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近鉄の新車と値上げ

久々にこってりした鉄道話でも。今週、近鉄のニュースリリースで新型車両のビジュアルイメージが発表された。

真っ赤な車体に車内には、案内ディスプレイ、防犯カメラなどを標準装備している他、大阪線や奈良線などの長距離列車で一時期採用された『L/Cエルシーシート※』が導入される。また、壁は木目調でお家のような居心地よさがイメージでは感じられる。

※…通勤向けのロング(Long)シートと長距離向けのクロス(Cross)シートを切り替えられる座席で「デュアルシート」とも呼ばれる。切り替える手間があるが、大量輸送と長距離の快適性が両立できたり、西武「S-TRAIN」「京王ライナー」などでは朝夕で座席指定列車に使いつつ、モードを変えて通常の電車とローテーションを組みやすくしている。

来年度から運賃の値上げが発表された際、経営改善とともに「車両更新」と称して新型車両導入を示唆していたが、そこからわずか1ヶ月というスピード感あるビジュアル発表は意外だった。2015年デビュー「しまかぜ」や2020年デビュー「ひのとり」など近鉄は特急にお金をかけて、観光やビジネス問わずお客を呼び込むことに精を出していた。その一方で普通電車、急行などの「一般車両」は「プチリノベーション」しつつ、僕より2回り以上は車齢が高そうな電車が多数支えてきた。その上、赤字路線や「コロナ減便」の際には「断捨離」や両数短縮でコストを下げてきた。

これまでのところトラブルが多い気配は無さそう。“40歳越え”がいる京都市営地下鉄からの直通電車を含めて安定輸送はできている。とは言っても、大阪線方面は大部分が昭和生まれ、奈良線、京都線方面も阪神直通以外の半分がそんな感じ。首都圏や東海地方の名鉄、福岡の西鉄のように通勤電車の新陳代謝が活性化してないからどうしても陳腐になってしまってる感も否めない。

コロナの影響は大小問わずどの鉄道も打撃はデカい。それでも、減便や事業縮小で萎縮するだけではなく、「値上げした分でこんなんやりまっせ!!」と言わんばかりの近鉄電車の新型みたいに何か明るくでっかいことをやった方が何かしら会社が良くなるかもしれない。自分がこうなりたいみたいなところにも勝手ながら通ずる感じもする。

もちろん値上げという部分でとある知事が猛反対していたりもするが、新型車両の発表は「活性化の付加価値」と捉えられるし、悪い刺激ではなさそう。むしろ「値上げと減便…以上」って方が後味悪い気がする。そう思えば近鉄の運賃値上げは悪くない気がする。

そんな新型車両のデザインには「令和のブルートレイン」である『WEST EXPRESS銀河』を手がけたデザイナー川西康之さん率いるデザイン事務所『イチバンセン』が参画。近鉄ユーザーである川西さんの「心の鉄道」は早速本気見せてくれたように感じる。2年後という少々気の早い話だが、沿線民である僕は首を長く、大いに期待してお披露目を待ちたい。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。