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パーセプションに基づくコンテンツマーケティングの設計方法

どうも。ヌーラボの原田です。

この記事は、コンテンツマーケティングを担当する人たちにほんの少しでもお役に立てればと思って書きました。

情報が溢れるインターネット市場において、潜在顧客に認知してもらうためには、コンテンツマーケティングをマスターすることが必須となってきています。

効果的な戦略があれば、購買プロセスの初期段階で潜在顧客のエンゲージメントを築き、ブランドと共にライフサイクルを歩む中で、時間とともに関係を深めていくことができます。

しかし、「消費者にGIVEをする」ことで信頼や共感を得る手法として、"コンテンツマーケティング=認知獲得のためのコンテンツSEO"と勘違いされている方もいます。

コンテンツマーケティングの定義を打ち出し、実践している企業はもしかすると少ないのかもしれません。では、コンテンツマーケティングとは何なのか?あらためて考えていきましょう。


今、なぜコンテンツマーケティングが求められているのか?

コンテンツマーケティングという言葉が日本で流行りはじめたのは2013年頃です。当時、潜在顧客に認知してもらうための手法としては、マス広告やネット広告など「売り込み型」の宣伝手法がメインでした。

しかし、インターネットが普及したことで、消費者は知りたい情報を自ら積極的に探すことが当たり前になりました。ネットでの接触時間も増えていく中で「消費者にGIVEを与える」ことによって、企業も信頼を得られることを知り、その手法としてコンテンツSEOが当時は使われました。

コンテンツマーケティングが企業にとって重要な理由としては、作成したコンテンツに触れることで、ブランド認知の確立に繋がります。また、既存顧客にとっては、コンテンツが価値をもたらす手段となり、自社の専門知識を確立することができます。

また、BtoBマーケティングでは「お客様に会う」という、フィールドセールスが大事とされていましたが、コロナ過においては在宅がメインとなったことで、電話やメールはスルーされるようになり、気軽に会える機会が減りました。

以前のようにトレンドの共有などで会えることもなくなり、情報収集をする場も営業担当からインターネットのコンテンツへと移り変わり、リアルな場でお客様と接点を持つ時代が終わりました。

多くのことはネットで調べてしまえば事足りてしまうようになり、お客様と接点を持つ場所まで変わってしまったので、コンテンツを通してより多くのお客様にアピールし、あらゆるタッチポイントでの成功が求められるになったのです。

コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティング戦略の権威であるジョー・ピュリッジ氏の「エピックコンテンツマーケティング」では、コンテンツマーケティングの定義をこのように述べています。

有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である。

エピックコンテンツマーケティング

また、コンテンツマーケティングという言葉を作ったContent Marketing Instituteの定義はこちらです。

適切で一貫性あるコンテンツによってオーディエンスを惹きつけ、関係性を維持し、最終的に企業利益に落とし込むためのマーケティング手法。

Content Marketing Institute

日本では潜在顧客とエンゲージメントを築くために、関連性が高い有益なコンテンツを作成するプロセスとも言われていますが、ジョー・ピュリッジ氏やContent Marketing Instituteが掲げる定義を紐解くと、 ''いかにオーディエンスと繋がり続ける状態を作れるか?'' ということが重要視されていることが分かります。

この繋がりを持つということで重要なことは「専門性」であり、ユーザーが抱えている課題をその専門性が解決することで信頼が生まれます。

よって、コンテンツマーケティングは信用の積み重ねによって認知、信頼を得るということを理解しなければいけません。

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ設計とは?

ここではメディアの戦略については語らず、あくまでもコンテンツの設計において話していきます。

コンテンツと接触することで信頼を得なければいけないと言いましたが、まずは自社で発信する情報において、専門性を持つコンテンツが作れるかどうかがコンテンツマーケティングを行う基準のひとつとなります。

企業が持っている専門性や実績が信頼を構築していくので、自社の専門性を打ち出せる分野において話し合っておきましょう。

これは私が独自で行っている方法なので、これが正解かどうかは分かりませんが、まずはバイヤーペルソナを想定し、インサイトと価値訴求の解像度を上げることから始めていきます。

バイヤーペルソナは具体的に描く

バイヤーペルソナが重要な理由としては、ペルソナの思考や言動というところまでリアル思い描くことができるということです。コンテンツは全ての起点がお客様の思考や言動から作っていきます。

toCの場合はブランドの訴求、toBの場合は事例の提供と、ペルソナの課題感がわかっていないとコンテンツを作る上で勘所がつかめません。

思い描いているペルソナが、コンテンツに触れた時にどう思うのか?このペルソナはどういうふうに考えて、何を望んで、どのような状況になると行動を起こしているのか?

ペルソナの記載は詳細であればあるほどより効果的なので、以下のトピックに注目して作成します。

・基本情報(年齢、性別、居住地)
・企業属性(事業、社風、担当)
・仕事の基本パターン(業務内容など)
・目標(個人、業務上の目標)
・課題(ペルソナが抱える問題点や不満)
・性格(ペルソナの思考や言動のもと)
・好ましいコンテンツの媒体(好むコンテンツの種類)

できれば、名前と顔写真まで設定するとよりリアルに近づきます。更に上記のトピックを設定できればストーリーまで落とし込むことができます。

この人がどういう人物なのか、業務内容や業務上で抱えている課題においては、テキストで200文字以内にまとめて、より細かい描写を盛り込んでいきます。

インサイトとベネフィットの設定

バイヤーペルソナが決まれば、そのペルソナを元にインサイトとベネフィットを設定していきます。

インサイトとベネフィットを考える際、私は山口義宏氏著のデジタル時代の基礎知識『ブランディング』に記載されているこのフレームワークを活用しています。

デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール

ターゲットのところにペルソナを配置し、そのペルソナから考えられるインサイトを掘り下げていきます。インサイトを考えている上で重要なことは、バックグラウンドやシーンなど「事実」を捉えていくことです。

バックグラウンドやシーンはペルソナを設定するときに考えているはずなので、この時点ではそこまで難しくはないはずです。

ただし、事実だけではなく、そこに感情も入れてセットで捉えなければいけないので、まずは事実を明確にしたうえで、エモーショナルな価値を考えていきます。

更にはブランドが持つエビデンス(ファクトやスペックなど)から、ベネフィットが何なのか?を考えていきます。商品・サービスの強みや優位性だけでは、どのようなメリットがあるのか分かりません。それを使うことでどのようなメリットが生まれるのかを考えます。

僕はベネフィットでの差別化で問題ないと思いますが、アパレルなどはパーソナリティやコアバリューでの差別化になってくるのかなと思います。

では、なぜこのタイミングで「インサイトとベネフィットを設定する」かというと、この後、パーセプションフローの構築していく際に、ベネフィットがなければ、知覚刺激の中身が決められないからです。

パーセプション・フローの構築

コンテンツマーケティングで成果を収めるためには、戦略設計が必要です。顧客を理解して購買行動の全てのステージに対応したコンテンツを用意しなければいけません。

コンテンツマーケテイング=認知獲得と思われがちですが、コンテンツマーケテイングは、ターゲットとなる顧客の購買行動において、適切な知覚刺激を与えることで認識を変化させて、顧客の行動を変えさせることができます。

そのためには、ブランドについて一貫性のある継続的なストーリーとオーディエンスが好むチャネルでコンテンツを提供しなければいかせん。

そこで、パーセプション・フローモデルの構築を通じて、コンテンツの戦略設計を行っていきます。

パーセプションフロー・モデルは、Coup Marketing Companyの音部大輔氏によって考案されたマーケティング・マネジメントのモデルです。一連の購買行動プロセスを「自然な認識変化の流れ(パーセプションフロー)」として描き、組織的な協働を可能にするマーケティング活動全体の設計図です。その習得と活用により、チームの連携だけでなく、マーケティング計画の早期立案や、規則的な活動の実行管理が可能になります。全体設計に基づいて、個々の活動を規則的に改善できるため、確実にマーケティング効果を向上することができるのです。

https://www.ficc.jp/blog/perceptionflow-modeling/

パーセプション・フローを学ぶ上でおすすめの本がこちら。ちなみに、カスタマージャーニーマップでも問題ありませんが、今回はパーセプション・フローでご紹介します。

パーセプション・フローは、ターゲットの過去の行動を考えるのではなく、認識変容を起こすにはどうすればよいか?という未来を描くフレームワークなので、コンテンツマーケティングに向いています。

これが私が作ったパーセプション・フローです。(スマホだと見づらいかも…..)

作り方としては、まず、状態変化を次の8~10段階に分けます。これは業界によって異なりますが、SaaSのサービスや試供品を出している商品などはトライアル期間を含めた方が良いでしょう。

さらに消費者側・企業側それぞれの構成要素を決めていきます。

消費者側の構成要素は「行動とパーセプション」です。行動には、目的となる行動や態度の変化を記載していきます。パーセプションは外部の情報や刺激に対する反応を書きます。

続いて、企業側の構成要素として、まずは知覚刺激を考えます。

知覚刺激は「認識変化」をもたらす刺激なので、どのような刺激を与えればよいかを記載していきましょう。ここで私はタッチポイントメモとして、どういうコンテンツなら、認識変化させられそうかザックリと考えておくと後々役立ちます。

ここまで出来上がれば、KPIを設定して、効率的に刺激を与えるためには、どのメディアを使えばよいかを考えます。どのメディアで接点を築いていくか?これはターゲットやニーズによって異なりますが、コンテンツに目を留めてもらうためにベストなモノを選択しましょう。

これでパーセプション・フロー自体はできあがりますが、ここからそれぞれの知覚刺激でどのようなコンテンツカテゴリが響きそうかを洗い出します。今やコンテンツの種類も増えています。ブログやニュースレターだけではありません。動画、事例記事、プレスリリース、ポッドキャストなど、思いつくカテゴリを全て洗い出しておきます。

最後に設定したバイヤーペルソナを想定し、具体的なコンテンツ案を差し込んでいくことで、パーセプション・フローによるコンテンツ設計が完成します。

具体的なコンテンツを作る前にチェックしよう

コンテンツマーケティングにおいて大切なのは、読み手にとって価値があるコンテンツか?そして、コンテンツがお客様が求めていることと関連性があるのか?そして、一貫性があるか?です。

ただただコンテンツを量産すればよいか?というとそうではありません。コンテンツをひとつ作って終わりではなく、連続性かつ一貫性あるコンテンツを提供していくことが大事です。

なので、必ずコンテンツを作成する際、この下記3つをチェックしてみてください。

  • そのコンテンツは価値があるのか?

  • お客様と関連性があるのか?

  • 一貫性があるコンテンツか?

インサイトとベネフィットの設定とパーセプション・フローを構築することで、上記の3点はクリアしているはずです。

ユーザーヒアリングの重要性

コンテンツの設計を行うにあたって、最も大事なことはお客様を知ることです。お客様のことを理解しなければ、コンテンツマーケティングの成功はありません。

では、お客様を知るために何をするかというと、ユーザーヒアリングをします。最低でも4、5人、できれば10人くらいにヒアリングした方が良いでしょう。

ヒアリングが追えたら、ヒアリングした人たちの中から似ている人たちをグルーピングしていきます。

これは何をもって似ているのか?という切り口が非常に大事ですが、toC向けの商材であれば商品に関心を持つ切り口が近いとかで分けると良いでしょう。

例えば5,000円のワインを購入する人の中でも、期待値も違えば嗜好も分かれます。購入するお店に対する期待値とか利用理由とかも大きく分かれてくるのかなと思います。

全く異なるパターンだと、社内で行う勉強会、セミナーなども期待値がバラバラです。出といた方が良いかな?と思って参加している人もいれば、知識の欲求として真剣に学んで実践してみようって思う人もいると思うし、それぞれパターンがバラバラだと思います。

この期待値が似ている人を集めてしっかりと分けるということが結構重要になってきます。

また、ユーザーヒアリングを10人やって10パターンに分かれてしまった場合、1to1でやればいいじゃないというのは論理としてありますが、10個のコンテンツを作って、10個のバナーを作るか?って議論になるので、必ずグルーピングをします。

このグルーピングをしっかりと分けられるか??ってところは、お客様をどれだけ知っているか?によってグルーピングの解像度が変わってくるので、

最後に

コンテンツの核となるのは、いかに顧客に対して価値を提供するかということです。コンテンツに価値があり、関連性がある、一貫したコンテンツでなければいけません。

ただただ「買ってください」と売り込むのではなく、オーディエンスの役に立つ存在であるということを示すことが大事です。

コンテンツに触れたとき、まずは楽しくてはいけません。

そして、何かしらの学びがあり、意欲をかき立て、共有したいと思わせるような価値あるコンテンツであるべきです。

"コンテンツマーケティング=低品質なコンテンツ"と言われがちですが、顧客理解と顧客体験を考えるだけで、コンテンツの質はグッと上がります。

最高の顧客体験を実現するためのコンテンツを意識して、コンテンツの設計をしてみてください。

ご意見やご感想、ご質問などありましたら、Twitterやコメントでもいただけると嬉しいです。

パーセプション・フロー構築に使ったツール

実際に使ったCacooの図も掲載しておきますが、スマートフォンだと非常に見づらいです。

紹介した書籍


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