No.010 ヤギさん郵便 「矛盾」


山に入って、定規で引いたような直線なんてひとつもないと私も思ったことがあります。直線であることが不自然です。

下山して、測量して建てられたまっすぐな建造物の中にいると、曲がった柱は不良品です。

ねじ曲がっている木や植物も、その地点で光にまっすぐに向かえない風や雪や動物や何らかの理由があり、それでもまっすぐ伸びたと思うのです。その結果、外から見るとねじ曲がってしまった。

人間も自然界の中で、光にまっすぐ向かうことができる力があると信じています。
運命に翻弄されて日陰で根ごと腐ってなるものか。
なんだか力が湧いてきませんか。

佑美さんからお手紙が届いた日、山に行っていました。そこで出会った人からある場所に行ってみたらと勧められ、予定にはありませんでしたが、足を運びました。
そこは戦前の建物の廃墟でした。

山に直線は不自然だと書いたのに、何十年もそこにあり、朽ち果てて近づきがたい怖さと近づいてみたい美しさを感じました。
山にも直線を見つけました。



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