電子書籍か書店か？　本を買う価値を考える

「お！ナニコレ！？面白そう！（パラパラ…）」

毎月の月末にやる事、それは書店での立ち読みです。私はNHKラジオの英会話を毎日コツコツ聞いてるのですが、番組専用のテキストが月単位で発売されていてそれを買いに行くのが毎月恒例の行動となっています。

実は少し前まではこのテキスト、Amazonで買ってました。定期的に購入するものは通販で買うのが便利です。欲しいタイミングで届けてくれる。

でも、それをやめて書店で買うようにしました。それはネットショッピングで失ったものに気づいたからです。

「本を買う」という行為について考えます。

便利さの裏で失ったもの

スマホでネットショッピングしたり、タブレットで電子書籍を買うのは便利です。特に今のような暑い季節はわざわざ汗を流して外出する手間もいりません。

画面をタップすればクーラーの効いた涼しい部屋で本が読める。快適そのものです。

そんな「便利さ」に浸って、しばらく書店に行ってない期間がありました。ある時、Amazonで目当ての本が売り切れで、ダメ元で書店に立ち寄った時に、気持ちの高揚を感じました。それは「偶然の出会い」と「体験の楽しさ」から来るものでした。

店内の通路を歩いてふと目に入る本に興味が湧いたり、パラパラめくって「お！おもしろそう」と衝動買いしたり。想定外が店内に溢れている感覚がありました。

書店に行って、本を探して、本を買うまでのその過程・時間・それを楽しんでいる自分が何より好きだった事に気づきました。
これは本と人との関わりを考えるうえで、ものすごく大切な要素なのではないかと最近考えるようになりました。

本が提供してくれる時間

電子書籍が提供してくれたのは本を買うまでの無駄とも言える手間と時間です。その分「読む」という時間は増えたのかもしれません。

しかし、それは見方によれば「本と出会うまでの過程という体験」を失ったとも言えます。これは旅行と同じかもしれません。旅行には目的地がありますが、そこに行くまでの計画している時間、道に迷ったり道中の多少のトラブル含めて楽しいものです。

電子書籍はそれらの途中の工程をスッポリと削ぎ落として目的地に即行く感じ。簡単に言うと「味気ない」のです。

昔、社会人になりたての頃、書店に行き、可愛い女性店員の前でコトラーの「マーケティングマネジメント」という8000円もする分厚い本をドヤ顔で買ったのも今では良い思い出です…。

背伸びしてよく分からないアート関連の本を手に取って気取った感じで立ち読みする快感、よく理解もできない洋書をパラパラと読んでいるフリをしている楽しさなど。こうした時間は「体験」の価値があります。

合理的な人からすれば、それは無駄な時間かも知れません。しかし、世の誰もが書店に目的買いで本の中身のみを買いに行っているわけではないと思います。

立ち読みや店内をぐるぐる回って何も買わずに出てくる、という事も多いです。これは「何か新しい知識に出会えるかも？」という好奇心への行動。

書店に歩いて行くまでの時間、店内をぐるぐる回る時間、立ち読みしている時間、店員に本を差し出すその時、お気に入りのカフェで少し照れながら分厚い本を開くその瞬間。これらすべてが本と自分との関わり方であり「体験」。

「本を買う」という行為にはこういう中身以上の体験があり、それは電子書籍にはついていない豪華な付録のようなもののように思います。

まとめ

電子書籍は読みたい時にサッと読めてとても便利です。ネットで本を購入するのも家に届いて楽に本を読む体験ができます。

しかし、本とは「出会うプロセス」にも体験の価値があるように思います。それはデジタルではなかなか得にくいものです。

「予期せぬものに出会う」という体験は暮らしに彩りと知性を与えてくれます。それができる場所が書店なのかなと思います。デジタルの波に押されて、家の近くの書店が少しずつ減っているのは残念な事です。だからこそ、残っている書店には頑張って営業を続けて欲しい。応援の意味も込めて今後も本を購入させていただこうと思います。

便利さの裏で失っているモノがある事に気付いていない事があります。

改めて、本と自分の間にあるものに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。人との出会いのように、本と自分の間にも関係や出会いがあり、小さな出会いが人生観や人生そのものに影響を与えることもあります。

本との出会いから「味気ある」毎日を送りたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。