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「不当な差別の禁止って?」-障害者差別解消法から考えてみよう

よこはま発達相談室の佐々木です。いつも記事をお読みいただき、また「スキ」「フォロー」「シェア」してくださっている皆様、ありがとうございます。前回は、障害福祉制度について、現時点の僕が考えていることや感じていることについて書かせて頂きました。今回は、すでに色々な場所で見聞きしている方も多いかもしれませんが、"障害者差別解消法"について、2回に分けて皆さんと共有したいと思います(本当は1回でと思ったのですが、かなり長くなりそうだったので2回に分けさせてください)。

障害者権利条約の存在

日本では、障害者の方々に関する法律が整備されてきたことは前回の記事でも少しだけ触れさせて頂きました。前回の記事についてまだという方、ご関心のある方は、下記にリンクを貼付しておきますので、そちらからご確認ください。

これらのような法整備が進んだ背景には、「障害者権利条約」の存在があります。これは何かと言いますと「障害者の権利に関する条約」のことで、2006年に国連において採択されたものになります。そして条約の中には、以下のような記載があります。

権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めている。                  ー内閣府のホームページより抜粋

やや難しい表現ですが、この条約に批准した国は、障害のある方々へのあらゆる差別の禁止と、障害の有無に関わらず社会においての平等を保障することを国としての責務として位置付けられることになります(ここでいう平等というのは、みんなが一律に同じことをという意味ではなく、人としての尊厳は同じであり、それぞれを尊重することを指します)。そして、条約に基づいて法律および、サービスの整備が求められることになります。当時の日本は残念ながら法整備は十分ではありませんでした。そこから「障害者基本法の改正」・「障害者総合支援法」・「障害者差別解消法」・「障害者雇用促進法」などが整備され、これらの成果を持って、2014年1月より権利条約が締結されました。

障害者差別解消の2つのポイント

障害者差別解消法の大きなポイントは次の資料に示した通り、「差別の禁止」と「合理的配慮」の二つです。今回は、「差別の禁止」について解説していきます。

障害者差別解消法

法律の範囲

この法律の考え方は、どこまでが対象になるかも大切なポイントです。まず、大前提としてですが、後述する「差別」については、あらゆる場所で禁止となります。「合理的配慮」については、公的機関(公立学校含む)では義務ですが、民間事業者や私立学校は努力義務(つまり、できるだけ行うように努めてくださいという意味です)となっています。なお、この法律では社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となっています。そして、もう一つ大事なポイントとしては、権利条約においては、「障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義されており、合理的配慮は一部では努力義務とされながらも、場合によっては「差別」に該当する可能性があるという点です。したがって、実質的にはあらゆる場面での合理的配慮が求められることになります。

不当な差別的取り扱いの禁止

これについては、下記のように定められています。本当はもっと長く書かれているのですが、小難しいので要点だけ僕なりにまとめました。

”障害を理由として、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為”

つまり、”障害だから”を理由に入店を拒否されたり、不当に我慢をさせられたり等の権利を侵害することが差別に該当します。正当か不当かの線引きは難しいのですが、基本的にはケースバイケースで、その時々の状況に応じての慎重な判断が必要とされています。そして、この法律の中では以下のような記載があります。

「障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。                    ー内閣府のホームページより抜粋

したがって、少し雑な言い方かもしれませんが、「特別扱いはできません」ではなく「必要であれば特別扱いをしてください」ということです。

まとめ

前回に引き続き、少し法的・制度的なテーマで書かせて頂いたので、少々退屈だったかもしれません。今回は、その中でも「障害者差別解消法」が制定された背景やとその中の重要ポイントである「不当な差別的取り扱いの禁止」について概説致しました。ご本人・ご家族にもこうした権利を知っておいて頂きたいと思いますし、医療・教育・福祉どの分野でも支援に携わる方々は頭に入れておいて欲しい内容だと思っています。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
もし、この記事がなんらかのお役に立つようであれば嬉しく思いますし、多くの方に知っていただければと思います。

また、最近はYouTubeを活用して音声での情報発信もしております。毎回5分〜10分程度ですので、移動や家事の間等の「ながら聞き」に活用して頂ければと思います。以下にリンクを貼っておきますので、宜しければそちらもお願い致します。

よこはま発達相談室
佐々木康栄


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