見出し画像

海外駐在員の不動産売買①

海外駐在等で非居住者となり、日本にある自宅を売却する際に、気を付けるべき点についてまとめました。都内中古マンション(城南エリア/築10年/70平米/駅徒歩10分)を海外駐在中に売却。インターネットで調べれば色々なサイトにたどり着きますが、不動産業者のバイアスがかかった記事も多いので、100%売主目線でアドバイスします。

賃貸に出す、空き家にしておく等、選択肢としては他にもありますが、自分自身にその経験はないので、自宅を売却すると決めた人向けに自分自身の経験に基づいてアドバイスします。

■ 売却の戦略

それぞれの事情があると思うので、早期売却や高値売却等、優先する事項は違うと思いますが、①売却手続きの代理人になってくれる親戚等がいる②今すぐに売却しなければならない特別な事情がない、のであれば、じっくりと腰を据えて買主を探せる絶好の機会となるため、高値売却を目指すチャンスだと思います。

但し、マイホームを売却したときの所得税の特別控除(3,000万円)の適用条件として、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」という要件があるので、留意が必要です。

▼国税庁QA

※ 国税庁QAを読んでも理解できない方は税理士に相談することをオススメします。税理士への無料相談を仲介業者がサービスとして提供している場合もあります。

一方、海外渡航前にどうしても売却(早期売却)したいようであれば、買主に足元を見られ、高値売却は望めない可能性が高いです。


■ 仲介業者(媒介契約)

自分自身で買主を探す場合を除き、基本的には不動産仲介業者と媒介契約を締結するのが一般的だと思いますが、非居住者が日本にある物件を売却する場合は、ある特定の仲介業者と「専任媒介契約」を締結することになると思います。

不動産売却のセオリーとしては、「一般媒介契約」を複数の仲介業者と締結し、仲介業者間の競争原理を働かせ、買主を幅広く募るというのが好ましいですのですが、複数の仲介業者の内覧に対応するためには物件の鍵を管理する方が必要となり、非居住者の場合は現実的にはその対応が難しいことが多いです。

また、「専属専任媒介契約」という選択肢もあり、「専任媒介契約」と同様に特定の仲介業者と契約するのですが、売主自らが発見した買主との取引が制限されます。一方で、仲介業者として売主への業務報告が1週間に1回以上必要となります(「専任媒介契約」の場合は2週間に1回以上)。現実的には非居住者である売主が買主を発見するのは難しく、仲介業者にとってそれを制限するメリットはあまりないので、一般的には「専任媒介契約」を提案されます。

尚、非居住者が仲介業者を通さず個人間で不動産売買するのは、不動産売買のプロでない限り、あまりオススメしません。居住者間の売買と比較し、売却手続きの難易度が高くなりますので、周到な準備が必要となります。

以上のように非居住者が自宅を売買する場合は、ほとんど選択肢がないので細かい説明は省きます。詳しくは以下の各契約別の特徴のリンクを参照下さい。

▼各契約別の特徴


■ 仲介業者の選定

少なくとも仲介業者の選定だけは海外渡航前に終わらせた方が良いです。先ずは、不動産仲介業者に連絡し、売却の見積もりを複数社に依頼(できれば3社以上に依頼)。仲介業者が自宅にて来て、物件の状況を確認するのと共に、売出価格及び仲介手数料の提案をしてくれます。仲介業者は仲介契約を取るため、魅力的な売出価格を提案してきますが、冷静に対処する必要があります。

重要なのは、同じマンション内や近隣の物件の過去売却実績を知ることと、何より営業マンの営業力です。買主を探して、内覧を案内するのが営業マンの仕事になりますので、営業力が何より重要です。不動産は同じものが二つとないものですが、またとない希少な物件以外、買主側も物件の相場観を知った上で購入の判断をしますので、売出価格だけを見て仲介業者を選ぶのは危険です。

仲介業者の手数料は、取引額の3%が上限(取引額が400万円以上の場合)と定められています。例として、仲介手数料が3%と2%(33.3%の割引)のケースでそれぞれ一般的な物件(5,000~6,000万円)を売却するという前提で試算してみると、仲介手数料は大きく変わらないことが分かると思います。

仲介手数料:3%のケース
物件売却価格5,000万円 → 仲介手数料150万円
物件売却価格5,500万円 → 仲介手数料165万円
物件売却価格6,000万円 → 仲介手数料180万円

仲介手数料:2%のケース
物件売却価格5,000万円 → 仲介手数料100万円
物件売却価格5,500万円 → 仲介手数料110万円
物件売却価格6,000万円 → 仲介手数料120万円

つまりは、仲介業者として、高値売却するというインセンティブがあまりなく、仲介業者は営業の手間をできるだけかけずに、買主を見つける営業スタイルになりがちです。良くある話としては、魅力的な売出価格(高値)を提案することで専任媒介契約を締結し、その後は必死で営業することなく、「価格が高いから売れない」と売主にせまり、売れる価格まで下げさせるというものです。相場より安い物件は売れるというのが市場原理ですので、これを防ぐために如何に必死になって営業してもらうかということに頭を使う必要があります。

ちなみに、高値売却にインセンティブを働かせるような仲介手数料の仕組みを仲介業者に逆提案したところ、受け入れられませんでした。話は逸れますが、「物件価格×○○%」という仲介手数料の仕組みを続けている以上、顧客に寄り添った商売はできないと思ってます。

■ 内覧

これは持論ですが、マイホームは人生で一番高い買い物と言われるくらいなので、チラシやインターネットで価格だけを見ているだけだと「高い」という感情しか生まれませんが、実際に外観・内観・周辺等を見て初めて「少し金銭的に無理しても欲しい」という気持ちが湧いてくるものだと思ってます。つまり、一にも二にも内覧がないと物件は売れないと思っており、内覧を数多く呼び込める営業マンができる営業マンだと思います。仲介業者の選定には営業マンの営業力が重要と言いましたが、「この営業マンは顧客を数多く内覧に呼び込めるのか」という目線で評価頂くのが良いかと思います。他物件の内覧を目的として来た顧客を「お探しの条件から少し外れますが・・・」と言いながらも、案内した上で物件の魅力を最大限伝えられるのかというのがポイントだと思います。

自分の経験として、最初に専任媒介契約を締結した仲介業者の営業マンが残念な方で、1~3月の繁忙期(2019年の話なのでコロナ前)に内覧が1件も入らないという失敗があったので、この点は強調したいです。その後、その仲介業者とは契約解除し、別の仲介業者と専任媒介契約を締結しました。仲介業者の変更前後で売出価格は据え置きましたが、営業マンの違いで内覧ゼロだった状態から、少なくとも毎週1件以上の内覧は入るようになりました。

その後売却が成功したのは、営業マンに「売主としてはとにかく数多くの内覧を呼んで欲しい」という点を伝え、1件でも多くの内覧を呼び込めるような対策(チラシ、プロ撮影の物件写真、不動産情報サイトへの掲載等)を取ってもらったことだと思います。


今回は以上にして、次回は売出価格の改定、実際の売却手続き、やってて良かったこと、について書きたいと思います。

#不動産 #マンション売却 #非居住者 #海外駐在 #不動産売却 #不動産仲介 #内覧

サポート頂き、ありがとうございます。無料で記事を書く励みになります。今後も有益な情報を書いていきたいと思います。