見出し画像

before "before dawn" / 角居康宏

まずはこちらの動画をご覧ください。

”長野県 頑張るアーティスト応援事業 テーマ型 対象事業動画制作”
制作動画「曙光 -shoko-」


この動画内で金属造形作品を制作する人物が角居康宏
2020年10月9日(金)からは白白庵にてオンライン+アポイントメント限定個展「before dawn」を開催します。

これまでの白白庵企画展では食器やインテリアなど錫を用いた道具をメインにご紹介してきました。しかしながらそれはほんの一面でしかありません。先の動画で見られるような「始まり」をテーマにしたアートワークを手掛け、また工房を構える長野ではアーティストと地域が交わる「中条アートロケーション《場》」を運営。
その活動は作品制作だけに収まらず、様々な人々や地域社会をも巻き込んで”表現”と”生活”の距離を密接なものとして社会の在り方に新たな可能性も示します。

そんな角居康宏という人物を中心にどのような作品や《場》が生み出されているのか、個展開催前に紐解いてみましょう。


錫の道具たち


白白庵企画のグループ展では驚異の出展率を誇る角居康宏の錫作品。
素材の特性を活かし、”用”と”様”の美が極まる端正な作品が並びます。

画像1

『水指』

錫は柔らかで加工しやすい金属ですが、叩いて鍛えることで硬く引き締まります。この叩き締める工程がめっぽう手間で型に流し込んで形を整えたままの製品も多く、巷では「錫製品=柔らかい」というイメージもあるようです。

しかしながら角居作品はどれも力強く叩き締められ、手に取ると心地良い重量感と安心感のある硬さが掌に伝わります。
叩き上げることで強度は増し、さらに表面には細かな模様やテクスチャを刻みこむことが可能となります。
そして鍛えられた素材の放つ気品がその端正なシルエットをより高みへと引き上げるのです。

画像2

「銘々皿 コンポジション」

錫は錆びない金属(正確には数十年単位では少しづつ錆びるそうです。)ですので、叩き上げらた錫素材は文字通りの一生ものとして、さらには世代も超えて長くお使い頂けます。
長年の使用で色が曇った場合には、重曹と柔らかい布で磨けばもとの輝きが戻ります。

画像7

「注器 ファセット」

そして錫は人体に無害なだけでなく、お酒や飲み物の味わいを美味しく変化させる力があり、古くから酒器として愛されてきました。
角が取れて味がまろやかになる、という声がその大半のようです。
とはいえ味覚は十人十色。お好みの"いつもの飲み物"でどのような変化が感じられるかをお試しください。

画像8

「花器  竹」

また水質浄化作用もあるため、花器に用いれば花がいきいきと長持ちします。

画像7

画像8

「ぐい呑 ファセット」

熱伝導の良さもまた錫の重要な特性です。
作品を手にしたまま冷たいものをそこに注ぐと、その瞬間に器が冷える感覚が掌に伝わります。暑い日に錫のカップへ冷たい飲み物を注ぐ、そしてそれを口に運ぶことはなかなかの快感です。器の冷たさが、飲み物の清涼感をそらに引き立ててくれるようです。

画像8

「銚子 奏」


逆もまた然り。温もりもそのまま伝えます。燗をつければ均一かつ柔らかに熱を伝えるため温度のコントロールがしやすく、錫の酒器を愛用するプロも多くいます。錫のぐい呑を握り込めば体温がそのまま伝わるので、冷酒をちびちびと徐々に肌燗にしながら嗜む数寄者もいるそうです。




「始まり」のオブジェ


火によって金属が融ける姿に始原を感じた事から、角居康宏は「始まり」をテーマに制作を続けています。
先のリンクでご紹介した動画はそのオブジェ制作風景の貴重な光景です。
地面を掘り、土と木で型を作り、そこに融けて煮えたぎる金属を流し込むその営みには尋常ならぬエネルギーが注がれ、作家の精神と自然が抱く大きな力とが交わっている事を見出すことができます。
この動画で制作された作品は今展覧会の主役として白白庵に登場予定です。

このアートワークの制作過程に関する詳しい解説や「始まり」についての詳しいお話は後日インタビュー記事にて公開予定。お楽しみにお待ちください。




中条アートロケーション《場》


2018年。角居が中心メンバーとなり、様々なジャンルのアーティストの交流や制作の場として長野県中条市に設立された「中条アートロケーション《場》」。その翌年には併設カフェ「美場」もオープン。
人口1800人の限界集落にアートやものづくりの息吹をもたらす事で、地域の人々と交流を深めながら、そこに多種多様な価値観が集まる事で生まれる物事を発信する事。
そうして《場》の与える影響が広く深く浸透するべく日夜様々な試みが行われています。それは生活に余白という豊かさをもたらすための、そしてアートやものづくりが生み出す価値観が特別なものではなく日常の感覚として馴染み、社会が次の段階に進むための試みでもあります。

https://www.facebook.com/ba.nakajo

この「中条アートロケーション《場》」のコンセプトや概要については、オープン前後に詳しく語られたインタビューが存在します。
外部記事となりますが、こちらからご覧ください。

今後は国内に限らず様々なアーティストが滞在できるように宿泊施設も併設される予定とのことです。
限界集落である中条という土地に、アートと人の流れを呼び込む事で単なる場所ではなく《場》としての影響力を生み出すことは作家個人のものづくりを社会に深くコミットさせて、より大きくサスティナブルな流れに変えていくことでもあります。




before "before down"


「始まり」をテーマに制作する角居康宏。
オブジェには金属の融ける様子に見出した始原を浮かび上がらせ、錫の道具は時代を超えて使われる可能性を抱きます。
そしてそんな感覚や作品、道具たちを大切にできるような生活を、社会のひとつの在り方として提示しようと試みます。

白白庵では待望の初個展となる今回。
新型コロナ禍の中で角居康宏が見せる「始まり」は新たな世界の在り方へ希望を示すメッセージとなることでしょう。

画像8


〜日はまた昇る 希望とともに〜
The sun will rise again, with the hope.
白白庵 オンライン+アポイントメント限定企画
金工作家・角居 康宏 展
『before dawn』

PAKUPAKUAN presents
Metal artist SUMII Yasuhiro solo exhibition
“before dawn”

【オンライン】
日時 2020年10月9日(金)午前11時~ 19日(月)午後7時
   *会期中の木曜日は定休日のため受注のみ。
会場 白白庵オンラインショップ《PAKUPAKUAN.SHOP》内特設ページ

【ON LINE】
DATE & TIME : 2020.10.9 FRI. 11:00am. - 19 MON. 7:00pm.
*only order correspondence for a regular holiday on Thursday during a session
VENUE : Special issues page on www.pakupakuan.shop

【アポイントメント】
日程 10月9日(金)~ 19日(月)のうち、金・土・日・月曜日 限定
   *火・水曜日はオンライン業務専従日、木曜日は定休日。
時間 午前11時~午後7時 の間で 一時間枠
   *一時間を上限とする来訪枠を設定し、各枠内で最大2名までの受付といたします。
   *3名様以上でのグループのご来訪はお断りします。
   *アポイントは訪問前日の営業時間内までの予約受付を必須とさせていただきます。(原則として電話受付)
   *マスク着用、入口でのアルコール消毒・検温必須。
     感染症予防対策を万全に講じ、事前予約のある方のみ来場可能とさせていただきます。
会場 白白庵(1階エントランスギャラリー)
   〒106-0072 東京都港区南青山二丁目17-14
   TEL&FAX 03-3402-3021
   www.pakupakuan.jp | info@pakupakuan.jp

【Appointment for visiting PAKUPAKUAN gallery】
DATE : Only FRIDAY, SATURDAY, SUNDAY and Monday during 2020.10.9 FRI. - 19 MON.
*Tuesday and Wednesday are online business days, Thursday is a regular holiday.
TIME : 1 hour during 11:00am. to 7:00pm.
*Only less than 3 people will be accepted in each time schedules.
*We do not give the permission to visit to our gallery if visitors will be over 3 members.
*Please call us if you hope to visit us, until in business hours (11:00-19:00) of the day before visit.
*Mask wearing, alcohol sterilization, the thermometry at the entrance are required.
VENUE : PAKUPAKUAN (Entrance gallery at 1st floor)
     2-17-14, Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, JAPAN zip 107-0062
     TEL & FAX 03-3402-3021
     URL www.pakupakuan.jp Mail info@pakupakuan.jp


突然訪れた深く長い暗闇の中、
うっすらと明けやらぬ先を見て
彼は何を思い、形にするのか。
白白庵での待望の初個展は、
コロナ禍における作家の苦悩の痕跡を隠さず
未だ見ぬ新しい世界への希望を込めた
メッセージとなるだろう。

What does he think about and give shape to?
His long-awaited first solo exhibition at PAKUPAKUAN will not hide the traces of the artist's agony in the aftermath of the corona plague, but will be a message of hope for a new world yet to be seen.

2018年長野市中条に表現者の交流や制作の場として設立された「中条アートロケーション《場》」の中心メンバーとして
角居康宏は自身の作家活動とともに地域の人々との交流にも力を注いできました。
全国各地で評価の高い彼の錫(すず)の道具は、日本酒のための器をはじめ日用のカップ、花器、近年では茶道具としても展開され、長く重宝できるものとして愛用されています。
他方、彼のアーティストとしての側面を大きく反映するオブジェの制作においても、美術館での個展など幅広く活躍しています。
白白庵の企画でも2013年から登場し多くのファンを獲得してきましたが、満を持しての初個展となる今回。
奇しくも新型コロナウィルスが蔓延する世界における「新しい日常」が叫ばれる中、現代に生きる作家としての矜持を示す機会となるでしょう。
8月に「長野県 頑張るアーティスト応援事業 テーマ型 対象事業動画制作」としてリリースされた制作動画「曙光 -SHOKO-」には中条における貴重なオブジェ制作風景の一端が収録されており、今回の個展の主役としてその実作品が登場する予定です。
もちろん、幅広い世代に支持される酒器や食器、花器なども新作を多数揃えてお見せします。
一つ一つが高い美意識と実用性を持ち、確かな技術に裏打ちされた逸品を、是非この機会にお試しください。


SUMII Yasuhiro has focused on his own artistic activities as well as interaction with local people as a core member of NAKAJO ART LOCATION "BA", established in 2018 in Nakajo, Nagano City, as a place for exchange and production of artworks by artists. His tin utensils, which are highly regarded in various parts of Japan, have been used for sake cups, pitchers, daily cups, vases, and in recent years, tea ceremony utensils. His works can be used for a long time and are cherished.
On the other hand, he has also been active in the production of objects that reflect his artistic side, such as solo exhibitions at museums. He has gained many fans since his first exhibition at PAKUPAKUAN in 2013, but this is his first solo exhibition after a long wait. This will be the opportunity to show his pride as an artist living in a world where a new type of coronavirus is spreading and people are calling for a "new normal".
The video "-SHOKO-" released in August under the title "Nagano Prefecture Project to support hardworking artists themed type Target Project Video Production" contains a part of the production of his objects made in Nakajo. And the actual artwork is scheduled to be the main feature of this solo exhibition.
Of course, there will be many new pieces of sake cups, tablewares and vases, which are popular with people of all ages. We hope you will take this opportunity to try these masterpieces; each work is highly aesthetic and practical, and is backed by solid technique.


【出展作家】 Artist
角居 康宏
金工作家・彫刻家 / 長野県在住
【略歴】
1968 石川県生まれ
1993 金沢美術工芸大学美術工芸学部産業美術学科工芸デザイン専攻 卒業
【近年の主な出展】
2015 個展(志賀高原ロマン美術館 / 長野)
2016 個展(関口美術館 / 東京)
    個展「層」(ギャラリー川船 / 東京)
2017 個展「野辺」(as baku B / 金沢)
    個展(信州高遠美術館 / 長野)
2018 「シンビズム」(信州ミュージアムネットワーク選抜展)
    「金工 角居康宏展」(アートサロン光玄 / 愛知)
2019 白白庵リニューアルオープン記念企画「南青山大茶湯」(白白庵 / 東京)
    「夏の宵茶会」「煎茶上等 リターンズ」「大縁起物展」(白白庵 / 東京)
2020 「春爛漫 百花繚乱茶会」(白白庵 / 東京)
SUMII Yasuhiro
Metal work artist, sculptor / resident in Nagano pref.
〔Brief Personal Histroy〕
1968 Born in Ishikawa Japan
1993 Graduate from Kanazawa University of Art and Craft
〔Major exhibitions in recent years〕
2015 Solo Exhibition [Shigakogen roman museum] (Tokyo)
2016 Solo Exhibition [Sekiguchi Art Museum] (Tokyo)
    Solo Exhibition [Gallery Kawafune] (Tokyo)
2017 Solo Exhibition [as baku B] (Kanazawa)
    Solo Exhibition [Takato Museum of Arts] (Nagano)
2018 Shinbism(Selection of Shinsyu Museum Network)
    Solo Exhibition [Art Salon Kogen] (Aichi)
2019 PAKUPAKUAN Reopen after renovation Event“Minami Aoyama Great Tea Party”(PAKUPAKUAN / Tokyo)
    "Summer Night Tea Party”, “SENCHA JO-TO / Returns”, "Great exhibition of lucky charm" (PAKUPAKUAN / Tokyo)
2020 "Hundred flowers blooming in profusion" (PAKUPAKUAN / Tokyo)
web site https://www.yasuhiro-sumii.com/


【企画・ディレクション】Direction
石橋 圭吾 (白白庵) ISHIBASHI Keigo (PAKUPAKUAN)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?