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桜井正宏さんへの想い

2022年4月14日。
偉大すぎる天才ドラマーの逝去から1ヶ月の月日が流れた。

その知らせが届いたのは3月24日。
Twitterのタイムラインにて第一報を目にした際、あまりに突然の事で頭の中が整理できなかったのを鮮明に覚えている。

「え、あの “まーちゃん” が!?」

正直、俄には信じられなかったのだ。
いつでも笑顔で、元気印のパワフルなドラマーとしての姿しか僕は知らなかったから。

2008年の秋、コブクロのライブDVD『KOBUKURO LIVE TOUR ′08 “5296” FINAL』を買ってもらった小4の時に初めて “バンド” という概念を知り、中でも真っ先に目と耳に飛び込んできたのがまーちゃんのドラムだったことがなによりも一番に思い出された。

そして、コブクロのCALLINGツアーとあの太陽ツアーでは直接お目にかかれた、まーちゃんの芯があって粘っこい極上のプレイが脳内によみがえってきた。

悲しい、悔しい、喪失感といったさまざまな感情は後になって湧いてきた。


翌日、まーちゃんが長年サポートメンバーを務めていたコブクロのファンサイト会員限定ライブの千秋楽にて、小渕さんの口から訃報が告げられたという。

ライブ終盤のこのタイミングでファンの誰もがその事実を認識し、最後にまーちゃんのドラムトラックに合わせ、コブクロとバンドメンバー全員で名曲「彼方へ」を演奏したと伝えられている。
大阪城ホールにて、ビジョンに映し出された在りし日のまーちゃんの写真をバックに、例の “お行きなさい” ポーズを会場が一体となって実現できたことは彼にとって最高の供養になったのではないか、と誠に僭越ながら推察する。

大阪城ホール公演に参加したファンの皆々から届けられたライブレポを見た時、僕もようやく彼の死を現実のものとして認識できたのだ。


時を同じくして、近しい方のTwitterでまーちゃんが長年フォーカル・ジストニアに苦しんでいたことが明かされた。
2011年ごろ、小渕さんが罹患したことでコブクロ休養の直接的な要因となった病だ。
そして僕もまた、この病がもたらした症状に今も苦しんでいる。

その方のツイートによると、コブクロのサポートを務めた期間(2002~2011年)には既にジストニアを患っていたという。
それを感じさせないドラムプレイの力強さに、彼のプロとしての魂を感じざるを得なかった。
改めてライブ映像を観たら、月並みな言葉ながらグッときた。
涙が溢れそうになった。

長年共に仕事をしていたミュージシャン・来生たかおさん曰く、まーちゃんは真面目でとても練習量の多い努力家だったという。
自らを追い込んで高みを目指すミュージシャンやアスリートは、ジストニア(イップス)に罹患しやすいのだと一般的に言われているが、まーちゃんも小渕さんも間違いなくそういう人たちだ。

彼らの努力や苦しみに比べたら箸にも棒にも掛からないレベルだが、僕自身もジストニア(イップス)に苦しむ人間のひとりだ。
高校1年生の時、闘病していた適応障害の治療薬を服用したことが眼のジストニアの発症を導き、更には大学入試期間にまで及ぶ長いストレスフルな生活の中で、受験勉強すらもスランプを通り越してうまくいかない状況に陥った。
紆余曲折の末に大学へ入学してからも、過度な緊張状態が勉強や試験、はたまた他者との会話の際にまで脳内の混線をもたらすなど、現在もその症状と闘い続けている。

そんな僕の苦しみとはまったく違う世界で、同じ疾患と闘い続けたまーちゃん。
また、現在も声の症状と向き合いながらミュージシャンとして第一線を走り続ける小渕さん。
両人とも僕の誇りである。
彼らのことを思えば、どこまででも自らの症状と向き合える気がしているし、不自由な毎日をも大切な仲間たちとともに悠々と乗り越えていける。


最後に、僕がまーちゃんをアリーナ4列目でお目にかかった唯一のライブ、『KOBUKURO LIVE TOUR 2011 “あの太陽が、この世界を照らし続けるように。”』のさいたまスーパーアリーナ公演での思い出を綴らせていただきます。

このツアーの各会場の開演前、東日本大震災の復興支援のために募金を募ってバンドメンバーと握手できる機会があったらしい…。
当時SNSをやっておらず、ファンサイトにも入っていなかったためこれを知る術が無かったことが本当に悔やまれる。

2011年8月21日、この日の公演自体は僕にとっての生涯のベストライブだった。
(ライブそのものについてはlivedoor Blogの別記事にて詳しく振り返っておりますので、そちらもご参照ください。)

メンバー紹介の際、この日にライブを観に来られていたご子息に向けて「お父さん頑張るぞー!」と叫んだまーちゃんの姿がとても印象的だった。
もちろんドラムプレイの力強さも格別。

この日のことは一生忘れないよ。
いつか、まーちゃんがコブクロに参加した最後のツアーであるこのライブの全貌をもう一度見られる日が来るといいな。



そんな想いを脳内に巡らせつつ、まーちゃんが亡くなられてから早1ヶ月。
彼の生き様に改めて勇気づけられ、今日も諸症状と闘いながら僕は大学生を頑張っている。

これからもずっと大好きなドラマーへ愛を込めて、この記事の締めくくりとさせていただきます。

改めまして、桜井正宏さんのご冥福をお祈り申し上げます。

2022.4.14