見出し画像

   八十年前の自分に会う  

 古びた茶封筒の中から何枚かの古い写真がこぼれ落ちてきました。
生後4−5ヶ月から3、4歳までの私の写真でした
写真館で撮った何枚かと父が撮った大きさ3×4㎝ほどの写真が20枚ほどでした。
前はアルバムに貼られたものだろうか、剥がした黒い紙が残っていた私一人の写真である。
思いがけなく八十年以上前の自分に出会った。

 おすまし顔の私、踊ってる私、仔犬と私、ブランコの私、あまりにも昔で、あの頃はと振り返ることも出来ない。紙の写真って昔の自分に会えるなんて感動ものであるが、その場にまつわる記憶がないから、それほどでもないのです、浴衣の上に白いエプロンを着て、肩から「国防婦人会」と書かれた大人の襷を斜めに掛けた写真など、あの時代なのだなと思う。

特に記憶はないけれど、あのワンピースの色は黄色だったように思ったり、その頃茶箪笥の上にあったビスケットの缶や柱にかかった日めくりなど、記憶のほんのひとつである。

 古いカメラの中に茶色の皮のケースに包まれたGELTO - 111というカメラを見つけた。
恐らく父の愛用したカメラだと思う。これで
わが子の誕生から撮ったのだろう。

 壊れたカメラのシャターを押すとカッシャと鈍い音をたてた。


#古い写真 #八十年前の自分 #記憶