熱海

コーポレート・ガバナンス、日本は周回先行?周回遅れ?

先日、米国のBusiness Roundtableが、「企業の目的に関する宣言」を出しました。要は、コーポレート・ガバナンスについての米国大物経営者たちの視点について、です。

短い1枚ペラの宣言の後には、経営者たちの署名が10ページも続いています。金融機関から事業会社まで、名だたる著名企業のCEOたちのサインがずらりと並ぶさまは壮観!

で、この宣言に何が書いてあるか。

* Delivering value to our customers.・・・

* Investing in our employees.・・・

* Dealing fairly and ethically with our suppliers.・・・

* Supporting the communities in which we work.・・・

* Generating long-term value for shareholders.・・・

まずは、消費者、そして従業員、取引先と来て、株主は最後です。これはどうしたことか?株主至上主義、市場原理主義の米国企業ではなかったのか。ガバナンス=実質短期収益向上=株価上昇、のリニアな関係で来た21世紀の米国資本主義ではなかったのか?

ふと思い出した映画があります。チャーリーシーン主演の『ウォール街』です。マイクル・ダグラス扮した乗っ取り王に対峙する、事業会社の現場の叩き上げがマーチンシーンでした。マーチンはこんなセリフを言っていた。「俺たちの会社は、俺たち現場の従業員が長年、汗と涙で作ってきたんだぜ。親父もこの会社で働いて、俺はこの土地で生まれ、この会社とともに育ってきた。従業員はもちろん、この土地の人間は、みんなこの会社とともにあるファミリーなんだ。ウォール街みたいに札びらだけで生きてく輩とは違うんだ」

30年以上前の映画です。米国はあの時代以前に回帰したんでしょうか?日本人にこそぴったりくる。まるで、映画『下町の太陽』や『フーテンの寅さん』ではないか(いずれも昭和時代かあ)

他方で今の日本。有名な東証のコーポレートガバナンス・コードはこう宣言しています。「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で・・・

同コードはその基本原則についても、入の一番に【株主の権利・平等性の確保】をあげ、「株主以外のステークホルダー」はその次です。

同コードは10年前の米国流。で、上記のラウンドテーブル宣言は昔の日本流。

日本が先行しているのか、周回遅れなのか。格差が進みミレニアム世代の不満が高まる中で、米国財界一流の思惑が「宣言」を生んだとも言われていますし、単純には受け止められないでしょう。

でも、世の中はSDGsの時代。ステークホルダーの順番も再考すべき時期に入っているのかもしれませんね。


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