
なぜ絶賛右肩下がり中の出版系でビジネスをやろうとするのか #本業界テック観察
Papers & Laboは書籍・出版分野のスタートアップとして事業を進めている。この分野が下り坂にあることは誰しも認めるところ。だのに何故スタートアップをやるのか。そこのところを書いておく。
紙の本は終わった?
出版不況と言われて久しい。改めて言うまでもなく、各種データ、識者の意見からそれは明らかだ。電子書籍やWebなど電子メディアの発達、取次に起因する流通構造の限界、本以外の趣味による可処分時間の奪い合い…… 原因を挙げればキリがない。
嗜好品としての本
じゃあ紙の本がなくなるか?といえばそうではない。本の内容が紙本でしか提供されていない場合など、紙本に価値のあるケースはいくつかある。その一つに嗜好品としての本がある。Webや電子書籍に取って代わられない価値のある本、それは嗜好品として楽しめる本だ。
雑誌や新書、漫画、小説と様々なジャンルの本はWebや電子書籍でも提供できる。地球温暖化のことを考えるとじゃぶじゃぶ紙を使って情報を伝えるのはどうかなと思うし、情報の伝達スピードを考えてみても多くの本をWebと電子書籍で提供していくべきだと思っている。
ただ、そうして紙の本が減っていった先に残る紙本もあっていい。それは贅沢で嗜好品の性格を帯びている。わざわざ紙の本として作ることに意味のある、本そのものに価値がある本が残っていくと考えている。
クラフトブック
贅沢品としての本、それはクラフトビールに代表される「他にはない魅力的な商品を個人や集団がこだわって作っている」雰囲気にも通じている。大量に作られ、販売されてきた本が、他の媒体に取って代わられた後、それでも本として求められるのはこうしたクラフトな本=クラフトブックだ。
クラフトブックの例
実はもう既にクラフトブックを実践している会社やサービスがある。一つは、南インドのチェンナイにある出版社「タラブックス」が手作りしている絵本だ。紙から手作りしているこだわりようで、世界中の本好きが集まるボローニャ・ブックフェアで賞を受賞したりと注目されている。
だから僕は絶賛右肩下がり中の出版系でビジネスをやる
クラフトブックそのものだな と、ZINEを見ていて思う。リトルプレスとも言うこの出版物は、主に個人が写真やイラスト、小説を本にしたもの。内容はもちろん、装丁や印刷所選びまですべて自分で行う。表紙に穴を開けたり、映画パンフレットのように横長の作りにしたりと「自分の好き」が爆発している。そんなZINE / リトルプレスを売り買いできるマーケットプレイスを作りたいと思い、Papers & ZINE (ZINEのマーケットプレイス) を始めた。一つ一つ、ZINE作者の方にインタビューして、どんな「好き」が詰まっているかがサイト上で分かるように作った。
ゆくゆくは Papers & ZINE でZINEの制作、流通もやれるようにしたい。印刷所との提携、倉庫契約も考えている。そうして、嗜好品としての本 = クラフトブックを世の中に送り出していきたい。
Papers & ZINE β版 → http://proto1.xsrv.jp/
Photo by Cory Tanner on Unsplash
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