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プレバト!!歴代俳句ベスト50①【春/夏】

【はじめに】
2020年6月25日、「プレバト!!」の特別企画として
『歴代俳句ベスト50』が放送・発表されました。
優秀句30、秀逸句15、天3・地1・人1の計50句です。

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今回は、その50句(+α)を、「季節」ごとに分類して、季節感を皆さんと共有していきたいと思います。
※なお、ランク分け等はこちらのブログさんをご参照下さい。 ↓

季節は、複数の歳時記等を参考に選別しました。(放送日などとはズレることもあります)

1.春(13句)

暦の上では「春」とされる立春は2月上旬で、まだ寒さ厳しい時期。そんな寒さと不安、そして春を迎えた微かな希望の入り混じった心境を描いたのが東国原さんの2020春光戦を優勝した破調の一句です。

秀:まるでシンバル移り来し街余寒/東国原英夫
 20/04/09「春光戦」1位

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しかし勿論、暖かい日も出てくる「春」の季節は、外にも出やすくなって、格好(ファッション)から、春の訪れを感じられるようになってきました。単語一つひとつに無駄がない、村上名人の句です。

優:観覧車の列に春ショールの教師/村上健志
 20/02/13 ☆2へ前進

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心躍るのは人間だけではありません。まさに『道化師のギャロップ』のごと喜びを感じる春の動物達を読んだ一句。西洋画を見ているようだと夏井先生は大胆な比喩を絶賛しました。

秀:道化師のギャロップのごと牧開/鈴木光
 19/03/21 4級へ昇格

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中国に源を発する季語の一つに「山笑う」があります。季節ごと違った表情を見せる山々、春は「笑っているかのよう」。ここまで見てきた『人間』、『動物』、『自然』が全て盛り込まれた松岡充さんの一句です。

優:山笑う赤ちゃん象に哺乳瓶/松岡充
 20/02/13 1級へ昇格

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俳句の世界では「晩春」の季語とされ、与謝蕪村の句も有名な「菜の花」。今や、春の始め頃に咲く花としての印象が強く、“菜の花畑”を形成しているイメージがすぐに浮かびます。
兼題写真の枠外にまで発想を飛ばし、春の広がりを詠んだこの句は非特待生の作品ながら強く夏井先生の印象に残り、プレバト!!本にも登場しました。兼題写真の「6」を前提としなくても“優秀句”だと判断された様です。

優:6の次7の菜の花漕ぐペダル/藤井隆
 17/02/23 73点1位

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定型にこだわる梅沢名人が敢えて定型を崩したこの句は、春ののどかな光景を、文字通り「シジミ蝶を起こさぬように」という静かな余韻と共に描いた作品となっています。

優:水やりはシジミ蝶起こさぬように/梅沢富美男
 19/02/21 ☆2へ前進

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「獺祭(だっさい)」というと、すっかり純米大吟醸のイメージが定着していますが、もともとは春の季語。中国で生まれた季節を表す表現・七十二候のうち、立春から半月後ぐらいに来る期間に由来をします。

そんな古い季語を比喩に使って、まだ平成の歳時記には採用されていない『花粉症』を新たな時代の季語とすべく詠んだ名人のチャレンジングな一句です。(花粉症さえなければ一番好きな季節という人も多いですよね。)

優:花粉来て獺の祭りのごとちり紙/梅沢富美男
 20/02/20 ☆4へ前進

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俳句の世界で「花」と言えば、『桜』のことを指します。例えば、花吹雪や花見などは一般に桜のことを意味していて、花の付く季語は沢山あります。

しかし、中田喜子名人は造語の季語『花追風(はなおいて)』を作り上げ、その度胸と言葉のセンスを絶賛されました。こちらは春に不安が入り混じる秀逸句です。

秀:「とき」発車旅憂わしき花追風/中田喜子
 19/05/02 名人2段へ前進

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「花追風(はなおいて)」に誘われてか、桜が開花をし始めた日本列島…。

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『花』と『富士山』という日本を象徴する2つと見事に取り合わせた東国原名人のこの句は、2018年の俳桜戦のみならず、2020年6月までの1,719句の頂点に立つ句に選ばれました。

天:花震ふ富士山火山性微動/東国原英夫
 18/04/12 「俳桜戦」1位

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「花の命は短く」て、開花から半月もすれば散り始めてしまいます。そんな桜の咲き始めから、散るのを早めてしまう様な「雨」を総称して『花の雨』と言います。村上名人がタイトル戦初優勝を遂げた一句です。

優:サイフォンに潰れる炎花の雨/村上健志
 19/04/04 「春光戦」1位

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散った桜が水面に固まっている様子を「花筏(はないかだ)」と表します。普通なら美しい季語と捉えられますが、真逆、「不穏」さを演出したこの句で番組初のタイトル戦を制しました。東国原名人の一句。

秀:野良犬の吠える沼尻花筏/東国原英夫
 17/04/06 「俳桜戦」1位

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「桜の季節が過ぎると、日を追って『春深し』の感が強まる。」(引用元:角川俳句大歳時記)
「罅(ひび)」に焦点を絞って、『春深し』という、漠然としたイメージの季語を描くことに成功した優秀句です。

優:春深し象舎の壁の罅長く/東国原英夫
 18/04/26 名人7段へ前進

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そんな『春深し』という、漠然とした季語の力を信じて、番組史上初となる永世名人へと前進した梅沢名人の一句です。

優:花束の出来る工程春深し/梅沢富美男
 20/05/07 永世名人へ前進

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現代の我々が「桜」と言って連想することの多い「ソメイヨシノ」よりも、一月ほど遅く咲く八重桜(やえざくら)は、古くから親しまれてきました。

「不動産屋」の兼題写真から、上五と下五を巧く切り取った藤本さんらしい俳句を、春の最後にご紹介致しましょう。

優:1DK八重桜まで徒歩二分/藤本敏史
 20/04/09 「春光戦」2位

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春の始まりを『まるでシンバル移り来し街余寒』、
春の終わりを『1DK八重桜まで徒歩二分』という俳句で紹介しましたが、前者が2020春光戦の1位、後者が2位です。
一つのタイトル戦で始まりと終わりが同居しているあたりも面白いですね。

2・夏(15句)

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春はピンクや黄色など、色とりどりの華やかな季節でしたが、夏になると、新緑から万緑へと、自然も緑の色を濃くしていきます。
その自然の活力と、死を対比させた春風亭昇吉の秀逸句から始めましょう。

秀:万緑に提げて遺品の紙袋/春風亭昇吉
 20/06/04 75点1位

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初夏は緑色、そして梅雨の季節になると世界は「青色」に染まります。土壌のpH値によって七変化、色を変えるという「紫陽花(あじさい)」は、その名前だけで梅雨を連想させる強い力をもった季語です。

優:あじさいや三日続けて昼は蕎麦/武田鉄矢
 16/06/16 75点1位

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夏ならではの生活器具に「扇風機」があります。定食屋かどこかの扇風機を誰の脳内にも同じように再現できる一句を、先生は高く評価しました。

優:給茶機の上の軋めく扇風機/村上健志
 18/07/12 名人5段へ前進

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梅雨時は、天候が変わりやすく、晴れていたと思ったら急に雨が降り出すことも良くあります。だからこそ日本には雨を形容する言葉が沢山あります。例えば、「驟雨(しゅうう)」の「驟」は“馬が速く駆ける”様子にたとえた俄か雨のことです。

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「エルメスの騎士像」から時間経過をうまく描ききった村上10段の一句は、「人3選」の評価を与えられました。

人:エルメスの騎士像翳りゆき驟雨/村上健志
 19/07/04 ☆1へ前進

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そんな雨(夕立)も上がって太陽が顔を覗かせれば、雨上がりの空気と少し落ち着いた心地良さ。そんな光を見事に描いた2019炎帝戦の優勝句です。

秀:行間に次頁の影夕立晴/村上健志
 19/07/25 「炎帝戦」1位

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本州では「梅雨明け」が海の日前後となることが多く、ちょうど「夏休み」の時期と重なります。破調で子供達の躍動感を見事に描いた中田喜子名人の一句です。

優:光束ねるごと日焼子ら走る/中田喜子
 18/08/02 「炎帝戦」予選1位

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子供の好奇心を描かせたら藤本名人の右に出る者はいないでしょう!17年、「取り合わせの妙」を絶賛された一句です。

人:マンモスの滅んだ理由ソーダ水/藤本敏史
 17/08/31 「番組対抗戦」1位

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そして舞台は博物館から水族館へ、でしょうか。
『麻酔の効き目』という表現で、ある一定の時間を描ききったフジモンが、最初の炎帝戦を制しました。

秀:セイウチの麻酔の効き目夏の空/藤本敏史
 17/06/29 「炎帝戦」1位

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やはり、夏ならではレジャーとしての「海」の秀句が、多く誕生しました。特に、同じ2017年炎帝戦で2位となった NON STYLE・石田明のこの句は、破調で疾走感を描ききり、特待生ながら絶賛を受けました。

優:喧騒の溽暑走り抜け潮騒/石田明
 17/06/29 「炎帝戦」2位

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「潮騒」を聞きながら寝入る。そんなゆったりとした時間を愉しむのが大人なのではないでしょうか。添削は入り、タイトル戦4位ではありましたが、ベスト50に入ったこの句の感性には感服するばかりです。

優:籐(寝)椅子の脚(あし)もとにある水平線/横尾渉
 17/06/29 「炎帝戦」4位

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Kis-My-Ft2の千賀名人も負けてはいません。2019炎帝戦の予選で、揚花火のような大ホームランを放ちました。

優:黒き地の正体は海 揚花火/千賀健永
 19/07/18 「炎帝戦」予選1位

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しかし、夏は楽しいだけではありません。例えば、空梅雨であったりして、日照り・水不足への不安が囁かれることも時折あります。そんな折、大きな地震が襲い、更に人々の恐怖を駆り立てる……。

福島県出身で「無冠の帝王」とされた梅沢名人が初めてタイトル戦を制した秀逸句。『旱星(ひでりぼし)』という季語との取り合わせです。

秀:旱星ラジオは余震しらせおり/梅沢富美男
 18/08/09 「炎帝戦」1位

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そんな日照りに、人々の祈りが天に届いたか、『旱魃が続いた後に降る雨』(引用元:広辞苑)である「喜雨(きう)」が降り始めました。

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人だけでなく、植物も動物も喜ぶ雨。鯉という魚の柔らかさ、しなやかさを描き、タイトル戦2位となった一句もランクインしています。

優:鯉やはらか喜雨に水輪の十重二十重/梅沢富美男
 19/07/25 「炎帝戦」2位

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夏にも強く逞しく育つ植物は幾つもありますが、その中でも、やはり、夏を代表する存在の花は『向日葵』ではないでしょうか。明るさだけでなく、暗さも内包する「ひまわり」という花を詠んだ句、まずはこちらから。

優:ひまわりや廃線沿いのラーメン屋/横尾渉
 19/07/11 名人4段へ前進

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そして、夏の最後にご紹介するのがこの句。ベスト50には、番組初期の句は殆どランクインされなかったのですが、2015年に筒井真理子が詠み「83点」という高得点を叩き出した「向日葵」の句に、追悼の思いを込めて。

優:向日葵の波に逆らひ兄逝きぬ/筒井真理子
 15/07/30 83点1位

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昔ながらの歳時記では、旧暦7月となる「七夕」に代表されるように、夏のイメージの言葉たちも「秋の季語」とされています。
例えば、「お盆」や「盆踊り」、また「原爆忌(新暦8月6日・9日)」や「終戦記念日(8月15日)」等については「秋」に分類させてもらいます。

ただこの筒井さんの句は「向日葵」が主たる季語となっていますので、思いは秋に掛かりましょうが、「夏」の記事の最後に紹介しました。

【おわりに】

春から夏にかけて、「プレバト!!」歴代俳句ベスト50の句をご紹介してきました。次回は秋・冬・新年の俳句をご紹介していきます。

番組を何度も見返す様にこの記事も何度も読み返して頂けたら嬉しいです。後から振り返る際に、ぜひご参考になさって下さい。

それではまた次の記事でお会いしましょう。Rxでした、ではまたっ!


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