「実験的民族誌」映画について私が知っている二、三の事柄①
はじめに - 「実験的民族誌」映画をみてみよう
アメリカの映画研究者キャサリン・ラッセルは1999年の著書Experimental Ethnography - The work of film in the age of video (Duke University Press) において、それまで別々の文脈で語られてきた民族誌映画 ethnographic film と実験映画 experimental film を「実験的民族誌 experimental ethnography 」という新たなカテゴリーに統合し、批評的言説を構築しようと試みました。当時のポスト〜という接頭辞のつく様々な状況や、副題に示されているようなメディウムのパラダイムシフトが執筆の契機となったようです。
20世紀の終わりに書かれたこの本は、その後20年経った今日、そしてこれからの映画について考える上でもおさえておきたい基礎文献のひとつ、と言っても過言ではありません(たぶん)。実際、昨今の優れた実験映画作品には民族誌、或いはより広範に文化/社会人類学的な視点・要素が度々見受けられます。私がこの本を購入し読んだのは何年かまえのことなのですが、最近見たいくつかの作品(例えば今年、第12回恵比寿映像祭で上映された作品等)から再読の必要性に駆られ、引越ダンボールを漁って発掘した次第です。しかし英語で書かれてるし、民族誌とかよく知らねーし・・・ということで民族誌とはなんぞや、というとことからお勉強を始めたところなのです。
そう、これはとても大事なことなのですが、そもそも「実験的民族誌」とはジェイムズ・クリフォードやジョージ・マーカスといった方々がポストモダン人類学のフィールドで80年代から盛んに議論していたタームに由来します(この動向はアートワールドにもインパクトを与え、美術批評家ハル・フォスターは「民族誌家としてのアーティスト The Artist as Ethnographer?」 というテクストを残しています。タイトルは本書の副題同様ベンヤミン師匠から拝借してますね。あうら!)。ポストモダン人類学における本家「実験的民族誌」や「実験映画」といった用語がいったい何を示すのか、ということについてはおいおい整理してみようかなーとは思ってますが、まずは映画の本なんだから議論される主な映画作品を見にゃはじまらん!というわけで最近ちまちま検索してたものをここにまとめてみることにしました。
以下web上で発掘した動画を作品を章立てに沿って並べています。DVD等販売されているものはあわせてそちらのリンクも貼っておきます。当然ですが、権利関係的にアレなものもあります(というかアレなのが殆どです)のであくまで個人的なお勉強用、ってことでご鑑賞ください。😑
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1. Another Look
2. Surrealist Ethnography
Las Hurdes (Luis Buñuel, 1932)
DVD
Night Cries (Tracey Moffatt, 1990)
3. The Body as the Main Attraction
From the Pole to the Equator (Yervant Giankian and Angela Ricchi Lucchi, 1987)
Seashore (David Rimmer, 1971)
DVD : https://www.cfmdc.org/film/4428
4. Ethnotopias of Early Cinema
Voyage dans la lune (Georges Méliès, 1903)
DVD/Bru-ray
Uaka (Paula Gaitan, 1988)
5. Playing Primitive
In the Land of the Headhubters (Edward Curtis, 1914/1973)
DVD
6. Zoology, Pornography, Ethnography
Microcultural Incidents at Ten Zoos (Ray Birdwhistell, 1969)
😩ミツカリマセンデシタ
Unsere Afrikareise (Peter Kubelka, 1966)
Simba (Martin and Osa Johnson, 1928) ※抜粋
DVD
Hide and Seek (Su Friedrich, 1996) ※抜粋
DVD
7. Framing People: Structural Film Revisited
D'Est (Chantal Akerman,1993) ※抜粋
News from Home (Chantal Akerman,1977)
Kiss (Andy Warhol, 1963)
DVD
Beauty #2 (Andy Warhol, 1965)
Real Italian Pizza (David Rimmer, 1971)
DVD: https://www.cfmdc.org/film/4428
Pierre Vallières (Joyce Wieland, 1972) ※抜粋
https://www.cfmdc.org/film/990
Landscape Suicide (James Benning,1986)
DVD
I Do Not Know What It Is I Am Like (Bill Viola, 1986)
DVD
8. Ecstatic Ethnography: Filming Possession Rituals
Trance and Dance in Bali (Margaret Mead and Gregory Bateson, 1952)
Divine Horsemen (Maya Deren, 1947-1985) ※抜粋
DVD
Les Maîtres Fous (Jean Rouch, 1954)
DVD
I Do Not Know What It Is I Am Like (Bill Viola, 1986)
chapter7と同じ🦉
9. Archival Apocalypse: Found Footage as Ethnography
A Movie (Bruce Conner, 1958)
Atomic Cafe (The Archives Project, 1982) ※抜粋
DVD/Blu-ray
Tribulation 99 (Craig Baldwin, 1991)
DVD
Handsworth Songs (Black Audio Film Collective, 1985)
10. Autoethnography: Journeys of the Self
Reminiscences of a Journey to Lithuania (Jonas Mekas, 1972) ※抜粋
DVD
Weather Diary Series (George Kuchar, 1986-1990)
A Place Called Lovely (Sadie Benning, 1991)
Why Is Yellow the Middle of the Rainbow? (Kidlat Tahimik, 1994)
Sans Soleil (Chris Marker,1983) ※抜粋
DVD/Blu-ray
以上
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おまけ
作品の詳細な分析こそありませんが、全体を通して度々召喚されるキーパーソンとして、トリン・T・ミンハを無視するわけにはいきません。
Reassemblage (Trinh T. Minh-ha, 1983)
DVD