アラスカ

いつまで続ける沖縄の厳冬

40年ほど前に、初めて沖縄を訪問した時、そのゆったりとした時間の流れ、ロハスな空気、素晴らしい自然と眺望、きれいな海、それに何よりも優しい人たちとの触れ合いに感動したものでした。

当時は、沖縄の悲惨で苦難に満ちた近現代史をあまり知らず、本土復帰できて良かったなあ、ついこの間までは左ハンドルだったんだ、東京の大学に入学するのにビザやパスポートが必要だったんだあ、なんて、単純そのものの印象しか持っていませんでした。

後年、御縁あって沖縄経済に関心を持ち始めると、15年ほど前には名護の沖縄金融特区構想のお手伝いをするようになった。

色々と歴史を調べ、沖縄地元の人々のお話をお聞きし、嘉手納や普天間の基地周辺を回り、名護の海を見つめ、改めてひめゆりの塔を訪れ、とするうちに、沖縄の持つ多重性、それも歴史と現在が複雑に織りなす、絡まった糸玉のような状況を感じるようになっていきました。

基地問題の難しさは特にです。経済と基地の関係性は本当に悩ましい。沖縄経済が自力のみでは苦しいことは間違いないが、沖縄人、ウチナンチューの誇りを大切にしなければならない。悲惨な、戦争焦土、基地問題の試練を受けている彼らに、どうもソトナンチューの施策は上から目線に移ってしまうようでもある。

そんな中、普天間基地問題という、とりわけデリケートでややこしいテーマに対して、長年月にわたり沖縄の人々と日本政府関係者が神経を擦り減らし、実に微妙なバランスで解決の糸口を見つけたものでした。それをいとも簡単にちゃぶ台返しした鳩○さんというかつての首相の失策は100年先まで問うべきだと感じています。

ともあれ、普天間は再び争いの象徴になってしまった。県民選挙では、辺野古への移設に対して、反対、賛成、わからない、という選択肢で投票させられるようですが、実質二択の選択肢。建設的な意見や考え方は反映されようがない。

県民感情は重要です。でも経済も重要です。沖縄県が他県との比較において経済的に苦しいのみならず、県内の貧富の差、富の偏在、地域格差は凄まじい。沖縄県対他県、という対立の構図ばかり見せられますが、県内の富裕層と貧困層の問題、深刻な格差問題を早急に改善しないと。

他方で、沖縄へは年間1000億円以上と言われる基地借地料や、その何倍もの振興予算、さらには土地区画整理では9割が国負担、その他諸々の優遇策が講じられています。ハワイに比肩するようになった観光についても、政府からの直接、間接のサポートは大きい。

なのに、いたずらに、沖縄県vs.政府、といった三文劇みたいな喧嘩図式が誇張されます。最近では、反日的なキャンペーンを繰り返す東アジアの国と同じようなトーンを感じることすらあって、がっかりします。

沖縄に限らず、他県でも純粋に国から「自立」できているところなどほとんどありません。でもある程度はそれで良い。県は国でもあり、県民は国民でもあるからです。これは決して、国が県より「上」という意味ではありません。

県は市町村から構成され、市町村はさらに小さな行政区画から構成され、これらの地区は、「家族」から構成され、家族は親子兄弟親戚から構成される。国民が一番上等で、家族は一番下等なのでしょうか?違いますよね。

県論分断、政府とのディールのカード基地問題、繰り返して提示される「歴史問題」

政府や他県と沖縄がバトル状態に入りかねないようなキャンペーンには、本当にがっかりします。

このままでは、沖縄は厳冬のままに終わってしまいかねない。沖縄は絶好のロケーションでアジアが間近。観光はまだまだ伸びるでしょうし、スマート未来地域の創設にも向いていると思います。潜在力はとても高いのに。

もうそろそろ、春の訪れを見たいですよね。

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