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Bon Jovi / 2020

1984年デビューで、80年代、空前のハードロックブームの一翼を担ったバンドであり、今ではすっかり落ち着いた貫禄のBon Jovi。90年代のグランジ・オルタナの台頭の中で80年代ハードロック勢が苦戦を強いられていく中、アメリカンロックやカントリーに接近し独自の音楽性を開眼。もともとカントリーっぽさが強いバンドだったんですよね。今ではすっかり大人向けのロックバンドになりました。こちらは2020年の15作目(Burning Bridgesも1作とカウント)。ひたすら低~中音域の声で攻めてくるので、もう少し声を張り上げてもいい気もします。年相応に枯れたと言っても、ブルーススプリングスティーン(ボス)よりだいぶ若いんですよね。ボスを通り越してボブディランに近づきつつすらある枯れっぷり。歌メロとかサウンドにはまだロックのダイナミズムはあるのだけれど、もう少しボーカルの音域を幅広く使えばいいのになぁと思いました。とはいえ作曲能力や説得力はさすがスターの風格があります。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Limitless
ミドルテンポで力強いリズム、アルペジオとシンガロングコーラス
ベースとジョンの声、粘りのあるメロディ
ハードロック色の強い曲だが、ギターの存在感がやや薄い
ドラムとベースが立っている
ギターのアルペジオをかなり左に振っている、左右のチャンネルの振り方がけっこう極端
ウォウウォウコーラスが右
★★★☆

2.Do What You Can
ブライトなトーンでややアコースティック感のあるギターからスタート、カントリー感がある
ボーカルは低音で、語りに近いトーン
完全なアメリカンロック、初期の湿り気はないが、やはり歌メロを作る力は高い
ボブディランみたいな低音でささやくような歌い方
出だしの音階が一瞬大塚愛のさくらんぼのサビを彷彿させる
★★★

3.American Reckoning
ドローン音、アコギ、低音、ディランのような語り調のスタート
ルーリードやディランほどのドスの効いた声ではないが
今回は一応BON JOVI名義ではあるがかなりソロ感が強いアルバム、少なくともここまでは
この曲はソロのディスティネイションアニホウェアあたりに入っていてもおかしくない
声が完全に主体
ブルーススプリングスティーンに近い
リズム感はかなりどっしりしている
声を張り上げることがほぼない、低音と中音域
★★☆

4.Beautiful Drug
ブライトなギターカッティングから、リズム隊がハキハキしている
ドラムの安定感はさすが
ボーカルはちょっとディストーションがかったエフェクトがかかっている、よくボンジョビが使う少し機械的な声
歌メロも後5音ぐらい高くて速度が1.2倍ならそれっぽい曲
声がひたすら低中音域
メロディはあるのだが音域が語りに近い
今っぽさをそれで計算しているのだろうか
★★

5.Story of Love
アコースティックな曲、ロジャーウォーターズ的な語り掛けるような曲
アルバムタイトルも2020だし、自省的なアルバムなのだろうか
ボウイのファイブイヤーズに出だしの展開は近い
ただ、後半あのように盛り上がりはしないのだろうな
少しだけ盛り上がったらまた落ち着いてしまった
歌メロより言葉の人になっているのだろう
メロディはいい感じなだけに盛り上がりに欠けるのが残念
★★☆

6.Let It Rain
明るめのキーボードかホーンで始まる
歌が入ると生っぽいアコギの音と声に
カントリーの影響が強い、ドラムも乾いた音
イントロの力強いフレーズがまた出てくる、これが少しボーカルの中低音域の覇気のなさを補っている
コーラスは少しやる気を感じる
コーラスから展開、テンションを保つブリッジ
ピアノとボーカルだけに
★★★☆

7.Lower The Flag
アコギと低音でリバーブが強い声
弾き語りフォーク的
ずっとそのトーン、むしろ曲に合っていて良い
途中ややラップ的なパート、そこから語り
ふたたび弾き語りパートへ
★★★

8.Bloood In The Water
ギルモア的なギターからスタート
静かなヴァース
サビは少しやる気が出てくる、キープザフェイスのドライカウンティ的なメロディ
後半に向けて少しやる気が出てきている
癖のあるボーカル、この辺りはこのバンドならではの味わい、シグニチャーサウンド
ちょっとギルモア的なギターが最初と最後に入るのは謎だが、新ギタリストの味なのか
★★★☆

9.Brothers In Arms
やる気のあるドラム、打音が強い
ギターリフらしきものが出てくる、少しファンキー
この曲も中低音主体だが、よくこれだけ狭い音域で歌メロを作れるものだ
それなりに曲ごとのキャラクターがあって、これは作曲能力の高さだろう
この曲名ってダイアーストレイツ意識したのだろうか
もうちょっとサビのテンションが上がればなぁ
★★★

10.Unbroken
荘厳な、アタック音の強い管楽器にボーカル
高音のギターフレーズが鳴り響き、再びヴァースへ
ちょっとケルティック、アイルランド的なメロディ
高音のフレーズはバグパイプ的
終盤は映画的
★★★☆

全体評価
★★★☆
完全にボーカル主体のソロアルバム的、大人向けのロックといえばそうか
このバンドらしさ、歌メロというのはあるが、いかんせんボーカルがずっと中低音で展開もゆるやか
ロックとしてのダイナミズムや緊張感が上がるパートが少ない
全体として一定のテンションは保っているが、いったいどういう層が聞いているのだろう
オルタナグランジへの適応をかなり悩んでいたが、生き残る過程でこのボーカルスタイルに落ち着いたのか
歌い方がゆっくり、話すトーンで言葉を前面にだして歌っている
ロジャーウォーターズの新作よりはロック色があるし、そういう社会への警句、社会描写的な視点が売りになったのだろう
Livin' On A Pryerも社会のひずみや弱者への視点、社会の不公平さに関する視点はあった
結局そこをコアと定義しなおしてそこから進化したのだろう
リッチーが抜けてしまったのも納得、このバンドや音楽性にギターヒーローは必要ない

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