小学5年「流れる水の働きと土地の変化」

Advent Calendar 12月18日投稿 

小学校第5学年 流れる水の働きと土地の変化 実践

 実践の話をと思い、一番最近実践した授業について、僭越ながら投稿させていただきます。授業改善のため、皆様の忌憚のないご意見をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


○単元を通して、今夏に猛威を振るった台風による被害事象について扱っ た。また終末には「災害から身を守るために」について、流水による視点から考察する活動を通して、理科を学ぶ意義や有用性に迫った。


○ひとつ前の単元として「天気の変化」を学習した。その中で台風について扱い、台風と災害の関係についても触れており、その継続単元として導入をスタートさせた。

○導入

導入写真

・同じ場所から撮影された2枚の写真(以前の写真と被害後の写真)を比較し、言えることについて考えた。
・個人で考えた後に対話を通して全体化した。
・子どもたちは「道路がなくなった」という現象の話と、川の様子の変化についての話を関係付けて対話を進めていった。次第に、「道路がなくなった」(結果)は、「川の水によるもの」(原因)として、仮設を立てる姿が見られた。
・本学級では年度初めから「対話的な学び」をねらい、児童同士による対話を学習の中に位置付けている。本場面では教師のコーディネート場面の厳選することができ、児童同士が言葉のやり取りの中から自分の仮説を深めていく姿が見られた。


・仮説以降場面での対話の様子

C21:道路がなくなったところに川の水がきている。
C25:川の水が増えた。
C33:あふれた。氾濫。
C16:川の氾濫によって道がなくなった
T:(板書にある、川の様子についての発言のまとめと、道路がなくなった現象の説明を指しながら、)
川(の様子)と道(がなくなったこと)がつながっているのね。
C3:氾濫の前までは(道路の)横に草みたいなのがあったけど、(氾濫の後は)なくなってる。
C3・18:(草は川に)沈んでる?
C29:川の水がゴリゴリゴリって攻めてきた感じ。
C18:雨が降って、道路の下の地盤が緩んできたところに川の圧力とかがきた。
C16:崩れたってこと?
C17:土のところに水が来てぐちゃぐちゃになった。
C18:いやー、雨で地盤が緩んでいるところに川の水の圧力とか。
C16:川の水があふれてきて、攻めてきた感じ。
C29:水が一回道路の上らへんまで来て、で水圧で道路がつぶされた。
C1:水があふれて、土が削られていって、で道路が、、道路の下の土がなくなって、それで道路がバーンて落ちた。
C16:あー(共感)。(みんなの意見を)まとめてくれた感じ。
C33:それですね(共感)。
C13:川の水の勢いで道路が削られて、地面が落ちた。
T:水の流れによって、地面って削られるの?


○提示した事象がイメージしやすいものであったことや、児童が仮説を進めたために、単元を通しての学習問題となり得る「道路はなぜなくなってしまったのだろうか」と、本時の問題「水が流れると地面の様子がどう変化するのだろうか。」の“見いだし”については、抜けてしまっていると感じた。そのため、話し合いを進める途中で教師がコーディネートに入りつつ、明らかにしたい(話の話題となっている)問題について整理して伝えた。

○「水の流れによって、地面って削られるのだろうか」に対する予想では学級全員が「削られる」と予想した。
 予想場面でまた対話がスタートし、
C33:砂場で山つくって、道をつくって、じょうろで水を流してみる
C6:オレンジのコンクリート(流水実験用砂場)の道に土でカベをつくって、水を流して、削られるか確かめる。
 といった、解決の方法が、問題に対する予想とセットで発言された。
 これは、学習問題に対して解決したいという思いや、検証するためにどんな方法が考えられるかという思いからだと考える。
 
○今年度は問題解決の流れを大切に扱い、また対話を通して学習を進めていくスタイルが定着してきたため、友達の発言を受けて自分の意見を述べたり、友達の意見につけたしや(第1時では多くなかったが)反論したりする姿が見られるようになった。
 またそうすることで自分たちで問題を発見し、予想や仮説を立てて解決の方法につなげるなど、主体的に問題解決する姿が見られた。

 第1時の板書

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○第2時以降の展開

・第2時:前時に立てた実験計画(・結果の見通し)に基づき実験を行った。
    実験①砂場に山・溝を造り、ホースで水を流す。
    実験②(流水実験用)砂場に砂でカベをつくり、水を流す。

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・第3時:結果や考察を共有する中で、「地面が削られた」に補足して、傾斜や水量、カーブなど、「削る働きが大きくなるとき」に目を向けた考察を述べていることに話が向かっていたため、次の学習問題が「削る働きが大きくなるのはどんなときだろうか」となり、予想まで話が進んだ。


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・第4次:削る働きが大きくなるときの予想として、
    ①流れが速いとき
    ②流れる水の量が多いとき
    ③角度(傾斜)が大きいとき
    ④カーブの外側を水が流れるとき
    が出された。

 各々の予想を基に①~④をグループ分けし、解決の方法を発想した。また発想した解決の方法を他グループと交流する時間を設けたことにより、より妥当な検証方法になるよう、児童同士で修正点などを伝えあい、方法を再構築した。

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・第5・6時:それぞれの方法に基づき、実験を行った。他のグループが行う実験も観察した。
 結果と考察を記入し、共有したうえで、結論を出した。
 またこれまでの問題解決から得られたことを生かして、導入で扱った写真について「どうして道路がなくなってしまったのだろうか」に対する自分なりの考えを記入し、導入時の考え(予想)との比較から自己変容を図った。

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・第7時:これまでの問題解決から得られたことを、復習しつつ、自然の川に置き換えて言えることについて考えた。
・前時の実験について深く考えると、②水量が多いとき③傾斜が大きいとき④カーブの外側はいずれも①水の速さが速いとつながるのではないかという意見が出て、対話を重ねたり実験動画を見たりする中で①の速さにつながっているというまとめになった。
・傾きが急というのは自然で言う「上流」で、傾きが緩やかは「下流」と置き換える対話が出て、砂場で山を造って行った実験を踏まえつつ、上流・下流での、傾きや川幅、水の速さ、浸食・運搬・堆積の働き、石の大きさについて理解を深めた。
・自然の川と置き換える中で、導入の写真のように、大雨の後や上流で雨が降った時には災害や事故が起こりやすいのではないかという意見が出たため、次時の内容を「災害から身を守るためには」とした。

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・第8時(授業参観):「災害から身を守るために」といテーマで学習した。災害というと幅広いこと、またこれまでの学習を生かして考えるため、「台風などの大雨による災害」とテーマを絞った。防災の観点から、自助・共助・公助についても事前に教えた。
①(どんなとき、どんな場所で、)どんな災害が考えられるか(青色付箋)
②身を守るための方法(黄色付箋)
 まず個人で考える時間として確保し、それを基に4~5人グループにて発表する形式で学習を進めた。最後に黒板に掲示したが、正解がないことと、発想が多いことから全体化はせず、教室掲示による共有とした。

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【単元を終えて】
 

○本校高学年では教科担任制をとっており、私は隣のクラスの理科も担当している。同じ導入写真で学習に入ったが、やはり予想や仮説も異なる中で展開が異なり、しかし単元のゴールはそろっていくという過程を見ることができた。
  隣のクラス:
   ①導入→「なぜ道路はなくなってしまったのだろうか」
       「(川の)水が流れると、地面はけずられるのだろうか」
   ②「けずる働きが強くなるのはどんなとき?」
    予想:①水量が増えたとき
       ②水の速さが速いとき
   ③水の速さは、傾斜によっても違う。水量を変えても変わった気がする。
    水量が増えたときは、速さも変化しているのではないか。
    →「水量と水の流れる速さは関係しているのだろうか。」
   ④水の速さが速いときにはけずる働きが強くなっている。
    ・水の速さが速いときとは、水量が多いとき、傾斜が大きいとき、カーブの外側
   ⑤導入の写真に対する自分なりの答え。災害について。    

○対話を中心に学習を進めたことにより、仮説や考察の深まりが見られた。ノートを見ても、自分なりの考えが追加されたり修正されていく様子が見取れた。解決の方法にも他のグループによる検討を入れると、条件制御をさらに深めたり、妥当な検証方法に修正されたりする様子が見られた。それぞれの仮説に基づいた実験計画を立て、他の実験も観察したため、多面的な考えを働かせ、問題に対するより妥当な考察になっていた。

○導入で提示した事象に、「けずるはたらきが大きい」が含まれていたことや、自然と「道路がなくなった原因」に目を向けていたため、資質・能力である「問題の見いだし」が型通りにはあてはまらなかった。

○事象を「災害」と関連させたものとしたため、学習したことを生活に生かす終末となった。これにより、理科を学ぶ意義や有用性にも子どもなりに迫れていたと思う。また、本校では「防災フェスティバル」があり、起震車や(火災発生を想定した)煙体験、災害時の水やトイレの使用、救急法についてブース展示が年に1回催される。終末の「災害から身を守るために」をその日の授業参観としたため、その後の防災ブース見学と併せ、学習の発展につながった。

○学習が展開していくにつれ子どもたち自身、思考がどのように変わって行くかということや、学習前後での自分の姿(自己変容)を見取るため、OPPシートを用いた。その中では、学習して得た知識のことに目を向けて書いている児童や、生活に生かした意見や考えを書いている児童が見られた。

おわりに


ぜひ忌憚のないご意見やご感想をお聞かせください。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

また、私は理論等の教育学研究者の先生方と実践とをつなぐ役割が必要だと考えています。エビデンスが欲しい研究や、実践してほしい研究等ありましたら、ぜひご相談ください。よろしくお願いします。

yasunobu0505@gmail.com






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