十三機兵防衛圏を、ネガティブな気持ちのままクリアしたので、その感想。

最初にいっておくと、体験版で楽しめなかったのに、わざわざ製品版を買って、我慢しながらクリアしたので、ろくな感想ではないです。

例えるなら、一口食べて「まずい」と思ったものを、最後まで食べて「やっぱり、まずかった」といってるだけの感想です。

過去のシーンを操作する意味ってあるの?

他のゲームでも、たまにみかけるけど、過去の記憶といった「もうすでに終わっていて、変化がありえない状況なのに、自由に動けるようにしてある」のって、どうなの?と、これは「あなたが選択したり、ボタンを押しても、ゲームには一切影響を与えませんよ」といってるようなもんで、プレイする気がみるみるなくなってしまう。

プレイヤーが「過去の記憶に介入することによって、過去が変化して、物語が変わる」とか「意識だけタイムリープして、過去を追体験してる」とかならわかるけど、十三機兵防衛圏は、本当にただの回想シーンでしかないので、操作させる必要はなかったんじゃないのかな、と思った。

ついつい、『serial experiments lain』と比べてしまう

「どのキャラクターを選んで、話を読んでいったかの順序は、プレイヤーそれぞれ違うから、そこがプレイヤーの自由意志であり、十三機兵防衛圏のゲーム性」だって意見をみたけど、そんなこと言われちゃうと、ついつい、『serial experiments lain』と比べてしまう

『serial experiments lain』は過去のデータベースを参照して、データのロックを解除しながら、ある出来事の真相にせまっていくゲームだ。

精神病の女の子の日記や、カウンセリング記録、主治医のカルテなどを漁るだけのゲームであり、断片的な情報を、プレイヤーが勝手に、関連付け、つなぎ合わせることで、ストーリーを想像する、という類を見ない作りになっていて、ロック解除した情報によって、マルチエンディングが展開される。

おそらく、あまりゲームや、物語に興味がない人が遊んだら、一体、何をするゲームなのか、何を楽しませようとしたいゲームなのかもわからないだろうが、テレビCMをみると、バイオレンスと恋愛を推していることから、どうやら、相手のプライベートを知ることで、転移性恋愛を疑似体験できる、サイコパス恋愛ゲームみたいものだとわかる。

つまり、よくわからん距離感が壊れたメンヘラ女子の素性を知るために、ネットでログを漁ったり、プライベートな情報をハッキングして、ネットストーキングする、というマニアックな(キャラクターになりきって遊ぶ)ロールプレイが存在し、
エンディングみて、その女の子をより好きになるのか、こわ!近寄らんどこってなるのかは、プレイヤーの受け取り方次第。

十三機兵防衛圏でいえば、郷登蓮也が、澄ました顔して、ひたすら千尋のプライベートのログを漁って(ストーキングしてい)る、あの感じに近いだろう。

だから、十三機兵防衛圏においてもプレイヤーに役割、ハッカーとかデバッカーでもなんでもいいけど、なんだかの役割を与えてあげてれば、目的があってデータベースを調べている設定にできるし、記録の疑似体験をしている設定のゲームになったはずなのに、そういったものがないので、ただ起きた過去の出来事を、ただ同じようになぞっているだけになっている。

それが最初にあげた「過去のシーンを操作する意味ってある?」って結実してしまって、ずっと楽しめなかった。

ただし、『serial experiments lain』は、そのマニアックなコンセプトから、すぐワゴン行きとなったクソゲーであり、商業的には(たぶん)成功しなかったゲームだ。

だから、ゲーム(製品)的な正しさでいえば、ちゃんと評価を受けている十三機兵防衛圏の方が圧倒的に正しいし、『serial experiments lain』はもう20年以上前のゲームで、ほぼ遊ぶこと自体不可能なゲームなので、この2つを比べるのがそもそもおかしいのかもしれない。

映画なら開始30分で開示するような設定を、わざわざ10時間かけて先延ばしするシナリオの悪さ 

シナリオはすごく評判がいいので、文句をつけるほうが間違ってるのかもしれないけど、物語がもったいぶりすぎて、わたしはがっかりしてしまった。

「主人公たちの過ごしている世界が仮想現実であり、現実は養成ポッドの中で夢をみているだけ」という設定が、ストーリーの90%くらい地点で開示される。

このマトリックスとエヴァンゲリオンを組み合わせた設定自体はすごく魅力的だけど、正直、わたしは「はっ、だから、全裸なのか!」という、気づきくらい終わってしまった。(その全裸のアイディア自体は、すばらしいけど)

たとえば、ほぼ同じ設定をもつ「マトリックス」では、映画の開始30分くらいで、養成ポッドの中で目覚めて、これまで生活していた世界が仮想現実であることを知る。
その設定を起点として、物語を展開させていくのだけど、物語の終わり間近でそんな世界観を知らされても、どうやっても発展させようがないし、正直「いまさら知らされてもなぁ」と思ってしまった。

もしかしたら魅力的な設定なのかもしれないけど、それを後半に持って行き過ぎたせいで、どん詰まりになっている。

ただ、映画とゲームを比べるのは野暮だし、マトリックスは20年以上前の映画で、十三機兵防衛圏のメインターゲット層であろう10〜20代のからすれば、生まれる前の映画なので、2020年のゲームと比較すること自体が間違っているし、マトリックスを知らなければ、大どんでん返しになるくらい斬新なアイディアと、情報開示のタイミングなのかもしれない。

それでも、十三機兵防衛圏が、10年の1度の傑作であることは、疑いようがないけど

設定とビジュアル自体はすごいと思うし、UIも良くて遊びやすい。
色んな作品のオマージュが含まれているし、よくもこんな面倒くさそうなゲーム作ったなと思う。

正直、このゲームが10年の1度の傑作であることは、疑いようがない。
だけど、おっさんからすると、ゲームデザインの微妙さと、シナリオのテンポの悪さが気になって、楽しめなかった、という感じでした。

ついつい古い作品と比べてしまったけど、同時代で、同系統の作品でいうと、2019年に公開された映画『ハロー・ワールド』のほうが、仮想現実というテーマへの踏み込みかたも、シナリオも、好きだったかなと。(映画とゲームを比較するのは野暮なんだけどさ)

あとは、少年少女のエクソダスものという点では2019年にアニメ化した(マンガ連載は2002年)『7SEEDS』がよくできてた、というか、人類滅亡から『7SEEDS』の1話がはじまるまでの間の話が『十三機兵防衛圏』である、と解釈すると、最後、恋愛の花が咲きまくるところなんかしっくりくると思います。


以上、ネガティブな感想でした。

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