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新歴史・時代小説家になろう

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『新歴史・時代小説家になろう』第36回 ネタ随筆本を持っておくと便利かもという話

『新歴史・時代小説家になろう』第36回 ネタ随筆本を持っておくと便利かもという話

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 いやー、すっかりこの更新も絶えてました、すみません。いえね、色々あったんです。二週間あまり仕事場に戻れなかったんですよ。そんなわけで、本当に久々の更新ですが、早速参りましょう。今回のテーマは、ネタ本を持っておくと便利よ、という話です。

随筆の有用性 随筆と聞くと、多分国語、殊に古典の授業を思い出される方も多いのではないでしょうか。
 そうです。『枕草子』『方丈記』『徒然草』といった

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『新歴史・時代小説家になろう』第35回 取材に潜む罠

『新歴史・時代小説家になろう』第35回 取材に潜む罠

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 取材。いい響きですねえ。おいしいものを食べて、珍しいものを見て、暖かい布団で眠る。据え膳上げ膳の生活。主夫であるわたしとしては、たまに羽を伸ばすことができる、本当に楽しいイベント、それが現地取材です。社会がこんなことになっていなければ、あの作品やあの作品のために取材に行きまくるのに! と悔しい思いをしている今日この頃なのです、がっ!
 今日は歴史小説・時代小説の取材の話です。

前提

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『新歴史・時代小説家になろう』第34回 資料は五割捨てるつもりで

『新歴史・時代小説家になろう』第34回 資料は五割捨てるつもりで

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 歴史・時代小説といえば「資料読み」ですね。
 情報、知識を集めやすくなって、便利な時代になりましたけど、それゆえの大変さというのもありましてですね……という話です。

前提として、資料はたくさん読んだ方がいい 小説を書くという営みに正解はありません。そのため、創作論の多くは「~すべき」という論調でもってものを語ることができず、「~しないほうがいい」「~したほうがいい」という、少し弱め

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『新歴史・時代小説家になろう』第33回難しい言葉をどう読者に伝える?

『新歴史・時代小説家になろう』第33回難しい言葉をどう読者に伝える?

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 小説は、言葉で構成された創作ジャンルです。
 漫画や演劇、映画などと比べると、情報量が少なく、抽象的になりがちであるという特徴があります。
 その難しさが、歴史・時代小説には横たわっているのですが――、というのが、今回の話です。

掛矢って飛び道具じゃないの!? 最近、小説を書いていて「掛矢」を登場させることになり、小首をかしげたことがありました。
 あれ、もしかして、今の人、掛矢の

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『新歴史・時代小説家になろう』第32回知的好奇心を喚起するのは悪手かも?

『新歴史・時代小説家になろう』第32回知的好奇心を喚起するのは悪手かも?

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それは小説なのかい? たまに小説を読んでいると、「この説明必要かい?」と首をかしげたくなるような文章が差し挟まれていることがあります。具体的にどうこう、とはしづらいのですが、本筋に一切関係のない余剰極まりない文章というか、「いや、ここ、削っても問題ないっすよね」と言いたくなるようなうんちくというか。そしてそれが行き過ぎて、小説ではない何かを読まされている感覚に陥る時が。
 これ、なにも

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『新歴史・時代小説家になろう』第31回歴史的イメージとの付き合い方

『新歴史・時代小説家になろう』第31回歴史的イメージとの付き合い方

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 皆さんは「不気味の谷」って言葉、ご存じですか?
 これは3DCGなどで取り沙汰されるもので、そのデザインが粗であるうちは人物として問題なく認識でき、かつ楽しく受容することができるのに、その描写が密になっていくに従い、どんどん違和感が出てきて、その違和感が度しがたいものになる現象を指します。
 でも、実はこれ、小説にも起こっているんじゃないかというのが今回の話です。

「信長」と認識す

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『新歴史・時代小説家になろう』第30回「臭い」を巡るあれこれ

『新歴史・時代小説家になろう』第30回「臭い」を巡るあれこれ

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 小説にもいろいろありますが、五感を駆使して書く、というのは小説のセオリーとしては極めて有効で、それがリアリズムに繋がります。もちろんそれは時代小説や歴史小説でも例外ではないのですが……。今日の話は、我々の五感の一つである嗅覚に関するお話です。

昔は(現代人的な感覚では)臭かった わたしたちは現在、無臭の世界に生きているといっても過言ではないと思います。
 えっ? 柔軟剤の臭いとか、

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『新歴史・時代小説家になろう』第29回他ジャンルと「混ぜる」こと

『新歴史・時代小説家になろう』第29回他ジャンルと「混ぜる」こと

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 いきなりなんですが、おのれ額賀澪(敬称略)。

 ってことは、このnote、額賀澪さんのやっておられる講座の学生さんも見ているってことに……。
 まあそのなんだ、たいしたこと書いてないけど、参考になればこれ以上のことはないぜ、ということでなにとぞなんだぜ。
 さて、今回は、「混ぜる」というお話です。

歴史時代小説という「ジャンル」の内実 ミステリというジャンルには、プロットレベルか

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『新歴史・時代小説家になろう』第28回歴史上の人物タマネギの皮問題

『新歴史・時代小説家になろう』第28回歴史上の人物タマネギの皮問題

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 さて、今回の話は、以前にした話とも接近した議論ですが、ここで稿を用意して述べておいた方がよかろうと考え、今回はこの件を深掘りしてゆきます。

歴史上の人物タマネギの皮問題とは 歴史上の人物、殊に有名人や人気者にありがちな話として、「よくよく調べてみると、その人物の人物像を示すような話は根拠のない逸話に過ぎなかった」なんてことがよくあります。あるいは、「従来はAといわれていたけれど、最

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『新歴史・時代小説家になろう』第27回日本列島に住んでいた人々がインストールしていた三つの宗教、思想について

『新歴史・時代小説家になろう』第27回日本列島に住んでいた人々がインストールしていた三つの宗教、思想について

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 さて、今回は、歴史小説、時代小説を書く際にヒントになる、彼らの信じた内的世界に関しての大まかな地図を提示できればと思っています。宗教・思想は人類にとってはかなり強烈なソフトであり、これらをインストール、発展させていき、豊かな内的世界を築いてきました。
 もちろん、これらのことを知らなくても小説は書けるんですが、知っていたほうが幅が広がるんじゃないかと思います。そんなわけで、今回もざっ

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『新歴史・時代小説家になろう』第26回描く時代によって変わる史料と史料の隙間

『新歴史・時代小説家になろう』第26回描く時代によって変わる史料と史料の隙間

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 今日の話題は、多分に私見含みです。そのため、考えが合わないや、という方や、何を問題にしているのかわからない、という人はバックしていただいて結構な話題です。
 と前置きをして。

歴史、時代小説は史実の間を埋めるもの もちろん、色々な定義ができるでしょうが、わたしは歴史小説も時代小説も「史実の間を埋める営み」だと思っています。かつてインタビューなどでもしゃべっていますが、歴史的事実は往

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『新歴史・時代小説家になろう』第25回ああ、ずれている季節感

『新歴史・時代小説家になろう』第25回ああ、ずれている季節感

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 正月になると、「新春」って言葉が去来しますね。
 新春……。子供の頃、疑問で疑問でしょうがなかったんですよね。
 正月番組の飾りを見ると、梅の花が飾られていますよね。
 なぜ梅が? 梅って二月頃に咲くよね? と。
 はい、わりと常識に属する話だと思いますが、明治初期まで日本に住む人々の多くは月と太陽、その他天体の動きを参考にして作られた太陰太陽暦を使って生活していました。そして、明治

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『新歴史・時代小説家になろう』第24回【私見】小説と学問と「熱」と「冷静」と

『新歴史・時代小説家になろう』第24回【私見】小説と学問と「熱」と「冷静」と

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 よくTwitterなどで話していることなので、既に聞いたことがあるという方も多いでしょうし、そもそもnoteにも書いたことがある記憶すらある話なので、「またかよ」とお思いの方もいらっしゃることでしょうが、お許しください。わたしが何度も問題にするくらい、大事なことなのです。
 今回のお話は、歴史学を修めた方で、かつ創作をしたい方への注意みたいな話です。

「谷津君はさ、薄皮一枚分、主人

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『新歴史・時代小説家になろう』第23回コメディと歴史・時代小説

『新歴史・時代小説家になろう』第23回コメディと歴史・時代小説

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 歴史小説にしても時代小説にしても、「過去を材に取っている」ジャンルなので、ミステリやホラー、SFやサスペンスといった他ジャンルのエッセンスを投入しやすいジャンルであるといえます。ところが、歴史・時代小説作品、特に歴史小説においては、混ぜ合わせると相性が悪いんじゃないかというジャンルがあります。今日はその話です。

鬼門「コメディ」 ことに歴史小説において、コメディはかなり難しいジャン

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