見出し画像

「知略の本質」を読む Part2 イギリス-ドイツ戦

知略の本質 野中郁次郎他著を読み、自分なりに経営に結びつけた考察を加えてみたいと思います。

今回は第二章 イギリスとドイツの戦いです。

今、世界中がコロナウィルスの恐怖に直面しています。そんな中でこの章を読みました。まず思ったのが、チャーチルのようなリーダーが今の世界の存在が必要だということです。
彼のリーダーシップのスタイルは、どれほど事態が深刻でも、希望を持って戦うことの意義は何なのかを真摯に国民に説き、世界が協力して悪に立ち向かっていくために、まず自国が誇りを持って戦う姿勢、能力を示すというものです。
ナチスとウィルスでは話はかなり違います。ただ、現在の状況はまさに世界の試錬と言えるでしょう。そんな中で、これまで世界のリーダーの地位を誇ってきた国の大統領までもがポピュリズム化し、戦う姿勢より弱さを露呈してしまっている状況です。人類はウィルスに付け入る隙を与えてしまったのではないだろうかと思い、
それはナチスが現れた背景にも共通したものではないんだろうか、と感じてしまいました。

COVID-19は、ただただ感染の拡大を防ぐための個人レベルでの自粛をするしか手立てはないのが現状ですが、危機に瀕した際のリーダーのあり方については国レベルだけでなく小さな組織においてもチャーチルの姿勢は学べる部分が多いと感じました。

この本で取り上げている戦いの場面は、制空権をめぐる戦いであったバトル・オブ・ブリテンとUボートによる通商戦破壊を防ぐ大西洋での戦いです。
この2つの戦いにおいてイギリスが勝利したことで、アメリカの協力/参戦を呼び込み第二次世界大戦の連合国の勝利を大きく結びつける鍵となる戦いとなりました。

それまで、ドイツは怒涛の勢いでヨーロッパ大陸の国々を征服して、イギリスにも押し寄せてくる中で国内は敗戦ムードにあり、戦争より和平という選択に動きかねない状況でした。
そのような状況下、イギリスはどうやって逆転劇を達成することができたのか?その要因としては、前述のチャーチルによるリーダーシップと、戦時の中で生まれたイノベーションの2つが上げられています。

チャーチルのリーダーシップ
チャーチルは、見せかけのことはいっさい言わず現実の危機を正確に国民に伝え、戦うことの意義を明確にし、国民一人一人に貢献と犠牲を求めました。そうやって危機感を持ちつつ戦うことの意義を共有し、そして後述の幾多のイノベーションを協力して生み出しました。
チャーチルは戦争を悪と戦う正義の戦いであると繰り返し国民に説き、自国の存続だけでなく世界の文明と自由のために戦うのだと説きました。国民はその意味に誇りを見いだしました。そして、たとえロンドン市街地への夜間爆撃で恐怖に晒されても屈することなくチャーチルを支持し続けました。
また、独裁的ともいえるような最高権力者として国をリードすると同時に、部下の意見をよく聞き、信頼し権限を持たせ実際の仕事の実行は任せることができる人でした。そのトップの姿勢が部下に積極的にイノベーションの採用を進めさせたともいえると思います。民間人の経営手腕にたけた人物を大臣に指名して支持し続け、飛行機増産を成功させたのもその好例です。不利な戦局を打開させた多くのイノベーションはチャーチルが信頼した部下たちが積極的に実用化へ向けて取り組んだことの成果です。

イノベーションによる戦局転換
バトル・オブ・ブリテンにおいてその明暗を分けたのはレーダーの開発でした。科学者と協力して試行錯誤を繰り返すことで、レーダーを活用した防空システムを確立させました。開戦当初はドイツの方がレーダーの開発は進んでいましたが、従事した科学者たちが完璧な技術開発ではなくとも、できるだけすみやかに実用化するためのトライアルを繰り返したことで防空システムを確立させてドイツを凌駕することに成功しました。
大西洋での戦いにおいても、当初はドイツのUボートの攻撃によって多大なダメージを受けていましたが、いくつかのイノベーションの蓄積効果によって、形勢を逆転させました。レーダー、短波方向探知機(ハフダフ)、多連装投射型短距離対潜爆雷(ヘッジホッグ)、コルベット艦、護衛空母、統計解析を戦術分野に応用したオペレーショナルリサーチといったいくつものイノベーションを徹底的に訓練を積み重ねることでいち早く実践応用することができました。
こうしたイノベーションの実践応用に対して、チャーチル自身が前のめりになって取組み、部下たちが積極的に開発、実用化を進める環境を作ったことがこの勝利の大きな要因であると思います。

まとめ
「私は血と労役と涙のほかに提供するものは何も持ち合わせません」と率直に力強く説きイギリス国民を鼓舞したとあります。ナチスとの戦争を正義と自由のための戦いであり、一歩も引くことなく勝利することだけを考えていました。それと、同時にアメリカの協力/参戦という目に見える目標を掲げてイギリスをつき動かしました。そして、勝つために英知が集まり尽力することで多くのイノベーションを生み出しました。イノベーションを生み出し実用化するのは現場レベルでも、トップが前傾姿勢で取り組むことで実用化の加速が進めることができます。
2020年、世界は危機に瀕しています。リーダーが戦う姿勢をもって世界が協力して打ち勝つために、市民は協力して、一人一人が自分たちのできることに積極的に取り組むべき時が来ていると思います。我々一人一人がこの試錬を乗り切るという強い意志を持つことでいづれ勝利の日がやってくることを信じています。

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?