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連作短歌

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ふだんの短歌です
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2020年12月の記事一覧

連作短歌「未知」

絵に描いたような雲だね いくつかの河口を示すグーグルマップス 本棚に柴崎友香があることのほかには似ているところもなくて こだわりをぶつけることが怖くなり自分で淹れた紅茶飲み干す

連作短歌「溶ける魚」

重いじゃなくて重たいと言う 溢れ出す 君はシャワーを浴びただろうか コーヒーが緑に光る きっとまだ私は愛されながら死にます シネコンがまだない頃に観たらしい 大声で羨望を表明する

連作短歌「猿」

猿山を何時間でも見てられる君と仲良くなれるだろうか うきうきな気分のままで君と会う君が行きたい場所で君と会う 単著だす夢を叶えてくださいね(潜在的な君のファンより)

連作短歌「ほくろ」

別々に生きているので僕たちは恥ずかしいという感情がない 変わりつつある言葉尻 るららるら 水門へつづく水門通り 生きていることがやさしい そんなところにほくろ? いや、拭いたら取れた

連作短歌「帰り道」

身につけた技がまったく通じない 街は冷たいまぼろしのよう 余ってるものをくださいそれだけで僕はほんとに生きてけるので 国道を歩いて丸亀製麺に行きたいそして帰ってきたい

連作短歌「虹」

とめどなく懐かしかったらどうしよう思い思いの意味を叫んだ あの虹に立ち止まらない人たちとおんなじでっかいビルではたらく 僕たちのマグロはいっぱい殺すけどクジラは殺しちゃいけない世界

連作短歌「またあそ」

予測変換されるたんびに泣いちゃうしかわいいサラダを作って食べる 北鎌倉駅にいるって言われても昔みたいにすぐ行けないよ だけどまあ今かもなって思えたらまた誘うからまた遊ぼうね

連作短歌「揺れながら」

右足に全体重をかけるとき解放されている左足 ぼんやりと常に何かを思いつつホームの端をふつうに歩く 声だけが聞こえる視界の外の犬 母が死んだら僕は悲しい

連作短歌「ジェンガ」

左目と右目の像を重ねたら浮かびあがって見えてくる差異 なんにでもなれるだろうか紫の空にあふれてゆく運命と こわさない程度に崩す遊びだよ、ゆびさきそしてきみのてのひら

連作短歌「実り」

ゆるせると思ってたのにゆるせないなるほどこれが実体験か

連作短歌「朝」

夢に出てきた完璧なオムライス 殺すのがもったいないほどの 好きな時間に寝て起きたいよハシビロコウ我慢くらべか臨むところだ 「おい誰にもらった薔薇だ」なんてこと訊かずにねむる 朝がまた来る

連作短歌「バランス」

真っ直ぐな道に惹かれて目的の本屋へ行くのは明日にしよう バランスが一番大事と言う人の僕の気持ちのわかっていなさ できることもできないことも増えていく目の前がぼんやりとしてくる