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バビロンのデイライト(連載小説)

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「バビロンのデイライト」という長編小説の、第1章のみを全10回に分けて連載いたします。
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2018年6月の記事一覧

バビロンのデイライト(第1章の10) (連載最終回)

 突如、「四十八時間」(すでに一時間が経過)という命の宣告を出され、「やべえ!」と発奮するかと思いきや、町田は小便を垂らし、何をなす気にもならなかった。 彼としても死ぬのは怖い。しかし、「死への回避」は仕事へのモチベーショントリガーにはなり得ない。同期の小田原君は勇ましかった。彼は自分の意志で産業スパイを試み、そして死んでいったのだから。それに引き換え、俺はなんて情けないのだろうか。仕事ができない、ただそれだけのために死んでしまうなんて。  町田はしばらく恐怖から小便を流

バビロンのデイライト(第1章の9)

 代々木上原課長は、町田の「二重構造型思考」に気がつくこともなく、説教を続けていた。  我々の製品の重要な発表は明日だ(おそらくそのはずである)。だから発表を待たずに勝手に動いてもらっちゃ困る。時間を稼ぎなさい。お前は商工会議所の連中のところに今からもう一度行くんだ。そして「ドライムス・コンバータ」を持参して、何ならタダ同然で二、三個渡してもいいから、なんとかしてあいつらの要求に応えることを約束するんだ。代々木上原課長は言う。  いいか。何としても売りつけるんだ。そのため