奇説無惨絵条々書影

『奇説無惨絵条々』(文藝春秋)はこうして生まれた①

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『奇説無惨絵条々』の冒頭部分、試し読み公開中です!

「『おもちゃ絵芳藤』は、たぶんしばらく谷津さんの名刺代わりの小説になると思いますよ」

 『おもちゃ絵芳藤』で並走してくれた編集者さんが、発売直前の打ち上げの際に口にした一言です。
 その時、嬉しさと憂鬱さが入り混じった複雑な感情に苛まれた、というのが、わたしの偽らざる思いです。
 作家にとって代表作は誉れであると同時に大きな枷でもあります。実際、代表作があればそれだけで何年かやっていけるものですし、作家としては通りがよくなるのでありがたいのですが、一方で代表作が重石に感じることもあります。
 実は、わたしにとって『蔦屋』(学研)はそんな小説です。正直をいえば、『蔦屋』よりもはるかにいい仕事はたくさんしているのですが、「蔦屋の谷津」という印象はいつまでも抜けませんでした。代表作はある種のレッテルなりうる――。ずっと『蔦屋』という代表作の呪縛にあえいできたわたしにとって、代表作という言葉に若干臆病になっているきらいがあります。

 とはいえ、『蔦屋』が代表作であり続けていたおかげで頑張る気力も湧いてきたという面もあり、『おもちゃ絵芳藤』にもつながったので、決して悪いことばかりではありません。
 蓋を開いてみれば件の編集者さんの予言は見事的中、『おもちゃ絵芳藤』はわたしの名刺代わりの小説になってくれました。

 けれども、代表作が長く自分の頭上に居座り続けるほど、作家(=わたし)の中にはある種の鬱屈が溜まってゆきます。
 2018年のわたしの小説は決して質が低いわけではなかったのですが(実際、新聞取材や文芸誌取材のお話をいただきました)、武運拙く代表作とはなりませんでした。

 頑張って『おもちゃ絵芳藤』をも超える代表作を作らねば……!

 というわけでこしらえた刺客が『奇説無惨絵条々』なのです。

 まあ、正確な時系列はちょっと違うのですが、それくらい気合の入った一作です。その辺の具体的なお話は、順次公開してゆきますのでなにとぞお楽しみに。

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歴史、時代小説分野を専門にしている商業小説家。ゆるふわ系男子になりたい。