連作短歌「直線」
髪洗うシャワーの音を聴いていたそこにいたという証拠がない
早足になるってことは行くとこがあるってことさ ふりむいてしまう
なんでもないページにふせんを貼るように古本市の春の長雨
まごころのかたまりみたいなひとだった ふせんをちょっと出るように貼る
読み返すことはないかもしれないと思いつつ貼られてゆくふせん
雪解けの滝を見ていた君の眼を見ていた季節 落ちる、おちる
養老の滝に感動したと言えば「七歳のとき連れていったぞ」
知りすぎた街が物語に見えた、一瞬、燕と平行になる
いとこが五歳の誕生日にウクレレを与えられ夜更かしをする
はとこが美大生になり直線と点だけをひたすら描いている
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