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副業解禁+人手不足解消のための企業コラボを

いわゆる「働き方改革」が政府主導で進められていることもあり、働き方・働かせ方の見直しは、一過性のブームという段階をこえて日本の企業社会に定着してきていると感じる。

厚生労働省は、モデル就業規則をこれまでの副業禁止から副業容認へと改めた。一方で、生産性向上や労働者の安全衛生を保つためということで労働時間の短縮、残業の削減を厳しく求めており、違反している企業に対して労基署が厳しい姿勢で臨んでいる。

労働時間管理の厳格化で残業代が出なくなったこともあるし、副業が容認・推奨される社会環境になったことで、にわかにサラリーマンの副業が脚光を浴び、関連する記事をたくさん見かけるようになって久しいが、実際に「副業」と呼べる働き方をしている人は、まだまだ少ないようだ。

様々な調査があるが、おしなべて「副業」をしている人は全体の1-2割程度、調査によっては「副業」に株やFXをふくめているものもあってその程度の副業率。まだ副業を解禁していない企業も多い(上記調査は約1年前のものだが、その時点で半数程度の企業が副業禁止)ことも、影響しているのだろう。ただ、厚労省が副業容認に姿勢を変えたことから、長い目でみれば、どの企業も特別な事情がある職種を除けば副業を何らかの形で認めていかなければならなくなるのだろう。

そもそも論でいえば、本来自由であるはずの勤務時間以外の時間の使い方に企業が口を出すことがおかしいのだ。そこに制限を課すのであれば、それに対して企業が何らかの見返りを提供して当然である。それが、これまでの終身雇用や退職金制度だったのかもしれないが、そうした仕組みが揺らぎつつある現在、もはや合理的な理由がない副業禁止は社会的にも容認されない段階に入りつつある。

一方で、人手不足といった背景から、ギグワークという働き方が、日本でも少しづつ市民権を得てきている。

ギグワークとフリーランスの違いについては、こちらで紹介されていた以下の定義が分かりやすいと思った。

■フリーランス
案件単位で仕事を請け負う。
 例:フリーランスのプログラマーは一つのプログラムを完成させるという契約において仕事をする

■ギグワーカー
案件単位ではなく、空いている隙間時間で可能な仕事を担う。
案件まるごとを完遂する必要はない。部分的作業を担う。
 例:本業の合間にわずかに時間が空いたので、その時間だけ自家用車でタクシーの運転手をする。

フリーランスよりもさらに細部化されたパーツの仕事を担うのがギグワーク、という理解である。この記事によると、一時期人手不足から危機が叫ばれた宅配を、ギグワーカーが担っているという。

ギグワークが活かせるのは、何も宅配に限ったことではない。いわゆる「単発の仕事」はギグワークと呼ぶのがふさわしいものも少なくないと思う。その意味ではフリーランスよりも労働者側の負担が軽く、始めやすいのがギグワークではないだろうか。

通常、曜日や時間を決めて募集されるアルバイトでも、ITを導入することで、働き手と仕事の出し手を込め細かにマッチングし、細切れの時間で働くことが可能になれば、それもギグワークといえるかもしれない。

そこで、副業を解禁したいがいきなり全面解禁することに抵抗がある企業と、人手不足でギグワーカーやそれに準じる働き手の欲しい企業がコラボをして、手始めにコラボ企業の仕事に限定して副業することを認めることから、副業解禁を始めてみてはどうだろうか

副業先の企業は本業の業務と競合関係にならない会社を選び、副業となる仕事の内容も、本業と兼ねることに支障がないものを選ぶ。副業先企業はできれば複数の会社があり、その企業と職務内容から、本業側の企業の社員が自由に選べるようにする。従来の「出向」のような制度とは異なり、あくまでも、単発や短期・短時間をベースとしたものを原則とする。

これを、複数の「本業」側企業と「副業」側企業が参画すれば、働き手の副業の選択肢も広がる。仕事内容として成立するなら、相互に本業と副業が入れ替わる双方向の提携関係もあってよいと思う。

労働関係法規との兼ね合いなど、テクニカルに考慮すべき点はあると思うが、たとえば、労災の責任範囲の明確化や、超過労働を避けるための労働時間情報の共有など、労働者が一定の保護を受けながら副業ができる仕組みを整えられれば、ギグワークの問題点を解決しながら、働き手の活用を図ることができ、また副業の促進を図ることが出来るのではないだろうか。

たとえば、すでに提携関係にあるセブン―イレブン・ジャパンと増進会HDが、顧客の獲得や維持を目指した提携にくわえて、労働力を補うことも視野に入れてみるのはどうだろう。増進会HD傘下の栄光ゼミナールの社員が、空いている時間で、人手が足りていない近場のセブンイレブンで働く、といった取り組みは、考えられないだろうか。

副業関係の記事を継続的にチェックしていて感じることは、当初、単に残業代の穴埋めと捉えらえがちだった副業も、定着するにつれて、本業へのプラス効果や、働き手自身のキャリアの充実など、単に賃金だけではない効果が理解されるようになってきているということ。

そうであるなら、「副業」側の企業の人手不足を緩和するだけにとどまらず、「本業」側の企業にとっても、外の空気を吸った社員が増え、今求められている新規事業への構想力や提案力が強化されるというメリットもうまれてくるのではないか。

こうした過渡期を経て、「本業」側企業が副業解禁の経験を積めば、さらに制限を緩めた副業容認に踏み出しやすくなるだろうし、その時にどのような条件を設定すればよいかということも、コラボによる副業解禁の実績から経験的に判断できるようになっているだろう。

そんな、副業解禁コラボを実現する企業が出てくるといいな、と思う。

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