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Dead Kennedys ‎/ Fresh Fruit For Rotting Vegetables

Dead Kennedysは1978年結成、1980年デビューのカリフォルニアのハードコア・パンクバンドです。その後のUSハードコア、パンクシーンに絶大な影響を与えたバンド。本作は1980年のデビュー作にして名盤と呼ばれるアルバムです。かなり政治的主張の強いバンドで、歌詞も直接的。とはいえ、聞いた感じは明るく入りやすい、それほど攻撃性は強くなくポップな感覚さえ受けます。

1 Kill The Poor 3:06 ★★★★

予想外のスタート、なんだろう、ちょっと軍歌的というか、朗々と歌い上げるボーカル。パンキッシュ、、、というのとも少し違うような。お、そこからアップテンポに変わった。考えてみるとラモーンズとかもこうか。パンクな歌い方ってのはこういうスタイルかも。ポップなメロディ。Sex Pistolsバリのスリーコードロック。レゲエ色などはなく直情的なリズム。エイトビート。ボーカルがけっこう前面に出てきている。メロディアス。ギターはコードカッティング主体。かき鳴らしている。ギターソロらしきパートもあるんだな。これ「貧乏人を殺せ」という歌詞なのか。なかなかえぐいな。笑い声みたいなものも入っている。

2 Forward To Death 1:23 ★★★☆

奇妙で力業なコード進行、ボーカルはメロディアスだがコード進行は無理やりでひねくている、ジャパニーズハードコアにもこういう進行があるな、この辺りが原型なのか。1980年作だからかなり早いはず。日本にも1977にSSというバンド(京都)がいたのか。

3 When Ya Get Drafted 1:24 ★★★☆

次の曲へ、ハードコアサウンドになってきた。ボーカルはメロディアスなんだがコード進行がめちゃくちゃ感があるというか。ギターサウンドはちょっとエレキ、サーフっぽいな。太くで歪んでいるが丸みがある。ベンチャーズ的。ガレージとサーフは音的に近いんだろうな。

4 Let's Lynch The Landlord 2:13 ★★★★

コードカッティング、これはメロディが落ち着いた。ロンドンパンクっぽい、きちんとしたコード進行。なんとなくカントリー的なコード進行でもある。ギターサウンドはややシャリシャリしたディストーションギター。ギターの音色は曲ごとにけっこう違うな。リバーブの効いたギターが入ってくる。これUKっぽいな、前情報なく聞いていたらUKのバンドだと思っていた気がする。

5 Drug Me 1:57 ★★★★

これもハードコア的、ちょっとホラー味もあるな、反復してなにか不気味な音階。Drugの歌か? 勢いはあるが幻覚、サイケ的。ヤギの泣き声のような声を震わせるボーカル。金属音のようなギター。性急なリズム。いろいろなものをぶち込んでいる感じがする。

6 Your Emotions 1:21 ★★★★

これはロンドンパンクか、きちんと和音が展開していく。つんのめるような勢い。このバンドはNYじゃなくカリフォルニアか。西海岸のパンクってのはこういう感じなんだな、ロンドンからはかなり地理的には遠いはずだが音的には近い。ちょっと開放感というかサーフ感があるのは西海岸だから?

7 Chemical Warfare 2:58 ★★★★

シャリシャリしたギター、だんだんテンションが上がっていくボーカル。言葉を吐き出す。言葉のテンポが速い。全体的に曲のテンポは速いかもな。そういえば西海岸スラッシュが出てくるのもこの時代か。ハードコア、スケーターロック、そして西海岸パンク、ハードコア、テンポ感を上げていきたいという時代や地域の空気があったのかも。早くするとその分軽やかさも出る。駆け抜ける。途中でテンポチェンジしてパブロックというか、人をおちょくったようなワルツ調になる。そこからごちゃごちゃと音が入ってきてカオス状態に。最後コーラスで〆。パーティー感があるな。

8 California Über Alles 3:02 ★★★★

この曲は刻みが出てくる、コードかき鳴らしではなく。ただ、メタル的な細かい刻みではなくそうだなぁ、サーフ的というか。歌詞もカリフォールニャとか言っているし、サーフか。ただ、その後のコード感がやや歪んでくる。コーラスで声を細かく震わせるのは面白いなぁ、このヤギ声は癖になる。ヒステリック感があるというか。ちょっと人を食った感じがZappa感もある。だんだんテンポアップして音がカオス感が出てくる、、、が、きちんと整ったコーラスで締めてテンポが戻り最後ユニゾンでしっかり終曲。

9 I Kill Children 2:04

タイトルからしてひどいな。ギターノイズからコードカッティングへ、そしてリズムが入ってくる。少しうわずるようなボーカル、変質者感がある。あるいは悲鳴か道化か。アップテンポ。ツーコードでヴァースを引っ張っていく、基本はツーコードだな、アクセント的に3つ目のコードが出てくる。途中から展開して、下から上がっていくようなパートに。曲が終わったと思ったらまた続く、短い違う曲をいくつかくっついたような曲だな、アイアンメイデン的ともいえるかも。

10 Stealing Peoples' Mail 1:34 ★★★☆

縦ノリのリズム。駆け抜けていく。ギターがやや機械的というかピコピコに聞こえる奇妙なノイズを出す、ギターサウンドがけっこう凝っているな。曲構成もめちゃくちゃながらメロディの量が多くフックが効いている。一つ一つのパートは直線的でストレート、あるいは力業を感じるが細かく曲展開が組み合わされ、かなり展開する。1分半の中で目まぐるしく展開する。

11 Funland At The Beach 1:50 ★★★☆

少しミドルテンポというか、アップテンポながらこのアルバムの中では少し落ち着いた、ロックンロールなノリというべきか。ジルバ。ダンサブル。ボーカルの感じがなんとなくナチス的というか、軍隊的な発声法も感じる。折り目正しく「イエッサー!」的な、なんだろう、歯切れよくはっきりと発音している。ところどころ細かいビブラートをかけて音を伸ばすのだけれど。この発声はハードコア的なスタイルだなぁ。

12 Ill In The Head 2:47 ★★★☆

お、変な進行、これはザッパっぽい。歌が入った後つかみどころのない音程で曲が続く。そういえばスラッシュメタルにもこういう奇妙な音階が出てくるよな、AnthraxにせよSlayerにせよ。調性和音の壁、コンフォートゾーンから離脱する、聞き手に引っかかりを与える感覚を力業で生み出している。音楽理論とかそういうことではなく、単にギターをいじっていて「なんか変わった感じ、意表を突く展開にしようぜ」「ぶっ壊れた感じにしようぜ」とやっていったらこういう和音や展開になったのだろう。これそれなりに演奏力いる曲だなぁ、けっこう演奏は上手い。ベーシックなリズムやグルーブは安定しているのだけれど、その上でけっこうアクロバティックなこともできるんだな。

13 Holiday In Cambodia 4:38 ★★★★☆

スパイ映画のような、何か緊迫感のあるスタート。サーフサウンドと言うべきか、ミザルーとか。アパッチとか。ボーカルが入ってくる。これはスカのリズムも混じっているか。ホーンは入ってこない。音のバリエーションは面にギターサウンド、エフェクトの変化で担っている。「カンボジアの休日?」なんだこの歌詞。カンボジアってこんな綴りだっけ。タイトルだけ見ても気が付かずコーラスで聞いたらカンボジアと分かった。カンボジアのイメージがこんななのか。ちょっと奇妙でエキゾチックな感じは確かにするな、アジア感はないけれど。旅行の思い出なのか。これは時間も長いし「曲」としての輪郭が濃い。

※追記 ポル・ポト政権を痛烈に批判した曲のようですね。歌詞の和訳はこちら

14 Viva Las Vegas 2:41 ★★★☆

直立不動で整列するような、どこか折り目正しい曲、ただ、声は酔っぱらっているような、、、礼儀正しい酔っ払いか。祝祭的。なんだろう、ああ、カントリーというかウェスタンのリズムなのか。楽し気。ローハイド高速バージョン的な。すっとぼけた歌メロ。

総合評価 ★★★★☆

これは名盤。さすが1980年から語り継がれているだけのことがある。今聞いても「時代を切り開いている意思」みたいなもの、高揚した初期衝動みたいなものを感じる。音像がフレッシュながら、勢いだけでなく曲の中にはさまざまなアイデアが詰め込まれていて、かといって小難しさはまったくない。大量のアイデアを形にしながらも大抵の曲を3分以下、1分台や2分台にまとめる能力は凄い、取捨選択の嗅覚が高い。


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