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なぜ涙のあとはスッキリするのか?上手に涙と付き合うコツとは

「私、ストレス発散にドラマを見て泣くようにしています」

先日、同僚との会話で女性メンバーからの一言。「精神の安定のために泣く」という言葉を聞いて、「そんなにストレス感じているのかな…、大丈夫かな?」と心配になりましたが、本人は笑い飛ばしていたので、ちょっと安心しました。

一方で、涙にはどんなパワーがあるのかな?とふと気になりました。withコロナのストレスフルな世の中で、自分のメンタルバランスをキープする術は複数持っておきたいところです。改めて、涙のパワーについて考えてみます。

涙は何でできているのか

そもそも涙は何からできているのでしょうか。実は涙は血液から作られています。

血液 ― ヘモグロビン = 涙

意外な方程式ですが、真っ赤な血液から赤色の正体のヘモグロビンを引いたものが涙です。そう考えると、涙を流すという行為は「流血」に近い現象と言えます。ちょっとおだやかではないですね。しかし、涙とひとことで言っても、涙を流す理由はいくつかありそうです。

涙はなぜ流れるのか

一般的に、人は3つの理由で涙を流すと言われています。

1.基礎分泌の涙
ドライアイを防ぐための涙。角膜や結膜の乾燥を防ぐために涙を流します。これは人間だけでなく、眼を持っている生き物はみな備えている機能です。

2.防御反射の涙
眼を異物から保護するための涙。例えば、眼にゴミが入った時に出る涙です。洗い流そうと分泌されます。タマネギを切っている時の涙もコレです。

3.情動の涙
感動した時など、心が動いた時に流す涙。上記の1、2は生理的な現象ゆえの涙なので人間以外の動物も同様に流しますが、この情動の涙は喜怒哀楽といった心の動きとともに流れるもので、全く異なります。自分の中に湧き上がった感情による涙と、相手の気持ちに共感して流す涙があり、人間しか流さない特別な涙です。

ストレス軽減に関係する涙はこの3番目の「情動の涙」が重要になってきます。

人間だけに許された「情動の涙」

人の大脳は他の動物よりも大きく発達しています。この大脳のおかげで、言葉を話し、物事を抽象的・論理的に考えることができます。そして、この大脳の中の前頭前野に共感脳と呼ばれる器官があります。古代インドのヨガで「チャクラ(第三の眼)」とも呼ばれたりします。ここの働きによって、我々人間は非言語コミュニケーション、つまり表情、目つき、身振り手振り、声色などから相手の心の状態を感じ取ることができます。

例えば、「面白そうだね」と無表情で言われた時、「あ、関心がないな」と気付きます。これは共感脳の働きによるものです。そしてこの共感脳の働きこそが「涙」に深く関わっています。

ハラリ氏による人間の成り立ちを解き明かした名著「サピエンス全史」には我々ホモサピエンスが地球で栄えた理由に「虚構を信じられる力を得たこと」を挙げています。事実ではないものに心を寄せ、共感し、信じられるようになったことで、人間にだけ「情動の涙」という特別な涙を手に入れられたのだと言えます。

この本は人間が歩んできた壮大な道(グレートジャーニー)、そして人間の可能性を解き明かした、とんでもない1冊です。まだ読んでいな方は是非おススメです。

涙の話に戻りますが、人間は映画やドラマといった架空の物語、言わば虚構を信じ、自分ゴト化することで涙を流すことができます。一方で、幼い子どもがドキュメンタリーを見ても泣きません。これは虚構を想像する力がまだ十分に発達していないから。逆に言えば、恋愛や人との別れ、ペットとの死別など、様々な経験を積み、共感するポイントを多く持つようになると、涙もろくなるといえます。よく「涙もろくなったなぁ」とこぼす人が言ますが、それは人間としての経験値が増えてきた証でもある、ということです。

「情動の涙」と副交感神経

情動の涙は、自律神経の中でも副交感神経に働きかけると言われています。副交感神経は脈を下げて正常化し、呼吸も穏やかにしてくれる働きがあります。このwithコロナ時代を生きる我々は、過度なストレスと日々向き合っています。そうなるとどうしても交感神経が優位になり、興奮状態になりがちです。そんな時、涙を流すことで、交感神経から副交感神経に切り替えることができます。言い換えれば「情動の涙」は、脳を緊張状態から癒しの状態に切り替えるスイッチということ。癒されたければ泣けばよいということです。

涙を流すと、心の混乱や緊張、不安がとけて「スッキリした」と感じられるという研究結果もあります。一方で、脳が疲れすぎている人は、前頭前野の共感脳が弱っており、そういう人は泣きにくい傾向にあります。疲労がたまり癒されたいのに、その疲労が邪魔して涙が出にくい。泣きたいのに泣けないという状況。これはジレンマを感じますね。

涙を出やすくさせるためには、脳内にあるセロトニン神経を活性化させることが有効です。セロトニンとは「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内物質です。これが活性化すると緊張や不安が軽減され、疲労感や心の混乱も解消されると言われています。このセロトニンを分泌するには日光を浴び、適度に運動するのが良いです。

他にセロトニン分泌に効果があるのは、親しい人と触れ合うこと。好きな人との楽しい会話やスキンシップは、オキシトシンという癒しの脳内物質が分泌され、それがセロトニン神経にプラスに作用します。

こうした脳内物質を分泌するように日々過ごすことで、泣きたい時に泣けるカラダでいることができます。

まとめ

人の話を聞いたり、ドラマや映画を観て流す涙は「情動の涙」であり、人間だけに許された特別な涙です。そして、その涙には副交感神経に働きかけ、脳を緊張状態から癒しの状態に切り替える力があります。

涙を流すためには脳の前頭前野がしっかりと共感できる状態を維持する必要があります。そのためにもセロトニンやオキシトシンと言われる脳内物質を適度に分泌し、脳を疲れさせすぎないようにすることが大切です。

涙は1滴でも流せば、交感神経から副交感神経にスイッチが切り替わると言われています。最近は「涙活」と呼ばれる活動をする人も増えています。能動的に涙を流すことで心のデトックスを図ることは、セルフケアの一つの手法と言えます。

泣くことは悪い事ではなく、むしろ心の安定をもたらしてくれるポジティブな側面があります。上手に「涙」と付き合うことで、心を穏やかに保ちたいものですね。

ストレスが溜まって来る週末にかけて、泣けるドラマや映画を観て、思い切り泣くのもよいのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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