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時間

 僕が高校生のころに突如として現れた吉本超合金を無断転載するアカウントが消えていた。

とにかく過激で勢いのある超合金はまさしく僕が見たかった昔のバラエティで受験生のころには勉強そっちのけで見まくってた。牛乳ファイト、街行く人に鼻くそをつけろ、通りすがりの外人に日本語でキレろ、パンイチでデパートに行き貰い物だけ装備してキャンプする、等々見るまでもなく最高の企画ばかり。

それに、天然素材解散後再びスターダムに上るため別の道を探していたFUJIWARAのがっつき方というか勢いがマジでやばかった。当時のbaseよしもとの空気感なのだろうがボケのペースがRANCIDの五枚目くらい速い。そこにテンポ良いカット割り、有名なテレビ番組やゲームを引用したBGMといったハイセンスな編集が乗るのだが、相性が神。2010年代に入ってバラエティ番組から消えたとされるスピード感である。当時はここまで若者のために作られた番組があったのかと感動する。その編集のためにBGMの著作権処理がめんどうなようで、DVDや配信では音声が上乗せされていて見れたものじゃない。カス。

RANCIDの5枚目。速くてかっこいい。


テレビはナマモノだと松本人志は言っていた。もしそうなら超合金はとっくに腐っているはずだが、あの時代であったからこそできた、あの時代であったからこその熱狂をどれほどのものだったか想像しながら見るという文脈も含めて心から好きだった。

インターネットの海を揺蕩うカビの生えた無断転載動画。何十年も前に放たれたボトルメールを開けたとき微かに感じた当時の熱を帯びた空気が美しかった。今はもうできない。

時間は不可逆性を持つ。過去はいつかの今であるが、過去はいつまでたっても今にならない。高校時代、僕の前にあらわれたヒーロー(パンイチのフジモン)はそんな時間の流れを超えて過去に帰ってしまったのだ。いつかまた過去の住人が海に流すまで僕はフジモンを待とうと思う。


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