冬のパレルモで推し活を
カレンダーの並びのおかげで、弊社は今年の冬休みが9連休になる。2020年の冬以来だ。あの頃はコロナ禍で、せっかくの長期休暇にどこにも行けず帰省も憚られ、旅行支援の補助金を使ってちょっと良い温泉旅館に宿泊し、ひとりで年越しをした。
以来、次の9連休を待ち侘びていたが、ようやくやってきたのだ。ちなみに、来年も9連休だ。
世界史の登場人物において、東洋人なら唐の玄奘三蔵、西洋人なら神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世を推している。共通点は、多文化的な背景を持つことだろうか。玄奘は西遊記のモデルになった通り人々を救う仏の教えを求めて天竺への旅をし、インドのナーランダ寺院で学んだのち経典を持ち帰った。フリードリヒ2世は、十字軍全盛期に敵対するイスラム教世界のスルタンであったアイユーブ朝アル・カーミルと友誼を結び、聖地エルサレムに和平をもたらした。
これまでしばしばシルクロードの国々を訪れたのは、玄奘三蔵の足跡を追う意味合いもあった。とはいえ、今となってはそのエリアの大部分を中国が占めており、観光ビザ取得のハードルが高いため一旦ペンディングになっている。
そこで今回は、満を持して西洋人の推しであるフリードリヒ2世の生まれ育ったシチリア島に行くことにした。聖地巡礼というか、推し活である。
何人か友人を誘ってみたが、やはり高齢の親が心配になる世代なので年末年始に家を空けるのが難しいという回答だった。私の両親は海外にツアーではなく個人で出かけるくらい元気なので、そのことは大変ラッキーなことなのだと思う。この冬休みは、二人で温泉旅行に出かけると言っていた。
そんなわけで、晴れて一人旅となった。これまで、アジア圏は何度か一人で出かけたが、ヨーロッパに一人で行くのは初めてだ。とはいえ、これまでの欧州旅行は同行者が誰であれ全て私が手配していたので、計画自体は何も問題ない。それに、考えてみれば純然たる推し活なのでフリードリヒ2世以外のアクティビティは想定しておらず、なんなら彼が眠るパレルモ大聖堂には他者には共感しづらい思い入れを持って何度も通ってしまいそうだ。カトリック教徒なので、初詣としてミサにも行きたい。いくら仲が良い友人たちとはいえせっかくシチリア島まで来てこのような推し活に付き合わせるのは憚られるので、結果的には良かったのかもしれない。
あとは、ロングフライトで持て余さないよう、本を数冊持っていこう。
冬休みまで、あと2ヶ月ある。
調べている過程で知ったが、シチリア島は美食で有名な島だった。
そういうのも、ちゃんと楽しもう。