【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.14)《自作句あり》

【はじめに】
この記事では、2021年9月21日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第14回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。

今回は、私が『月百句』の初期にコメントしたのが実現した「中秋の名月」当日の俳句実況です。関東地方は曇り空で「無月」となっていますけれど、それも『月は隈なきをのみ見るものかは』の精神で参りましょう!

0.オープニング

普段と違い、火曜日の19時30分という早い時間帯からのスタートということもあってか、チャット欄を画面で追えなかったり、多少のトラブルはありつつも「中秋の名月」当日の『月百句』生配信がスタートしました。

お酒を用意しても良かったと語るほど、特別感のある「中秋の名月」配信。今日は『名月』とか『十五夜』とかの季語を使うと宣言して、20分近い雑談を経ての1つ目のテーマへと移ります。

1.席題「イヤリング/耳飾り」

以前、宝石で「真珠の養殖」を連想された村上さん、中秋の名月当日の1つ目のテーマは「イヤリング(耳飾り)」と決定。

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多分、村上さんだって余り着けた経験も無いはずなのに、色んなことをご存知で、その知識の広さがきっと俳句のリアリティにも結びついているんだろうなと感じました。少し迷って、出来た1句目がこちらでした。

【 1句目 】
『君と良夜揺れ収まっていくピアス』 村上健志
      ↓
『君と良夜揺れの収まりゆくピアス』

原句でもちろん良いのですが、私の軽く言った「収まりゆく」という文語体での表現も採用してくださり、下段の句がスケッチブックに書かれました。

上五を字余りにするのも、村上さんらしいですし、最後に「ピアス」という物に着地する辺りも良かったと思います。結局は「中七」の表現が多少曖昧なのが推敲の余地ありでしょうけれど、即吟としては十分だと思いますね。

《 Rx自作句① 》

さて私もイヤリングなんて全く疎い分野なのですが、それでも捻り出したら案外ボロボロと出てきまして、計4句も10分で出来ちゃいました。まずは、

①-1『満月の譜面スコアやオリーブの耳飾り』 Rx

「耳飾り」でも可というテーマを聞いて、本来は『オリーブの首飾り』なんですが、曲名を間違って『オリーブの耳飾り』として投句してしまいましたww ポール・モーリアさんゴメンナサイ!(?) でもまあ、こんな句も即吟ならではということで残しておきます。

①-2『満月やキャラと揃いのイヤリング』 Rx
①-3『満月や海の聞こえるイヤリング』 Rx

続いて、2句続けてお載せしましたが、こちらは、海をテーマにしたアニメ2作品(凪のあすから&白い砂のアクアトープ)と、そのキャスト陣によるエピソードに由来した連作です。

(声優さんが)キャラクターとお揃いのイヤリングをしているという話題や「貝殻で作ったイヤリングをキャストみんなでお揃いにした」といった話題があって、それを何とか俳句に盛り込みたいと考えたのです。

※ただ、「貝殻のイヤリング」は流石にベタかなと思って避けましたがww

①-4『十五夜や男子んなとこ見てんのね』 Rx

上の4句目は、「さえずりねえさん」さんが、村上さんが「ピアスの揺れ」に注目してる事に触れて、次のようなコメントをしていたので、コメント欄にあった言葉を丸々お借りしたものです。

26:28 さえずりねえさん
​男子ってそういうとこ見てるんですね🥰

何とか17音の器に盛付けたという感じですが、それなりにはなってるかな?

2.席題「ラジオネーム」

さて続いて2つ目のテーマは「ラジオネーム」となりました。「ラジオ」は一日中放送していますし、勿論「月」との相性も良いでしょうが、こうして「ラジオネーム」に限定するとどうか。ネックは6音な所でしょうか?

熱心なハガキ職人ではなかったものの、深夜ラジオなどを聞いていた経験のある村上さん、こんな句を2句目に発表しました。

【 2句目 】
『名月やラジオネームに聞き覚え』 村上健志

常連さんなら「聞きなじみ」でも良いのかなと思ったのですが、なるほど、「何か前にも聞いたことがある気がする、気のせいだっけ?」ぐらいの定着度合いならば、この『聞き覚え』という下五のチョイスが正解でしょうね。

《 Rx自作句② 》

コメント欄では、テーマが決まった直後から、この曲が流れていました。
皆さん、今月「MV」がYouTubeにアップされましたポルノグラフィティの『ミュージック・アワー』(R.N“恋するウサギ”ちゃん)を想像してました。

私も、ニコニコ動画で『またお前か』と言われるぐらいに常連だった番組が少々あるラジオリスナーだったので、皆さんのチャット欄でのトークに非常に共感していました。私からこのテーマでは2句ほどご紹介。まずは、

②-1『十五夜や ほぼ本名のラジオネーム』 Rx

一定数いらっしゃいますよね、「本名もじったんだろうけど、これじゃバレバレじゃんかww」というラジオネームの方。ふとそれを思い出しました。

続いて、私も時々あったんですが、予想外のタイミングで、自分のラジオネームが読まれて、頭が真っ白になった経験ありませんか?

②-2『ラジオネームの後は記憶なき良夜』 Rx

3.席題「小走り」

続いて3つ目のテーマとして選んだのが「小走り」という動作の単語。以前短歌で「小走り」を詠んだことがあったんだそうですけど、これで大苦戦。

スピードを意識するようになった9月後半としては最長レベルの熟考から、ボツ句を挟んで出来たのがこちらの句でした。

【 3句目 】
『小走りで戻る看護師月今宵』 村上健志

これは非常に自然な流れの句が出来上がりました! 「小走り」であることに不自然さは無いですし、「戻る」という動詞も活きています。
看護師さんが「月今宵」という季語と合わさっているために、『中秋の名月を忙しい中でも愛でる気持ち』を持ってるというシーンを切り取れてます。

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ある種、コ口ナ禍の状況下におけるエールとも捉えられる素敵な句でした。

《 Rx自作句③ 》

「小走り」という動作によって「光景を描ける」のが大事なんですが、逆にテーマとして決められてしまうと、確かに案外難しいですよね。ということで、私も少し真っ向勝負を避けたような作品が出来てしまいました。

③-1『定時デー小走りで満月まで』 Rx

数えてみると「5・5・6」で16音という「字足らず」な句ですが、これもまあたまには良いんじゃないでしょうか。「定時デー」という言葉を上五に据えておきながら、後半でファンタジーな世界に振るという手法でした。

そして、この句も次の句も、「中秋の名月」というタイミングでなければ、恐らく出来ていなかったであろう句です。 村上さんがボソッと「小走りで月が欠けていく」みたいなことを仰っていたので、それを借りました。

③-2『小走りで欠けゆくコ口ナ禍の月か』 Rx

ちなみにもう1句、「小走り」とは全く関係が無いのですが、生配信の最中に村上さんのPCが一時フリーズしてしまった様で、その慌て方を見ての1句です。(実際には壊れておらず、生配信は続行しましたけどね~)

③-3​『パソコンは壊れるものさ盆の月』 Rx

4.席題「ポテサラ(ポテトサラダ)」

最後のテーマは「ポテサラ」です。お馴染みの飯テロ(?)食べ物シリーズです。今回も食卓に並びそうな親しみやすい感じで良いですねー

少なくとも「色味」は、中秋の名月にもピッタリではないでしょうか。ポテサラと略しても通じるぐらい親しまれている料理です。そしてこの4句目は史上最速ペースだったのではないでしょうか、僅か1分半で出来上がりました。それがこちら。

【 4句目 】
『手抜き手抜きとポテサラ買って今日の月』 村上健志

上五でリフレインによるリズムを作りつつ、中七で評価というか詠みが分かれそうですが、背伸びしていない食卓の光景が思い描ける句となりました。

『今日の月』というのは、『名月(十五夜)』の傍題にあたる季語でして、それを「中秋の名月」生配信の当日に選ぶあたり、季語のチョイスも流石の一言でした。

《 Rx自作句④ 》

最後に私からも2句ほど「ポテトサラダ」の句を。今回は敢えてポテサラと略した表現を使ってみました。私は普段全く使わないですが、この略語ww

④-1『ポテサラの皿の丸まる良夜かな』 Rx

まあ、紙皿とかなら物理的に丸まるかも知れませんが、個人的には切れ字の「かな」を使って、丸まるはずのない固いお皿が「丸まっている」様に感じるという意味合いで書きました。それ以上でもそれ以下でもない句ですww

④-2『満月ですねポテサラお口に合いましたら』 Rx

こちらの句も、女性口調を使ってみましたけど、それ以上でもそれ以下でもないですww なかなか料理が強いと季語である『月』が負けちゃうというのがネックですね、難しいです。

【おわりに】

①-1『満月の譜面スコアやオリーブの耳飾り』
①-2『満月やキャラと揃いのイヤリング』
①-3『満月や海の聞こえるイヤリング』
①-4『十五夜や男子んなとこ見てんのね』

②-1『十五夜や ほぼ本名のラジオネーム』
②-2『ラジオネームの後は記憶なき良夜』

③-1『定時デー小走りで満月まで』
③-2『小走りで欠けゆくコ口ナ禍の月か』
③-3​『パソコンは壊れるものさ盆の月』

④-1『ポテサラの皿の丸まる良夜かな』
④-2『満月ですねポテサラお口に合いましたら』

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《 Rx自作句⑥ 》「つる」さん企画応募作

「つる」さんが個人企画として、中秋の名月当日に開催されたのがこちら。『季語名月で俳句詠みませんか』です。

『月百句』以上のハードルとなるのが、季語が「名月」と指定されている所です。だから、私は「名月」である必然性を考えて3句応募してみました。

①『名月よ「名」とつけどもこんなもんか』 Rx

早速「メタ」い印象の句から入りました。『名◯』って呼ばれ方をされる物は、「名所」とか「名物」とか色々ありますが、「名月」もその一つです。

でも、今日が『中秋の名月』って言われなかったり、『この名所にはこんな由緒が』とか説明されなければ、「良さに気づけない」こともあると思いまして、『普段の満月との違い』どころか『満月か否か』の違いにすら気づかないというのが本音じゃないでしょうか。

「名月」という言葉、ひいては「名月という言葉に酔っている自分」というものに対する思いも込めた俳句(?)です。

②『名月じゃなけりゃ愛でてもくれないの』 Rx

続いては、「名月」の目線でも、「人間(女性)」の目線でも、お好きに読んで下さいという作品です。

付き合っている女性だとしたら、「名月って口実もなければ、私(女性)のことを愛してくれないの?」という意味合いになりますし、これを名月自身の思いを想像した句として、「名月(年に1度)じゃなければ、私(月)のことを愛してくれないの? 年中、私はいるのに。』って意味になります。

まあこういう風に「ダブルミーニング」をするならば、無理もないですし、片方の詠みでも鑑賞できるので、ぜひ作句のヒントになればと思いますね。

③『名月や無言で騒ぐコメント欄』 Rx

最後にご紹介するのが冒頭の動画(俳句実況)を受けて、そして、「つる」さんの企画のnoteのコメント欄を受けてのご挨拶句になります。

昔ならば、名月を楽しむのは、実際に集まった数人~数十人でしたけれど、今や「ネット」を介して、同じ中秋の名月の日を、不特定多数と共有して、俳句なんかも読んじゃったりする時代になりました。

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「無言で騒ぐ」という部分を、現下のご時世と読んでも良いですし、スマホやPCで参加する際に「ワイワイガヤガヤ」するコメントをしていても、現実には無口(無言)というギャップも合わせて詠み込んだつもりです。

ちなみに、これらの句を作るに当たっては、「つる」さんの別の記事である『4拍子のリズム』に関する部分を相当意識した「字余り」句にしてます。

「三三七拍子」が実は「4拍子」というのも面白い視点だなぁと思いつつ、皆さんも『17音』に拘るのではなく、寧ろリズム感を大事にして作句してみては如何かなと思いました。それでは、また次の回でお会いしましょう!

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