渇いたパグ

はい、ここまで来たから大丈夫。ケロッとしてください。

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最近の記事

朝に必ず考えること

 時間は朝の3時くらいだったと思う。自室に散らばったコードや紙類をおぼつかない足取りで注意深く踏みつけながら、すぐ隣の部屋にあるトイレへと向かっていた。ペラペラのスウェットの裾から、ひょろりと出ているその2つの裸足が、ようやくフローリング材の冷たい床を踏みつけた時、塩を振りかけたナメクジみたいに丸くなった。  ほとんど目を瞑ったままでトイレの電気をつけ、ドアを開けた。電気をつけた時のスイッチ音はクラッカーを鳴らしたような陽気な音に聞こえた。夢見心地には眩しすぎる黄色い豆電球

    • 他人が他人を愛するということ

      愛の話をしよう!私の持論では、愛というのはとどのつまり、当事者同士でしかその事情を理解することができない。そのように信じることは、自分と愛する人との人間関係を守るだけでなく、周囲の人間関係をも守ることができる唯一の素晴らしい方法なのだ。 というのも、私が小学5年生の頃(あぁ…それは算数の授業中だった)、当時ブームだった伝言ゲームで私の好きな子をクラス中にバラされて以来、そう考えるようにしているのだ。 私は、歯ブラシと歯磨き粉がどのようにお互いを信頼し合っているのか分から

      • 小さい虫はお好き?

         こいつはとても小さい。米粒の半分の半分くらいの大きさで、透けて見えそうな薄い羽根を出したり収めたりしている。全身真っ黒のハエの子供。もしかすると、小さすぎて黒色に見えているだけで、拡大すると、まるで美しい食欲のそそるような鮮やかな鯖の鱗みたいな色彩をその小さな体に抱えているのかもしれない。  しかしながら、こいつは人間がその営みを一時的に中断して、じっと観察したりするまでもない虫なのだ。おそらくこういった傾向の虫は、私たちが健康的な目を保持していないとそもそも見えないし、

        • 変な顔してみせて

           寒さの残る3月の下旬、夕食後の江藤家のリビングにはまだ、こたつが1台設置されていたままであった。  おそらく、このこたつは10月の中旬から出しているだろうから、半年近くに亘って彼らの足を、お腹を、またある時には顔までを、すっぽりと暖め通してきたことになる。紺色の格子柄のこたつ布団は、汚くはないが、心なしかくたびれている。長方形の机台の4辺には、物はほとんど置かれていないものの一家全員がそこに集合していた。各自が思い思いに足を広げたり、縮めたりしていても、お互いの足がぶつか

        朝に必ず考えること

          そのカレーの味は知らない

          3月12日 先生は今日をもって、長年勤めていた居酒屋の仕事を辞める。  長年と言っても4年余りだと記憶しているが。先生と私は同職場で1年半もの間、交わされた会話の数は全体的に多くは無かったものの、共に汗を流し、給与をもらった間柄である。私はホール業務を、先生は主に厨房を担当していた。そして結果的には、先生より遅れて入ってきた私が、先生より早く辞めてしまった。  先生は、どこかの教室で生徒を受け持っているとか、専門的な何かの造詣が深いわけでもない。私がここでアルバイトを始

          そのカレーの味は知らない

          分かると思います

           ここでは僕の言い訳を聞いて欲しいのです。本来、この言い訳ってのはね、僕の友達に向けて発せられるべき言い訳なのですが、せっかくの機会なのでお話させていただきます。僕の友達の名前を仮にYとします。  Yは僕より年が上で、僕より10センチほど身長が低いです。Yというのは僕のアルバイトの先輩で、職場では唯一友だちと呼べる存在なんです。その決して細いとは言えない見た目は、なんだか2月のコーギー犬をいつも連想させます。その丸みを帯びた快活なお顔はいつもにっこりしています。  そんな

          分かると思います

          初めてのChi-Chi

          初めてのChi-Chi