9/30発売『絵ことば又兵衛』(文藝春秋)はこんな話③「岩佐又兵衛ってどんな絵師なの?」
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前回、主人公岩佐又兵衛の話を色々しましたが、絵師の説明としてはいろいろと手落ちでしたね。何せ、「どんな絵を描いている人なのか」がさっぱりわからない!(笑)
というわけで、今日は岩佐又兵衛の絵について、いろいろご紹介できたらなあと思っています。
とはいえ、特定の画像をそのまま張りつけるのは諸権利の問題があるので、展示会などのURLを張りつけておきます。
こちらのサイトをご覧いただけると、作品の一部をご覧いただけると思います。
岩佐又兵衛の代表作と言うと、これらの作品が知られます。
・洛中洛外図屏風(舟木本)
・古浄瑠璃絵巻群(「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」「小栗判官絵巻」「堀江物語絵巻」)
・三十六歌仙図額
これらのほかに、「大坂夏の陣図屏風(黒田本)」にも岩佐又兵衛風が認められ、関わっているのでは? という説もあります。
彼の画風は「豊頬長頤」、すなわち、豊かな頬に長い顎を有した人物像をよく描き、これは大和絵の人物像をより強調、デフォルメしたものであるとされています。
そして忘れてはいけない特徴として、戯画チックな人々の描きようです。類型的では決してなく、身振り手振りが派手派手しいところに彼の絵の特徴があります。これゆえに、のちに「浮世絵の祖」と称される理由になっていきます。
が、岩佐又兵衛は決して独学の人ではありませんでした。
どこで学んだかは分かりません。しかしながら、狩野派、土佐派、海北派や宋画など、さまざまな画風、画派から学び取り入れている節があります。さまざまな画風をものし、その上で咀嚼して混淆するところにこの絵師の凄みがあったともいえます。
そして、彼の代表作を並べてみると、あることに気づきます。
又兵衛は大きく分けて、
京都在住時代(生まれてから大坂夏の陣の後まで)
越前在住時代(大坂夏の陣の戦後20年余り)
江戸在住時代(晩年まで)
の三期に分けることができるのですが、彼の作例の多くは越前在住時代と江戸在住時代に散らばっており、京都在住時代のものと言える作品はそう多くありません。明確にそうだといえるのは『洛中洛外図屏風舟木本』くらいのものといっていいでしょう。
実は、わたしが『絵ことば又兵衛』でモチーフにしたのは、京都在住時代、そして越前在住時代の数年までです。
つまり、岩佐又兵衛という一人の人間が、絵師として確固たる位置を手に入れるまでの姿を描いた小説だということです。
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