見出し画像

お久しぶりね

あるFX系新興証券会社が、損失補てんの疑義で強制捜査を受けていると伝えられています。昭和末から平成初期に大きく問題視された経済犯罪で、20世紀の市場を思わせる行為。まだ存在してたんだあ、と奇妙な懐かしさ?すら覚えるほどです。

感じることは2つ。

まず、20世紀末に市場への詐欺行為を類型化し、監視機関(証券取引等監視委員会の創設や日本証券業協会の自主規制機能強化)の充実が図られた後、日本でも市場関係者の間に、市場を欺くことは図利の有無にかかわらず犯罪的行為だ、という認識が浸透してきたなあ、という点。

かつては、インサイダー取引ですら「早耳は努力の賜物。ひと様に迷惑をかけるでもなし、どこが悪い」と平然と言い放たれていました。私が、1980年に、留学先の修士論文にinsider tradingを選んだといった時、当時の上司たちは「君ねえ、日本にはそんな規制馴染まないんだよ。無駄なことに社費を使うな」と叱られたものです。

損失補てんが問題視された当初も「事前の保証はアウトだが、事後補てんは許容されている」という考え方が有力でした。まさに今は昔です。

現在、市場関係者は市場への裏切りが厳罰をもって対処されることを知っている、少なくとも知りうべき、時代に入っています。

もうひとつは、証券会社の登録制についてです。市場規律の範囲内で、業者は自由度を増した方が良い、という理念が、免許制から登録制への移行の背景にありました。一頃は、免許を有する大手証券会社にすら違法行為が多い(インサイダー取引や損失補てんなど、法人取引が多く、資金量の豊かな証券会社に多発する傾向があった)事情もあって、参入障壁を低める登録制が歓迎されたものです。業者監督行政も事前予防型から事後厳罰型へ、と変化していきました。

しかし、ここ数年、大手の違法行為は影をひそめ、逆に新興の登録制業者による違法行為が激増している。しかも、相当に悪意のある悪質なものが多い。登録制から20年になろうとする昨今、そろそろ見直しの検討も必要なような気がします。

ただ、他方でリスクマネー嫌いで成長回避的な日本人のセンチメントはなんとかしなければならない。資金の市場流入を積極的に進めなければならないなか、規制先行の結果、参加者がフリーズしてしまうのは困ります。

そういう意味でも、今般の損失補てんが事実であったら、とんでもない話。抜本的かつ厳しく臨む必要がありそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?