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試練や鍛錬抜きでメンタルを強く保つ5つの方法

少し前までは主に医療関係者が用いていた「メンタル」という言葉。最近では高校生が「メンタルやられそう」なんて日常使いしていたりして、すっかり市民権を得ています。今回は、そのメンタルを強く保つ方法について見ていきましょう。

「メンタルが強い」と聞いてまず思い浮かぶのは百戦錬磨のトップアスリートでしょうか。確かに「メンタルの強さ(メンタルタフネス)」という言葉とその意味が最初に登場したのは1991年に出版された、スポーツサイコロジストJames Loeherの書籍だと言われています。

また、トップアスリートを対象にした調査結果によると、優れたパフォーマンスの50%は精神的または心理的要因の結果であり、コーチの83%が、競争に勝つための最も重要な心理的特性として精神的タフさを挙げたそうです。こうやって数字で見ると、やっぱりメンタルの強さは大切なんだ・・・と改めて理解できますね。

そして近年、このメンタルの強さは、「レジリエンス(回復力)」「グリット(やり抜く力)」の注目によって、ビジネスや学習においても益々重要な要素として広く認識されています。

どんなに才能があっても、優れた知識やスキルを有していても、挫折から再び立ち上がったり、逆境の中で最後までやり遂げたりできなければ、目的地には到達できず成功もできないことが様々な研究で明らかになってきたのです。でもこれ、裏を返せば能力的には秀でていなくても、自分を強く保って諦めなければ、自分が描いた場所に到達できるということです。そう思うとメンタルって本当に貴重な存在です。

じゃあそのメンタルを強くするにはどうすれば良いのでしょう。すぐに思いつくのは、とにかくたくさんの経験をして試練を乗り越えて、心を「鍛え上げる」ということ。でもそれってすごく時間かかりそうだし、「もう日常を安定的に生きるだけで精一杯!」という人も少なくないと思います。そこで今回ご紹介するのは、すぐに実践できて効果がすぐに現れそうなメンタルを強く保つ5つの方法です。

目次

  1. 1)自分に対する「批評家」ではなく「コーチ」になる

  2. 2)挫折や試練に直面したら一歩下がって「これは何を教えてくれているのだろう?」と自分に問いかける

  3. 3)感情を受け入れじっくり向き合う

  4. 4)内発的なモチベーションを見つける

  5. 5)メンターやチアリーダーを見つける

  6. まとめ

1)自分に対する「批評家」ではなく「コーチ」になる

「ああすればよかった」「こうすればよかった」「あの人と比べて自分は・・・」と、自分の良くないところを数え上げ始めたらきりがありません。でも気がつくとついついやってしまいます。それが始まったなと思ったら、「批評家」から「コーチ」のマインドに切り替えましょう。できればノートを取り出し、ページの真ん中に線を引いて、左側に自分に対する批評、右側にそれぞれに対するアドバイスや励ましを書いていくのです。昨日はできなかったけど、今日はできるようになったこともしっかり覚えておいて「これはやれたよね」と、文字にして自分に伝えてあげましょう。

2)挫折や試練に直面したら一歩下がって「これは何を教えてくれているのだろう?」と自分に問いかける

「挫折や試練が成長の機会であることは経験上知ってるよ」という人もたくさんいるでしょう。しかし、ただ盲目に辛い経験を繰り返しているだけなら「痛みに慣れてきただけ」ということもありえます。そうではなく、挫折を真の意味での成長の機会にするには、立ち止まって深く考えることが重要です。その状況に至った経緯、自分の中の何がその状況を生むことに作用したのか。何を変化させれば解決できそうか。うまくいかない状況が起こったことで気づいたこと、良かったことは何か。今からやってみたいことは何か。書き出してみましょう。

3)感情を受け入れじっくり向き合う

Robert Plutchikの「感情の輪」をご存知でしょうか。人の感情を8つの「基本感情」(喜び・信頼・恐れ・悲しみ・嫌悪・怒り・驚き・期待)に分類し、その強度や、二つの感情が混じり合った場合の「二次感情」を図に示したものです。それを見ると2つのことが分かります。

一つは人間が抱く感情はネガティブなものが多めだということ。私たちは常に「危険な目にあいたくない」「辛い思いをしたくない」と危険や損失の回避のために構えている状況にあるとも言えるのです。ですからくよくよしたり不安を感じたり、喜びや安心感が長続きしないのは当たり前であり、みんな同じようなことに日々向き合っています。そう思うと自分の中に沸き起こるネガティブ感情も「ありがち」なこととして余裕を持って受け入れられるようになり、そこに引きずられることが起こりにくくなります。

二点目として、「プルチックの感情の輪」では、それぞれの感情の対極にあるものがわかりやすく示されています。例えば悲しみの反対は喜びで、悲しみを感じている時に喜び感情を呼び起そうとしてもかなり難しいことがわかります。ですから無理に押し込めたりせず、その感情が薄まって、他の感情に移行しやすくなるまで焦らず向き合ってみることをお勧めします。ちなみに、ある調査結果によると、悲しみが持続するのは約120時間(5日間)。怒りは2時間だそうです。それぐらいなら待てそうですよね。

4)内発的なモチベーションを見つける

例えば、「周りのみんなが取得しているから」という理由で資格取得を目指し勉強をしても、自分にとっての意味や喜びが見出せていなければ、粘り強く学習し続けることができません。でもその資格を取得することで、自分が夢見ていた職業に就けるとか、専門知識を活用して身近な人を喜ばせたいという自分の内側から生まれたモチベーションがあれば、困難を乗り越えられるはずです。ですから何かに取り組む時は(たとえそれが自分から手を挙げたことでなくても)自分がそれに取り組むことの意味をしっかり確認しておきましょう。そうすることで、やり遂げるための努力やエネルギーをかなり削減でき、メンタルへの負担も減らせます。

5)メンターやチアリーダーを見つける

いくら目的意識がはっきりしていても、ポジティブなマインドを維持していても、常に100%前向きでいることは容易ではありません。自分に限界を感じた時に、改めて自分では気づかない癖や忘れていた強みを言葉で伝えてくれて、一人じゃないことを気づかせてくれて、気持ちを前向きにしてくれるメンターやチアリーダーが必要です。そんな人たちを獲得する方法があります。自分が挑戦していることを仲間になってほしいと思う人たちに共有することです。そして悩んでいることがあったら素直に伝えます。また、相手が困っている時は全力で耳を傾けましょう。そうすれば知らない間に、あなたの周りにはあなたを支えるコミュニティが生まれています。

まとめ

今回は、「試練や鍛錬抜きでメンタルを強く保つ5つの方法」をご紹介しました:

1)自分に対する「批評家」ではなく「コーチ」になる
2)挫折や試練に直面したら一歩下がって「これは何を教えてくれているのだろう?」と自分に問いかける
3)感情を受け入れじっくり向き合う
4)内発的なモチベーションを見つける
5)メンターやチアリーダーを見つける

冒頭でメンタルの強さを象徴する存在としてトップアスリートに触れました。でもトップアスリートの日常を想像してみてください。自分の肉体や感情の小さな変化にも注意を払い、決して無理をせず、しっかり休み、コーチやメンターの力を借りてゴールに向かって邁進していますよね。そう、百戦錬磨のトップアスリートでもそんな習慣や環境が必要なのです。ですから、自分一人の血の滲むような努力でメンタルを強くしようともがかず、弱さとも向き合い、自分のありのままを抱きしめて、助けを求めていきましょう。

(寄稿:泉谷道子 - 心理学博士)

参考文献:

“5 Ways to Help Yourself Advance Your Mental Strength”
(Ashley Elizabeth, 2020)
https://www.lifehack.org/823369/help-yourself

“Are You Mentally Tough?”

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