連作短歌「雑談」
ゆうやみにはじめて入る路地があり地蔵地蔵地蔵異空間
階段をのぼったところにある喫茶店から見下ろす傘の色色
さっきから観葉植物ばかり見ている君の眼を僕は見ている
いつもなら泣くときと怒るとき以外遠回しにしか話さないひと
カフェモカを飲み干し君は去りゆけり隣りの席の雑談が春
うららかや君の笑顔が見たいなあボウリングピンのぱらりと跳ねる
返信はいらないという手紙にはひとりよがりの意志がただよう
君からの手紙の入った封筒はまだひらけずに抽斗の奥
ようふうとうやっとひらけばひらひらとひらがなのふる 夏の暁
前向きな気持ちで燃やす封筒のけむりは入道雲までとどく
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