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極めて私的な『みつどもえ』への思い入れについて

桜井のりお『みつどもえ』の最終19巻が発売された。連載開始年をWikipediaで確認すると2006年とのことで、著者の桜井先生は(休載を挟みつつも)11年間にわたる仕事を完結させたわけである。本当にお疲れ様でしたとしか言いようがない。

一応紹介しておくと、週刊少年チャンピオンで連載されていた『みつどもえ』は、日本一似ていない小学6年生の三つ子・丸井みつば、ふたば、ひとはを中心としたギャグマンガである。先に述べたとおり2006年から週刊少年チャンピオンで連載され、約1年半の休載を挟み、2012年からは月刊誌である別冊少年チャンピオンに発表の場を移して連載されていた。2期にわたってアニメ化も果たしている。

私の『みつどもえ』に対する思い入れは強い方だと思う。私は大学時代に週刊マンガ誌を読むようになったのだが、少年誌の中でも異彩を放っていた週刊少年チャンピオンの連載陣の中で、さらに異彩を放っていた、ぷにっとした絵柄に一目惚れしたのだった。それからというものの単行本はよほどのことがない限り購入してきたし、前職では桜井先生にイラスト入りの年賀状を送りつけたり…

キャラクター人気投票のプレゼント企画に当たって狂喜したり…

別チャンの付録の手帳(参考:http://natalie.mu/comic/news/111817)や店舗特典のボールペン(参考:http://natalie.mu/comic/news/116197)をガチで使っていたりと、そこまで狂信的ではないにせよ、かなりファンらしい行動を取っていたと思う。

ここまで本作に愛着を持っている理由としては、もちろん作品自体の魅力が挙げられる。具体的には小学生を世界一かわいく描き出していると思うその唯一無二の絵柄であったり、オーソドックスかつ破壊的なギャグであったり、下ネタ(エロ系ではなく排泄物系)であったり。しかし自分に嘘をつかず有り体に言ってしまうと、この思い入れの根源は、桜井先生が私と同い年の女性作家であることが一番大きい。

私が大学に進学し、モラトリアムと勉学に励んでいる間に、同い年の女子が、週刊マンガ誌という場で連載を持ち、自らの創作物で勝負しているその姿。直接の知己ではないけれど、私は桜井先生がとても羨ましかったし、すごく格好良く見えた。絵心がなかった私はマンガ家に嫉妬することもなく、ただただ彼女に憧れていた。私が『みつどもえ』を応援する姿は、アイドルファンのそれにとてもよく似ていたと思う。

2010年、私は就職をしたが、最初の頃はすごく辛く、本当に死にたいとしか思わない日々が続いていた。そんなとき、アニメになった『みつどもえ』を観て、動いている丸井姉妹や矢部っちを観られて本当に嬉しくて、まだ少しは生きていこうと思えたのだった(ヒャダインさん作曲のオープニングテーマもすごくよかった)。

2017年、結婚し子供も生まれた私の耳に『みつどもえ』完結の報が入ってきた。すでに私はマンガ雑誌をしっかり読まなくなっていたのだけれど、それなりに感慨深く思い、つい先日最終巻を買って、電車の中で読んだ。勝手に感動するつもりでいた私だったが、『みつどもえ』はそんな私の心構えを吹き飛ばしてくれる、どこまでも笑える、健全なギャグマンガだった。ニヤニヤしながら読みおわった後の気分は、まさに「毒気が抜かれた」というのにふさわしいものであり、しばらくマンガ、ひいては人の創作物から離れていた私に、その力を思い出させてくれた。

以上のとおり、『みつどもえ』は私にとって、人生の節目節目で、タイミングよくいろいろと救いになってくれた作品なのである。そして桜井先生は、また週刊連載という戦場に戻り、最新作『ロロッロ!』を始動させている。

マジですごいよ。健康に気を付けて、末永くマンガを描いてほしいと切に願うものであり、私も桜井先生の活躍を見て、やっていこうと思う次第である。

余談だが、やっていこうと思った結果、次のような催しで投票を募る事態になっています。皆さんよろしければ、よろしくお願いします(※10/10追記:投票は締め切られました)。


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