一本の傘。

遅くなった会議。
 突然の雨。
 「もう一本あったら良かったのにね。」
傘立てに立てられていた傘を手に取ると、彼はそう言った。

肩だけ濡れる君と私。
 遠回りしてくれる彼の優しさに、私は小さな罪悪感を抱く。  

私のトートバッグから少しだけ顔を出した折り畳み傘は、赤くなっている私の頬を見ると、困ったように小さく笑った。
 私は照れ隠しをするように、傘の頭を静かにカバンに押し込めた。

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