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Steven Wilson / THE FUTURE BITES

現代プログ・シーンを牽引するパイオニアの一人、スティーブン・ウィルソンの2021年作。スティーブン・ウィルソンはプロデューサーやミキサーとしても活躍しており、OpethのBlackWater Parkのプロデュースや、あとは往年の名盤のリミックス盤でも名を知られています。特にサラウンドリミックスはお手の物。XTC、ジェントル・ジャイアント、YES、ジェスロ・タル等々、、、数えればキリがないほどの作品を手掛けています。もともと音楽志向は拡散している人で、「メタル」というよりは「プログレ」の人。今作はプログレ色が強く、メタル色は薄め。10分近い大曲「PERSONAL SHOPPER」は白眉。

2021リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.UNSELF
風が吹くような音からアコギのコードが微かに入ってくる
小さな声、ボーカルが入ってくる、デイビッドギルモア期のフロイドのような、空間的な音
と思ったら急にリバーブがなくなった声で終曲
★★★

2.SELF
前の曲から続く、前の曲が序曲的な立ち位置か
耳に近い声、機械化されたエフェクト
アナザーブリックインウォール的な、ミュートされたギター
ボーカルが主体で進んでいく、ボーカルとビート
それを装飾するギター
歯切れの良い歌メロ、子供の声も入ってくる、これはアナザーブリックインザウォール意識してるな
ベースがうねる、ちょっとした効果音がいくつか入ってくる
音が重なるが混沌まではいかない
★★★★

3.KING GHOST
圧迫感のあるベース、低音、水中のような
声は泳ぎ回る、人の声がアルペジエイターで切り刻まれてリフとして回っている、反復している
なんだろうなこの音像、プログレ色は強いがメタル色はほぼない
ロック色はあるが、ギターは前面に出てこない
音響とリズムとボーカル、歌メロはしっかりしていて好印象
シンセのフレーズが反復する
ああ、ちょっとMOBY感もあるのかな
もちろんインサイドアウトの他のプログレバンド感もあるが
★★★★

4.12 THINGS I FORGET
アコギのブライトなコードカッティングから
ベースが低音を埋めている、曲が展開していく、少しけだるさもある
この人はポーキュパインツリーもちょっと暗いからな
この人にしてはかなり明るい、明朗なメロディ
★★★★☆

5.EMINENT SLEAZE
緊迫感のあるメロディ、なんだろう、ロジャーウォーターズ的なアルバムなのかな
最近のロジャーよりは娯楽性が強い
最初はかなり音数が少な目だが、途中から加速する、BPMがあがる
ああ、ピーターガブリエルだ、UPに近い感じがする
あそこまで作りこまれてはいないが
いずれにせよ、そうしたプログレの大御所たちがだんだんたどり着いたような音像
近づいていくのかなぁ、当代きってのプログレマニアだからね、スティーブンウィルソン
コーラスが重要な役割を果たしている曲
★★★★☆

6.MAN OF THE PEOPLE
落ち着いた雰囲気の曲、口ずさむようなメロディ
余白の多い展開、と思っていたら途中からゴーンという打ち鳴らすようなサウンドが
音響的に面白い
ハミングというか、舞い踊る声のようなフレーズがでてくるがこれシンセのリードか
他の曲にも出てきたな
細かい反復フレーズ、ゴブリンのサスペリアやマイクオールドフィールドのチューブラベルズのような、やや不穏なアルペジオ的な反復フレーズが繰り返される、このアルバムは全体を通してそうした細かいフレーズの反復が多い
★★★★

7.PERSONAL SHOPPER
機械的な、加工された音像、テクノ的な
裏声で進む、かっちりしたジャーマン感
勢いのよいコーラスが入ってくる、面白いなこのアルバム
どの曲も緊迫感があるがメタル的語法には頼っていない、歪んだ音、ディストーションではない緊迫感
さまざまな音色、ジャーマンテクノの冷徹な感じも受ける
やや暗黒的なテクノ・プログレ・ロックというか
この曲10分近くあるのか、大曲
途中で語りが入る、やや瞑想的な、チャントが後ろで微かに聞こえる
さまざまな商品名やサービス名が連呼される、タイトルと言い、消費文明、社会がテーマかな
四つ打ちが入ってくる、ダーク・トランス・プログレッシブ・ロック
ダンサブルなコーラス、複数の声が絡み合う
★★★★★

8.FOLLOWER
また意味深なタイトルだな
ベーシックなリズムの反復に、やや不協和音が入るコード
基本爽やかだがどこか歪んでいる
歌メロが入ったらメロコアみたいになった、、、がちょっと変なコード
ブーンという音、ブーム音が大きくなり次のパートへ
フォロワー獲得狂騒曲か
不思議な浮遊感がある曲、反復フレーズと基本のリズムのテンポがちょっとずれているというか
どこか歪んだ、ひねくれた感じ、初期XTC感もちょっとあり
そういえばXTCもサラウンドはスティーブン・ウィルソン・リミックスだったな
★★★★☆

9.COUNT OF UNEASE
幽玄な響き、音響的な
アウトロ、アルバムの余韻的な曲
バラードで展開はスロー、シガーロスのような
さまざまな音楽的冒険、引き出しがありつつ
メロディは生真面目なプログレマニア感がある
★★★☆

全体評価
★★★★☆
スティーブン・ウィルソンの新作としては期待通りの出来
いやむしろ、新機軸や挑戦もあり、かなり良いアルバム
もともとダーク・アンビエント的な要素があったし、今回はトランスとかテクノの要素が加わっている
彼のメロディセンスにはかなりマッチした音像、7~8の流れは白眉
ピーターガブリエルのUPやロジャーウォーターズの最新作にも通じるところを感じた
現代のプログレッシブロック、メロディセンスやアレンジのセンスが良い
プロデューサーやミキサーとして八面六臂の活躍をしているが、その知見を活かしたマニアも唸る一作

ヒアリング環境
夜・バー・ヘッドホン

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