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写真 岐阜県郡上市 (2021)

5日後の朝、岐阜県郡上市の牧場 (ランチ) へ行ってカメラのファインダーを覗くと、そこにはバイオレット・ピンクの花畑が待っていた。

私は今回は白色のポロシャツを着て、黒色のトレッキングハットをかぶっていた。ネックレスとサングラスはなし。いくぶん口の中の口内炎が痛かった。私は今のところ、どんな仕事でもとびつきたいほど困窮してはいない。

私は花に目を奪われていた。とにかく息をのみっぱなしだった。観光牧場かもしれないが、パンフレットに「思いっきり深呼吸しよう」との文字が書かれていたので、深呼吸をした。ええ、こういうのは初めてではありません。
 
私は私のすぐ眼前の花畑の匂いを嗅ぐことができた。あるいは嗅いだような気がしただけかもしれない。ラベンターの花畑であった。ここはときとして、なんと言うか夢見がちになる。言うなれば、空想の世界にいるようだ。

かつては家族連れのためのバーベキューハウスのようなところもあった。食事と、休憩する場所、アウトドアのための施設と、エンターテイメント、そして何よりも静かな環境が提供されていた。

それほど高くない料金だった。家族連れというのはたいがい、そんなに裕福ではないから。家族連れと私が言うときには、もちろんそこには子どもも含まれるし、ペットも含まれる。

そこは暑かった。摂氏にして35度か36度は暑かっただろう。

ラベンダー畑の三方のサイドには、高原の花畑、教会の花畑、秘密の花畑があり、そこには欧米で見られうような教会があったのだが、そこのベルは錆びて色褪せていた。

お花畑のエリアは色とりどりであった。ブルーのロシアンセージ、黄色のマリーゴールド、ピンクのアルストロメリア、赤いサンパチェンス。

ラベンダー畑の一方のサイドから、大日ヶ岳 (1,709m) と白山 (2,702m) が見えた。

大日ヶ岳は白山の南東に位置し、空っぽのスキー場は土砂すべりが起こったかのように見えた。登山道には人の姿はなかった。シーズンオフの閑散とした雰囲気が漂っている。

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

水を飲みながら、大日ヶ岳と白山について考えてみた。行くべきか行かないべきか。二つの山へ行ってみることで午後の大半はつぶれるだろう。

二キロあまり歩いて牧舎へ向かい、池の前のベンチで休憩した。水を飲んでいるうちに、人が池の鯉に餌をあげていることがますます愉快に思えてきた。人間の飲む水より鯉の餌の方が高いなんて。
 
牧舎ではイングランド原産のサフォーク種の羊のような興味深い動物に出会うことができた。しかし目当ての動物は見つからない。

乳しぼり体験をすることで牛が消耗し、引き馬体験をすることで馬の神経をすり減らせるように思えた。人間は欲望のためにせっせと金を払らって虐待しているようだ。

牧場の牛を見たあとしゃぶしゃぶを食べるなんて、競馬の名馬ディープインパクトを打ち負かすより難しいだろう。牛を見て、しゃぶしゃぶにしたらおいしそうとは言わない。

牛は無害な動物です、スタッフさん。牛から見れば、乳しぼり体験というのはいささか荒っぽすぎます。

いずれにせよ、動物にも生まれながら自由に生きる権利はあるのだ。 

放牧せよ。動物万歳!

牧舎を出てしばらく進み、ロードトレイン乗り場を横切った。階段を登り、展望台が視野に入るメインハウスのところまで戻った。メインハウスの前のベンチに座ってじっと待った。

5分かそこら休んだ。そして、もときた道を帰っていった。

入り口のゲートを出ると、私は停めた車に戻り、次の目的地へ行くべくしてUターンをした。

半日はこれにて終了というわけだ。

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