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Yellow Houseの企業理念のような話

会社を立ち上げるとき、まず最も必要なものはなんだろう? 事業計画。人員。資金。コネ。ヴィジュアルアイデンティティ。事業所。WEBサイト。いや――まずはなによりも、理念ではないか。それがぼくの考え。

なにも綺麗ごとをいいたいのではない。どんな事業をするにせよ、理念とか理想がまずあるべきで、それがなければただの金集めになってしまう。金を集めるのが目的なら極端な話、生産性のないギャンブルや投資、クラウドファンディングみたいな物乞い、あるいは人倫に反する犯罪でもいいってことになる。そこまでいかなくても、お客さんを騙したりだれかから搾取してカモにする、みたいな詐欺まがいの稼ぎ方になるだろう。理念や理想こそが、人を正しい道に向かわせるのだ。

とりわけ、クリエイターは積み上げてきた才能やスキルに自負があるから、倫理に反する仕事を極端にきらう傾向にある。たとえば過去の事例をみても、業務上の横領・詐欺は経理職や営業職がやるもので、クリエイターによる事例なんてあった試しはない。

※余談だが、職業別犯罪統計(https://tmaita77.blogspot.com/2016/03/blog-post_27.html)をみても「専門的・技術的職種」はじっさいに全職種中で最も犯罪率が低い。3番めに犯罪率が低い事務職種の、さらに半分にも満たない数字である。これをクリエイター諸氏はもっと誇りにしてもいい。

クリエイティヴの世界で盗作が人殺しのように軽蔑される体質は、クリエイター特有の高度に発達した潔癖な職業倫理感によるものだ。才覚ひとつでお金以上の価値を生み出してナンボ。口先だけのフェイク野郎が、生きていける世界ではない。あくまで先義後利。利益はあとから、ついてくる。

かくいうYellow Houseにも、理念というか、理想のようなものがある。それは究極をいえば――太宰治の小説みたいになって恐縮だけど、弱い立場の人たちの味方である、ということだ。

理想の話をしよう。Yellow Houseは、障害があったりで就業困難な人を社員として迎え入れて、給料と住むところを保障し、デザインや動画編集、WEBについて実績や職歴を積んでもらって、自信がついたら独り立ちするかもっといい会社に移ってもらう――そんなふうに社会への窓口みたいな会社になればいいな、と思っている。

もちろん、すでに企業には一定数、障害者を雇用することが義務づけられてはいる(令和3年の改定では、民間企業で法定雇用率2.3%)。ただ、障害者雇用では身体障害者が優遇される傾向にあり、制度にとりこぼされる人も少なくない。心を病んだ人たちはとかく扱いにくいという偏見があるため、障害者枠でも忌避されがちだし、一方で引きこもりだとかニートだとかの人たちは障害者ではないため、問題の外に置かれている。ぼくはYellow Houseを、そうした人びとの受け皿にしたいのだ(これはぼくが氷河期世代で、仕事を得るのに苦労した経験からのアイデアだと思う)。

デザインやWEB、動画編集は、体力勝負ではない。極端な話、車椅子の人でも片手がなくても、やれなくはない。人間関係で心を病んでドロップアウトしたような人でも、スキルさえあれば、最悪、ひとりでもやっていける。各々の特性を、最大限に活かせる職種だと思う。

もちろん、そんな慈善事業まがいのやりかたで、黒字になんかなりっこない。ただ、そんな活動を通してひとりでもふたりでも助かる人がいるなら、たとえ赤字でも、続けていく意義がある。きっとね。

noblesse oblige。フランス語で貴族には義務がある、みたいな意味だったと思う。要は、お金があるなら、それを人のために使わなあきまへんで、という話なんだけど。ぎゃくにいえば、人のためになにかしようと思ったら、まず経済的な体力がなきゃ、お話にならないのである。

ぼくはこれまでずっと、お金への執着が希薄な性格だった。いい家だとか車だとか、興味もなかった。簿記の勉強をしたこともあったけど、お金にまつわる勉強なんて卑俗なことだよな、という意識さえあった。オスカー・ワイルドや芥川ではないけど、芸術より価値のあることなんてないと、本気で考えていたのだ。だから、仕事なんてそっちのけで、小説やマンガを作っていた。それらは新人賞の最終候補になったり、優秀賞をもらって文庫本になったりもした。でも、それって怠惰だったのではないか、とさいきん思い直している。ディレッタントやデカダンスも結構なことだが、人はいつまでもそうあるべきではない。ぼくがお金を稼ぐことにいまさら貪欲になっているのは、そうした理由からのことだ。

手前味噌で恐縮だけど、倍率数百倍の世界である程度結果を出したような人並み外れた才覚の持ち主が本気で金稼ぎにコミットしたら、どういう結果になるだろう? 人並み外れた結果を引き当てることは、すでに約束されている。

威勢のいいことをいうのは、逃げ道を塞ぐためだ。それをめざして頑張ります、ぼくも。


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