エネルギー感

場のエネルギー感をコントロールする 高校・大学キャリア教育の現場から

ここ数年、年間30件~40件程度キャリア教育の授業に登壇させていただいています。その多くが偏差値でいえば30~40台。学校によっては定員割れが続いていて偏差値算出がそもそも困難な学校もあります。

そんな学校での授業中、私が注意しているのは場のエネルギー感のコントロールです。

場のエネルギー感とは生徒たちのコンテンツへののめり込め度と言ってもいいかもしれません。のめり込むがうえに授業内のコンテンツ(ゲームのような形式で進めることが多い)に一喜一憂します。生徒によっては絶叫することもあれば、表面的な感情の変化は大きくなくても中身にのめり込んでいることもあります。

エネルギー感のコントロールといいましたが、厳密にはコントロールはほぼ不可能です。ただ、高校生や大学生がもつエネルギー感にはいくつかの特徴があります。

・“自分事”にできたときにエネルギー感は高まりやすい
・エネルギー感は長続きしないし時間経過とともに落ちていく
・場のエネルギー感が高まっていれば負荷感の高い課題にも取り組める
・エネルギーの高い興奮状態は講師への関心が低いためメッセージが伝わりにくい

講師の一言でエネルギー感を高めたり、下げたりというのは現実的には不可能です。そのため、エネルギー感を高めるための仕掛けがコンテンツの中に入っています。ゲーム形式にしているのはそのためです。

一度高まったエネルギーをさえるのは大変です。講師が1~2人に対して生徒は40名(場合によっては100名近いことも)の体制なので、声をかけてなんとかなるものではありません。そのため、時間経過とともに自然とエネルギー感が下がってくるのを待ちます。

「楽しかった」だけではダメ 生徒の心にメッセージを残す

 生徒に楽しい50分間を過ごしてもらうのであれば、エネルギー感をひたすら高めて終わりでもいいのかもしれませんが、学校側の期待は「生徒が楽しい時間を過ごすこと」ではありません。普段の授業では伝えにくいメッセージを生徒に伝えなければいけません。

 そのため、私はエネルギー感とともに受講者(生徒・学生)から講師への関心度にも注意を払っています。前半はエネルギー感を高めてもらう一方、授業の後半、メッセージを伝える場面ではエネルギー感を抑え講師への関心を最大限に引き上げます。エネルギー感の余韻でコンテンツの記憶が残っている中でコンテンツと紐づけてメッセージを伝え、できる限り心に残るように努めるのです。

50分授業の場合、イメージとしてはエネルギー感と講師への関心度はこんな感じです。


スタート時の状態はクラスによって違う

 グラフではエネルギー感が少ないところから始まっていますが、実際には学校やクラスによって大きな差があります。はじめからエネルギー感が高めの学校や講師への関心度も高い学校もあれば、講師への関心度はマイナスから入る学校もあります。エネルギー感を高めるのが難しい学校なんて場合もあります。


私が今もキャリア教育を続けるのは“全員に届けられた”と思えないから

 私が高校生向けの授業などに携わらせていただいて5年ほど経ちます。普段は企業向けの研修等に登壇している身でもあり、フィーだけでみればキャリア教育の授業は企業研修に比べると高いものではありません。それでも私が今も続けているのは、授業に参加してくれたクラスの40人全員にしっかりとメッセージを届けきれたと思えたことがないからです。
 「エネルギー感と講師への関心度の関係が云々」などと言っていますが、私自身がやりきれていない、まだまだ発展途上なのです。


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