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「話してもらう」と「厳しいフィードバック」の両立とは|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

こんにちは。YeLLのHISAKOです。
『反対意見も建設的に言い合える、心理的安全性の高い組織と「聴く」力』イベントレポート第3弾をお届けします。

心理的安全性に有効であろう「聴く」とは何なのか?何ではないのか?

第1回目のレポートでは、

「心理的安全性と仕事の要求水準の高低は別軸で捉える」
「学習し、高いパフォーマンスを出すチームというのは、心理的安全性が高くブレーキを緩めている状態でありながら、仕事の要求水準を満たすためにアクセルも踏んでいる状態である」

ということをお伝えしました。

心理的安全性が高く、何でも話を聴いてもらえる職場で、メンバーに高い仕事の水準を要求する、この両立は実現できるのでしょうか。
何でも話してもらうとぬるい環境となり、高い水準の要求をすることが難しくなる。逆に高い水準の要求をすると、話しにくい環境になってしまう・・・ということは頻繁にありそうな状況です。
これを両立させるポイントが「きく」にある、とエール株式会社 代表の櫻井さんは言います。

2つの「きく」、「聞く」と「聴く」の違い

英語でいうと両方ともListeningですが、「聞く」はwith Judgementで評価、判断をしながらの聞くとなり、関係が上下関係になりやすい。一方の「聴く」はwithout Judgementで評価、判断なく、ただ相手の話を聴くという行為で、横の関係で話が聴きやすいということです。

共感に関しても二つの「きく」には違いがあり、「聞く」場合は、「なるほどね、私もそう思う!」と自分の主観をもとに判断しながらの自分目線での共感のことを言い、「聴く」場合は、「なるほど、あなたはそう思っているんだね」と相手目線での共感となり、私がどう思うかは関係ありません。
聴くことで、相手は共感してもらえたと感じますが、自分は同意も賛同もしていないし、従うわけでもないということです。

部下の文句、愚痴、会社に対しての意見をきくと、従わなければならないと思いがちなので、きけないというケースがあるかもしれません。
ただ、「聞く」と「聴く」を切り離して考え、話を「聞く」ではなく「聴く」ことで、相手の話を聴き、共感し、受け止めた上で、賛同することもなく、違うことは「違う」と言える状況になります。つまり、話を聴くことと、高い要求をすることの両立が可能となるのです。

とにかく聴くに徹した後に、こちらの意見を相手に聴いてもらえるようになる体験は私もたくさんあるな、と思いました。
反対に、聞きながら「私も一緒!」「分かる分かる」とコメントしながら聞くと、相手の口数が減っていく・・・という状況に陥りがちなことも。
共感することは同意することではありません。
「聴いてもらった」と思えることで「共感してもらった」と思えるのです。
そして、「自分の話を聴いてもらった、受け止めてもらった」と思えることで、はじめて、「相手の意見も受け止めよう」という意識が連鎖します。

もの凄く厳しい指摘をするのに部下との信頼関係が壊れない上司は何をしているのか?

この点に関して、櫻井さんはご自身の仮説に基づくPositive Intention Matrix(ポジティブ・インテンション・マトリクス、肯定的意図のマトリクス)をもとに分かりやすく図解説明していました。

PIマトリクス

この表はどのレベルまでを肯定的意図をもって関われているのかを表しているもので、縦軸は自分という軸(より広い意味でのセルフー>行動まで)、横軸は時間軸(長いスパンとなる人生ー>今のタスクまで)を指していて、ともに下から順に影響していくという関係性を表しています(セルフが感情に影響し、感情が思考に影響する。人生がキャリアに影響し、キャリアが役職に影響するなど)。

左下の「人生」レベルの価値観(「セルフ」)についての対話がより深いレベルの象限となり、ここを肯定できていることで、右上の「タスク」レベルでの「行動」に対して厳しいことを言ったとしても、関係が崩れないということが起こるという仮説です。
例えば、メンバーの作成した顧客への提案資料が明らかに低い完成度だった場合、「これはひどい」と仮に上司が言ったとしても、その提案資料を作ってきたメンバーの「良い提案資料を作りたい」という想いや、その手前にある仕事に対しての価値観を事前に肯定できていれば関係性は崩れないケースが当てはまります。

「聞く」と「聴く」に当てはめると、相手の価値観や感情は評価、判断せずに「聴く」のですが、仕事上のタスクで、行動として出てきたアウトプットに関しては、「聞き」ながら明確に評価、判断を必要とし、それがなければ高い業務水準は満たせません。価値観、感情はwithout Judgementで、思考、行動は評価、判断すべくwith Judgementで自分目線で聞いてあげてフィードバックしてあげる、ティーチングしてあげることが大切です。

また、「聴く」に関しては、上司が「聴いているよ」と言っても、メンバーが「どこまで評価、判断なしに聴いてもらえると思っているか」がポイントです。これをメンバーが感じていないと、上司が行動レベル、思考レベルで評価判断する聞き方をした場合に問題が生じる訳ですね。

PIマトリクスときく

価値観などの深いところを聴くのは難しい職場もあると思います。
「ウチの会社ではそういう話はちょっと…」という場合は、「タスク」や「役職」レベルの「価値観」を対話していくことを推奨します。具体的には、「サービス共感」や「ビジョン共感」と言われるものです。職場の中で「我々は共通の目的に向かってやっている」という認識が揃っていれば、高い要求・厳しい指摘をしても大丈夫だったりします。「自分たちが何者で、何をする集団であるのか。」このようなことがチームで話し合われ、そこに対してお互いの信頼があるという状態が、心理的安全性の高い組織につながっていくのではないでしょうか。

なぜ今、聴くが求められているのか?

最近では至る所でListeningと言う言葉が、人事界隈ではEmployee Listeningや、Employee Voiceという言葉も聴かれるようになってきています。櫻井さんの仮説によると、昔、Positive Intention Matrixの深いレベルの聴くは構造として担保されていたと言います。
つまり、昔は、人生、キャリアの選択肢が少なく価値観が画一的であり、その価値観は会社の仕組み(終身雇用、年功序列など)が満たしていたし、コミュニケーションの機会も多様(社宅、飲み会、給湯室、喫煙所など)で、「ちょっときいてくださいよ」という機会が頻繁にあったわけですね。
そういう中では、「背中を見てついてこい」も許されていたわけですが、今のように人生もキャリアも選択肢が多様化している状況では、「何もきかずについてこい」はうまく行かず、心理的安全性と厳しいフィードバックを両立するためには、意図的にメンバーの声を「聴く」機会が必要になっています。

また、きくにはポイントがあり、多くの1on1では、きき手は聴いているつもりでも、意外と、評価、判断をしながらの「聞く」になっていることが多く、話し手からすると「聴かれていない」コミュニケーションだったり、逆に「傾聴が大事だから」と言ってずっと聴き続けようにも、それは非常に難しい事です。大切なのは、会話の中で、聴く側が「聞く」と「聴く」のバランスを取りながら「きく」ことです。「私はこう思う」「反対」「賛成」といったように、評価、判断しながら聞いているのか、「そうかあなたはそう感じているんですね」「そう感じたのは何がそうさせているのですか?」とwithout Judgementで聴いているのか、自分の中で意識しながら織り交ぜながらきいていく、というスキルがこれからのコミュニケーションでは求められます。

おわりに

イベント中、篠田さんも櫻井さんも、私がこれまで企業人として、またYeLLのサポーターとしての活動を通して体験してきたことや感じていたことを分かりやすく言語化していました。

聴くという、ともすると消極的な行為が社会変容をも起こしていくだろうと信じる自分の想いをバックアップしてくれる、そんなイベントでした。登壇して下さった篠田さん、櫻井さん、そしてイベント企画運営チームの皆様、ありがとうございました。これからも「聴く」の文化を日本で、そして世界へと広めていく活動を愉しんでいきたいと想います。まずはサポーターとしてプレイヤーさん達のお話を丁寧にバランスよく聴きながらも、一緒に紡ぐ30分のセッションに自分自身が喜びを感じながら、聴くを繋げていけたらと思います。


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