情報リテラシー応用(6)
必要なExcelの機能
成績表イメージを作成している間に、Excelで実際に成績表を実現するにおいて必要な機能について確認しておきます。
表計算ソフトの基本
高校で、Excelは習うようです。でも忘れてしまって、レポートや課題に苦労しているという、新入生の悲痛なTweetを、毎年4月以降目撃します。
初歩的なことになりますが、表計算ソフトとExcelについて、かいつまんで説明します。
ワードとExcelを、並べてみてください。
Excelの方が複雑に見えますし、難しいというイメージがあるのではないでしょうか。
結論的に言えば、どちらも「電子文書」を作るという本質的な機能は同じです。ただ、文書の構造が違うと考えてください。
Excelには、表示と言うメニュータブがあります。そこでチェックが付いているものが表示されているものです。
数式バー、目盛り線、見出しという項目にチェックが付いていると思いますが、それらを次々に外していくと、同じ白紙の文書になります。
但し注意してもらいたいのは、ワードではキャレットが表示されているのに対して、Excelでは、四角い領域が白紙の中に表示されているということです。
この四角い領域を、セル(Cell)と呼びます。
Cellには、枡の他に、細胞という意味もあります。セルライト(Cellulite)などという言葉にも使われていますね。
ワードの文書は、文字の集合体ですが、Excelの文書は、セルの集合体です。
表計算の本質的な機能は、セルの機能に起因すると言っていいでしょう。元々Excelという商品名の由来は、Extended CellとExcellentのダブルミーニングだという説を聞いたことがあります。
真偽はともかくとして、Excelがわからない人は、セルがわからないと考えてください。
以下、セルについて簡単に整理しておきます。
セルは、それぞれ情報を記憶する機能を持っています。数値を入力すると、桁揃えするために右寄せになり、文字列を入力すると左寄せになります。
このように、セルには単なる文字が入力されるのではなく、一まとまりの情報が記憶されていると考えてください。
セルに記憶できるものは、5種類あります。
①数値
②文字列
③参照
④式
⑤関数
です。
①は数字ではなく、数値です。値として記憶されます。
②は、文字ではなく、文字列です。一まとまりの意味を持つ文字のまとまりとして記憶されます。
③の参照は、表計算の中心となる機能で、他のセルのアドレスを指定して、その値を使う機能を意味します。
Excelでは、"=セルアドレス"という形式で指定します。
参照「している」セルを「参照先」、参照「されている」セルを「参照元」と言います。
例えば、A5のセルに、参照"=A1"が記憶されている場合、A5が参照先で、A1が参照元になります。
参照元の値が変化すると、参照先の値も連動して変化します。
参照元→参照先
という構造を理解しておいてください。
ワークシート分析にあるメニューの意味を理解するのは重要です。
尚、セルのアドレス指定は、Excelは「A1方式」という指定方式を採用しています。
縦方向のセルの集合を「列」、横方向のセルの集合を「行」と呼んでいます。列位置の指定にはアルファベット、行位置は数値が使われるのが、「A1方式」です。
もう一つ、セルアドレスの指定方式に、「R1C1方式」というものがあり、行列ともに数字となる表示形式のことです。R1C1形式の「R」は「Row(行)」、 「C」は「Column(カラム)」を意味します。
A1形式は「列⇒行」の順に行列位置を指定しますが、R1C1は「行⇒列」の順に行列位置を指定します。
元々、A1方式は、「Lotus 1-2-3」という表計算ソフトが採用しており、R1C1方式は、Microsoft社がかつて販売していたMultiplanという表計算ソフトが採用していたものです。
Multiplanは、1982年に主にApple II向けに販売されており、当時はこれを使うためにハードを買うという、キラーソフトだったことを覚えています。
Excelを開発する際に、「Lotus 1-2-3」ユーザを取り込むために、A1方式を採用したとのことです。
Excelでも、図のように設定によって、このR1C1方式を併用することが可能です。
④は、四則演算のことで、式の項に③の参照が使えるということがポイントです。そのことで、他のセルの値に対して演算処理が行えるというメリットが生まれてきます。
四則演算の演算子は、加算、減算は算数で習った通りですが、乗算は「×」記号ではなく、「*(アスタリスク)」記号を使います。エックスなのかバツなのか掛けるなのかわかりにくいせいでしょう。また除算は、割り算記号「÷」ではなく、「/(スラッシュ)」を使います。これは「%」記号との混同を避けるという意味もあるようです。
四則演算の他に、もう一つ同じ数を掛け合わせる累乗の演算記号も用意されています。累乗も乗算なので、乗算記号を使えば可能ですが、式の項が多くなるので、累乗記号も用意されています。
例えば2の8乗は、式では
=2*2*2*2*2*2*2*2
となりますが、累乗の記号「^」を使って、以下のように示すこともできます。
=2^8
尚「^」記号は、ハット記号と呼びます。ひらがなの「へ」 に似ているのでキーボードの「^」に割り当てられています。
ここまでは大して難しくはないでしょう。問題は、⑤の関数です。
以下、関数について概説します。
関数についていくつか
関数に当たる英語は、Functionです。意味としては、機能、働き、作用といった訳語で使われる方が多いと思います。
日本語の関数という言葉は、特に数学的な意味で使われることが多いと思います。同じ単語に対して、文脈によって訳語が違うので、翻訳する場合は、若干苦労します。
数学的な意味としての関数は、簡単に言えば、ある値に依存して決まる値やその対応関係を表す式のことを意味しています。
Excelで使われる関数は、こうした意味も含まれていますが、パソコンのユーザとしては、「機能」として理解した方が分かりやすいでしょう。
セルの中に、ある「機能」を持ったものを入れることができる、それがセルに記憶させることが出来る、5番目です。
Excelの関数は、全部で484用意されています。用意されていない関数は、使うことはできません。加減乗除以外の処理は、関数を使わねば出来ない訳ですから、この既存の関数をどう使うかが、Excelでの情報処理を左右します。
これら約500弱の関数を、全てここで解説することはできません。ですのでいくつかを例にしますが、まずこれら関数の機能を理解しておいてください。
数式→関数の挿入、というメニューを選ぶと、図のようなボックスが出てきます。これを使って対話的に関数の入力をしていくわけですが、関数が機能ごとに分類されています。
これら、関数の大まかな機能分類を理解してください。
例えば、以下にはアルファベット順に関数が列挙されていますが、これを示されても使えないと思えませんか?
関数は、概ね以下のように機能ごとに分類されています。
財務
日付/時刻
数学/三角
統計
検索/行列
データベース
文字列操作
論理
情報
エンジニアリング
Web
関数には、こうした種類がありますが、このうち、今回の課題では、日付/時刻、統計、検索/行列あたりを使いますので、それらを中心に解説します。
財務と表計算
一点注目していただきたいのですが、一番上に、「財務」という分類があります。そこには、会計処理に関連するさまざまな処理を行う関数が含まれています。
他の分類は、抽象的な処理を行うものですが、これだけアプリケーション寄りになっており、若干異質な感じがあります。
現在のパソコン用の表計算ソフトは、 1979年にPersonal Software社がAppleⅡ向けに発売した「VisiCalc」がルーツと言われています。
開発者は、ダン・ブリックリンというアメリカのコンピュータ科学者で、その辺りの事情をTEDでスピーチしたものがあります。
何回見ても、素晴らしいスピーチで、システムを作るということだけではなく、学ぶことやモノを考えること、ビジネスを実現していくことに対する、貴重な示唆になっています。
他の87人の学生達とその教室にいて私はよく夢想していました。…そのためプリンタ出力やパンチカードというインタフェースではなく、「魔法の黒板」を夢想していました。数字を消して新しい値を書くと、他の数字が自動的に再計算されるという、数字のためのワープロみたいなものです。
「数字のためのワープロ」、まさに表計算の本質を捉えていると思います、開発者ですから当たり前ですが。元々財務諸表は、基本加算しか行わないので、表計算に親和性が高く、金融計算には向いていると言えます。
こうした理由から、財務系の関数はExcelでも充実しています。
ハーバード大学のある教室には、このダン・ブルックリンの功績を示す、以下のようなプレートが飾られているそうです。
1978年にこの教室で、ダン・ブルックリンが最初の表計算プログラムを考案した、とあります。本当の聖地ですね。
実は表計算ソフトは、初期の素晴らしいプログラマーが、貧弱な計算機の上で思考した賜物なので、プログラミングの理解のためにも、非常に有効です。
後期には、「システム開発とプログラミング」の授業を開講しますが、そこでは、このダン・ブルックリンの発想に習って、プログラミングを学んでいく予定です。
以上、セルに記憶させることが出来るものを、まず解説しました。
この後は、関数について、詳細に述べて行きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?