クライアントにとって本質的な価値を提供することの大切さを掲げました。ここは出てきたキーワードというよりかは、自分の経験則に基づいて書いたものです。YLのウェブサイトにも下記のように記載があります。
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“Whether they be teammates or clients, without our collaborators, we’d be nothing, join us and let’s make something.”
僕たちのビジネスは、協力してくれる仲間や、信じていただけるクライアントがいないと成り立ちません。私たちと一緒にワクワクすることを始めませんか?
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我々は信じてくれるクライアントとコラボレーターによって成り立っているビジネスモデルなので、中長期的な関係値を構築していくためには、この考え方が必要になると創業期から感じていました。

このように、チームメンバーが出してくれたキーワードを基に、まずは「オーシャンズ11的な組織作り」というコアの理念を全体の傘として据え、そこからマニフェストを構築しました。チームから出てきた意見を一度すべてテーブルに並べ、それを材料にマニフェストを練り上げられたのは、まさにメンバー一人ひとりがオープンマインドで、料理できる素材を持ち寄ってくれたからだと感じています。

By Yoichiro
日本語版
英語版

私たちにとって、マニフェストの作成は、エージェンシーとしての独自性を深く掘り下げる重要な一歩でした。このマニフェストは、YLのアイデンティティと使命を明確に示し、共通の目標に向かってチームを一つにまとめると同時に、個々の個性を尊重する余地を提供するものです。

今年の初めに書き留めた言葉を振り返ると、小さなデジタル付箋に記したフレーズの一つひとつが、今もなお私たちの中心にある価値観を象徴していることに気づかされます。それらは、道徳観、幸福、そして未来へのビジョンという、YLの根幹を成すものです。そして、このマニフェストの作成プロセスは、一度きりの取り組みにとどまらず、私たちがより良いエージェンシーへと進化し続けるための出発点であり続けるのだと感じています。

Written by Nathalie Cantacuzino

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