マガジンのカバー画像

アルバムレビュー

366
漫然とアルバムを聴いていると印象を忘れてしまうので、アルバムを聴きながら1曲づつ感想を書き留めてみることにしました。特にジャンルレス。その日選んだアルバムを聴いてレビューしていき… もっと読む
運営しているクリエイター

#音楽

Judas Priest / Invincible Shield(2024)

Judas Priest / Invincible Shield(2024)

UKメタルの祖とも言えるジューダスプリースト(鋼鉄神)、プリーストの結成は1969年とブラックサバスとそれほど変わらないが、デビューは1974年、そして本格的な商業的成功を収めるのは1980年のブリティッシュスティールからとやや遅咲きのバンド。ただ、それ故か「British Heavy Metal」に拘り「ヘヴィメタルとは何か」という音像を追及してきたバンド。以前書いたようにヘヴィメタルの誕生は1

もっとみる
Bruce Dickinson / The Mandrake Project (2024)

Bruce Dickinson / The Mandrake Project (2024)

★★★ 感動した/ウルッと来た
★★ ワクワクした/耳を惹かれた
★ 平常

全体評価:★★★19年ぶり、アイアンメイデンのボーカリスト、ブルース・ディッキンソンのソロ作。前作同様ロイ・Zとタッグを組み、コンセプトアルバムとしての作品。

まず、メタル色は薄い。というか、最近改めて思うが00年代以降「メタル」というとグロウルボイス(いわゆるデス声)の印象が強くなっている気がする。そもそもブルースは

もっとみる
人間椅子 / 色即是空

人間椅子 / 色即是空

日本の誇るストーナー/ドゥームメタルバンド、人間椅子の2年ぶり、23枚目のアルバム。1989年のデビュー以来、ほぼ1年か2年おきにアルバムをリリースし続けるという偉業を成し遂げています。継続は力なり。ドラムがナカジマノブ氏に変わった2004年以降、現体制としては12枚目のアルバム。現体制でのアルバムが全カタログの過半数を超えました。不遇の90年代後半~00年代を経てOzzfest Japanへの参

もっとみる
Avenged Sevenfold / Life Is But a Dream…

Avenged Sevenfold / Life Is But a Dream…

USメタルの巨人、A7X(Avenged Sevenfold)の新譜がリリースされました。8枚目のアルバムで、前作「The Stage(2016)」から7年ぶりのリリース。2018年からアルバムの制作はスタートし、2020年末にはほとんど完成していたそうですがコロナ禍によりツアーが延期され、アルバムのリリースも今のタイミングにずれこんだ、とのこと。

A7Xは1999年結成、2001年デビュー。最

もっとみる
Metallica / 72 Seasons アルバムレビュー(第一印象)

Metallica / 72 Seasons アルバムレビュー(第一印象)

いよいよMetallicaの新譜が公開されました。あまり前情報を入れず、初聴した感覚を書き残しておこうと思います。

1."72 Seasons" 7:39 ★★★★☆先行発表されていたタイトル曲、リフがなだれ込んでくる。これはすべてダウンピッキングだろうか。今の基準だとそこまで高速というわけでもないが体感として早く感じるリフワーク。そのまま疾走感のあるドラムが入ってくる。アップテンポなナンバー。

もっとみる
Babymetal 4thアルバム『The Other One』レビュー

Babymetal 4thアルバム『The Other One』レビュー

2010年代を代表するメタルアクト、Babymetalの5年ぶりのニューアルバム「The Other One」がリリースされました。アルバムレビューを書きつつ、このアルバムを現代メタルシーンの中に位置づけていきたいと思います。

Babymetalのメタル史における位置づけについて考察したことがあります(→関連記事)。結論としては「2010年代を代表するメタルアクト」でした。2010年代に出てきた

もっとみる
2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 4月-5月

2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 4月-5月

よーし、メタルについて書くぞー!

年末にまとめてベストアルバムを選ぶより聴いた時点で書き続けていこう、と思ってベストアルバムの記事を書き始め随時更新していたのですが、既にかなりの分量になってきて「こりゃあかん」と記事を分けます。重すぎると読み込めなくなるんですよね。

この記事は4月~5月あたりで耳を惹かれたアルバムの紹介。流すと「空気感が変わる」「独特の時間を過ごせる」ものを選んだつもりです。

もっとみる
2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 1月ー4月

2022 ベストメタル/ハードコア(一部プログレ)系アルバム 1月ー4月

2022年で「おっ」と思った新譜アルバムをまとめてご紹介。じっくり聞くような大作よりは聞いていて楽しい、テンションが上がる作品が多いのは聞き方を変えた(※1)影響かも。メタル/ハードコア系と言っても音像が広いのでいくつかのサブカテゴリに分けています。

・”新しさ”が耳を惹くアルバム ー 新規性があってこの界隈の音像を拡張する、挑戦しているアルバム。個人的には大好きだし、多くの人におススメします。

もっとみる
メキシコ音楽+メタリックハードコア=オチョ・カラカス : 8 Kalacas / Fronteras(2022、US)

メキシコ音楽+メタリックハードコア=オチョ・カラカス : 8 Kalacas / Fronteras(2022、US)

スカコア・メタルバンド、8 Kalacas。本国ではアトミックファイアーレコードと契約し、日本ではワードレコードから国内版も発売予定。アルバムは未発売ながら先行トラックが何曲か公開されており、それらが衝撃的だったのでご紹介。バルカン的なブラスセクションが入り、シカゴなどのブラスロック的な味わいも感じる面白い音像。

ベースはスカコアであり、ラテンアメリカの音楽をベースとしながらザクザクしたギター、

もっとみる
なんとなく「東京の空気感」にも近い:Black Country, New Road / Ants From Up There(2022、UK)

なんとなく「東京の空気感」にも近い:Black Country, New Road / Ants From Up There(2022、UK)

UKインディーズロック、サウスロンドンシーンと呼ばれるバンド群の中から現れたブラックカントリーニューロード。昨年のデビューに引き続いてセカンドアルバムをリリース。本作はより焦点が定まった内容になっていて、UKロックの伝統、それこそビートルズ、いや、キンクス的な「さまざまな音のレイヤーを重ねていく」手法がとられているが、なぜかJ-POP、日本のインディーズ的な音作りにも感じる。古くはboatであった

もっとみる
Oki / Tonkori In The Moonlight 月明りのトンコリ(2022、日本)

Oki / Tonkori In The Moonlight 月明りのトンコリ(2022、日本)

”辺境”と”中央”の止揚度 ★★★★★

トンコリとはアイヌに伝わる伝統的な弦楽器で、通常は五弦であることから「五弦琴」と訳される(三弦や六弦の物もあるが、非常に稀)。江戸時代には北海道の宗谷地方やオホーツク沿岸地域、天塩(美深)などでもほぼ同じ楽器が存在し「カー」と呼ばれ演奏されていた文献記録があるが、近代までに伝承は途絶えた。現在判明している製作法や演奏法は、すべて樺太アイヌのものである。

もっとみる
N.W.O.B.H.M.の40年:Saxon / Carpe Diem(2022、UK)

N.W.O.B.H.M.の40年:Saxon / Carpe Diem(2022、UK)

NWOBHM度 ★★★★★

Saxon(サクソン)、1977年結成、1979年デビューでN.W.O.B.H.M.を代表する存在として80年代から活躍しているバンドです。N.W.O.B.H.M.からはIron Maiden、Def Leppardが破格の成功を収めましたが、それに次ぐ位置といえばSaxon。3バンドの中だとSaxonが一番デビューも速く(他の2バンドは1980年)、最初の狼煙を上げ

もっとみる
Persefone / Metanoia(2022、アンドラ公国)

Persefone / Metanoia(2022、アンドラ公国)

プログレッシブメタルおススメ度 ★★★★☆

かなり神聖かつ荘厳なオープニングでスタートするアルバム。そこからデジタルビートが鳴り響き、だんだん加速していく。映画的なオープニングからゴリゴリのテクニカルプログメタルへ。今作はドラマティックさを増しているようだ。

Persefone(ペルセフォネ)はアンドラ公国のバンド。アンドラ公国というのはヨーロッパの小国でフランスとスペインの国境にある。中世の

もっとみる
Vektor / Terminal Redux(2016、US)

Vektor / Terminal Redux(2016、US)

スラッシュ名盤度 ★★★★★

これは凄い! Voivodにも通じる奇妙な和音(ジャズ由来っぽい感じ)を超高速で奏でるスラッシーな曲が続き、どんどんテンションが上がっていく前半~中盤。引っ掛かりがあるテクニカルなスラッシュながらプログレ的な変拍子感よりは直情的な疾走感、ヘドバンに最適なテンション高い音像が続く。かと思えば9曲目では突如スウェーデンのGhostにも通じる、北欧的な美メロが出てきて雰囲

もっとみる