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『絶海 英国船ウェイジャー号の地獄』

書籍情報

1740年9月18日、軍艦5隻を中心とした小艦隊がポーツマスを出港した。そこには、かつての商船から大砲28門を備えた六等艦へと生まれ変わった「ウェイジャー号」と250人の乗組員の姿もあった。スペインのガレオン船を追うという密命を帯び、意気揚々と出発した艦隊だったが、航海は凄絶を極め、謎の伝染病で多くが死に至り、南米大陸南端を航行中ついに嵐に飲み込まれてしまう。隊からはぐれ、無人島へと流れ着いたウェイジャー号の乗組員たち。そこで繰り広げられたのは、悲惨な飢えとの戦いだった。武器や食料を奪い合い、殺人や人肉食にまで及ぶ者が現れ、それでも極限状態を生き延びた者たちは、やがて対立する二組に分かれて島を脱出する。骨と皮になり果てながら母国へと帰還した33人を待ち受けていたのは、非情なる裁判だった。絶海の孤島に隠された真実とは? 彼らが犯した真の罪とは?全米で300万部を突破した『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』著者が、生存者の日誌や証言をもとに、ウェイジャー号の運命を克明に描き出す。アメリカ、イギリス、フランスでベストセラーになったサバイバルノンフィクション。

リンク先より

なぜ読んだか

以下のブログを読んで気になったため購入。

過去に類似した本で海賊の実態の本を読んだら面白かったのもあり、読んでみた。

記憶にのこったこと

まず記録に残っているのがすごい

この本は当時、1740年の実話について綿密な取材と調査を経て書かれたノンフィクション本である。そもそも300年近く前の内容についてここまでの情報が残っていること自体もすごい。(航海日誌ってかなりしっかり書かれているものなのだな。)
加えて読むとわかるが、この船の状況はめちゃくちゃハード。ハードなんてもんじゃなく、本当に生きているのがすごいレベル。(実際ほとんどの乗員は船旅の途中で亡くなっている。)それなのに、こういった形で情報が今も残っていることはすごい。

船の上からハードモードすぎる

何もかもがハードすぎる。やばい。

まず、普通に船の衛生状況が異常に悪い。
人口密度が半端ない上に、風呂などももちろんなく醜悪な匂いで過ごす。ネズミや虫なんかも湧きまくる。そして、壊血病や疫病も流行る。そういった患者はハンモックでずっと寝ることになるがその状態だと吐瀉物も排泄物も垂れ流す。想像に絶する。

そして、嵐も壮絶でめちゃくちゃ揺れて、海水がどんどん船に入ってくる。甲板で作業をすること自体も危ないし、そもそも超絶寒いはず。海におとされようものならほぼ助かる見込みもない。嵐に飲み込まれ、自分たちがどこにいるかもわからずに彷徨う。ハードすぎる。

人として追い込まれた無人島への漂着

無人島になんとか漂着したわけだが、そこも極寒かつ不毛地帯。なんとか食料を確保しながらももちろん内輪でももめる。離脱者がでたり、権力者への反抗があったり。食料が倉庫からも盗まれる。そういった中で秩序を守ることは非常に難しい。
青年の日誌には、自分になついた犬を他の仲間が取り上げ食べることになったことが書かれており、そこでその青年も最終的にはその肉を食べたことも書かれている。

結局、死なずに帰還する人もでてくる

こんな状態なのに別々のルートで帰還する人がいくつかでてくる。
あのときに、ああいった形で置き去りにされた人が、まさか帰ってきてイギリスでまた対面しともに裁判にかけられるわけである。
そんなの全く想像できないだろうなと思う。私でさえこの本読んでて、ある人が帰還したことがでてきたときには、「まじかよ」と声をだしてしまった。

所感

昔の海賊とか航海の本はまじで面白い。上述の通り壮絶過ぎる。
今の自分が生きている環境への感謝が強まるとともに、人間ってそういう環境でも生き抜ける人がいるもんなんだなと感じる。

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