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「壺1グランプリ」

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人工物で世界最古のキャンバスは壺であったそうです。
壺に描かれた模様は、回転させることで人類初のアニメーションを生み出し、種壺、水瓶、これらは人類の文明を躍進させることに重要な役割を担い、そして「壺」が生命そのもののメタファーとなったのです。
大きな壺は豊かさの象徴でもあり、時の権力者は装飾華美・絢爛豪華な壺を求めたのです。
テクノロジーの発展はセラミック(=焼物)の技術発展と歩みを同じくし、最新の壺はテクノロジーの先端と同義となりました。
そんな時代が有史以前から、長く長く続いたのです。

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富田啓之「ステーション・ノヴァ」

それが今や。

生活必需品としての壺の機能はプラスチックに覇権を奪われ、物流の発展に伴い、「貯蔵」の重要性は瞬く間に低下してしまいました。
その有用性を奪われた「壺」に残されたのはそこにまとわりつく儀式性や宗教的なミームであり、要するにただひたすら「胡散臭いもの」の代名詞と成り果てたわけです。

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瀬沼健太郎「大壺」

「壺の口を閉じた時に現代陶芸は始まった」
陶芸家:八木一夫(走泥社)

時代の流れによって用途を見失った壺、その口を閉じることは「用」の可能性を塞ぐ事に他なりません。
用途を排除する事で純粋なオブジェクトとしての陶芸を浮かび上がらせ、明治以降分断された「工芸」の枠組みから「美術」へ移行する事を八木は志したのです。

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和田山真央「Rhythm」

そこから五十年。
壺の口を新たな可能性とともにこじ開けるべき時代がやってきました。

「工芸」「美術」の分断は、陶芸の世界では最早ナンセンスとも言える程に崩壊しつつあります。そもそも日本における「美術」とは身の回りのあらゆる事象から「美」を見出す技術でもあります。「美術」というタグは作品そのものや作家本人にのみ属するのではなく、鑑賞者の眼差しにも在るのです。これを見立てと呼び、体系的に発展させたのが茶ノ湯の一側面でもあります。(本来の用途から離れた純粋な美意識の眼差しを向けた結果、茶ノ湯の世界で壺は主に花器として見立てられます。)

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篠原希「窯変壺」

そして今、壺に我々はどの様な眼差しを向けることができるのでしょうか。
その造形美を、土と炎による自然美を、制作者の作為創意を、存在としての面白さを、「用途」に縛られることがないからこそより純粋に楽しめるのではないでしょうか。

「壺1グランプリ」では来場者による投票も開催しています。
審査基準はまさに自由。
閉じたままの口もあれば、どこに繋がるか分からない口も、出口の無い口も、そして器としての口も存在しています。

「パンドラの函」の神話は元来「パンドラの壺」だったそうです。
「パンドラ」は「ありとあらゆるもの」を意味します。
ありとあらゆる壺と未来と希望は、ここ白白庵の壺1グランプリに。

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かのうたかお「パンドラの壺」

皆様の投票を最後までお待ちしております。

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輝け!第一回『壺1グランプリ』

PAKUPAKUAN presents :
New Year special exhibition vol.2
“ The 1st TSUBO-1 Grand prix “

http://www.pakupakuan.jp/exhibition/tsubo1.html

日程 2020年1月18日(土)~29日(水)
   *木曜定休

時間 11:00~20:00

会場 白白庵(会場:3階ギャラリー、1階茶室)
   〒106-0072 東京都港区南青山二丁目17-14
   TEL&FAX 03-3402-3021
   www.pakupakuan.jp | info@pakupakuan.jp

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人はなぜ 壺を愛するのか。
壺は何のために 作られるのか。

悠久の古代から、先端テクノロジーの現代まで
人類を魅了してやまない壺の謎に迫ります。
審査員と来場者による投票で第一回グランプリを決定。
白白庵から壺の未来を発信していきます。

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【出展作家】 Artist (敬称略・五十音順)

伊豆野   一政 IZUNO Kazumasa(陶芸 / 埼玉)
小野澤   弘一 ONOZAWA Koichi(陶芸 / 栃木)
かのう  たかお KANO Takao(陶芸 / 京都)
Keicondo(陶芸 / 茨城)
篠原     希 SHINOHARA Nozomu(陶芸 / 滋賀)
シマカミ リッカ SHIMAKAMI Rikka(絵画 / 鹿児島)
瀬沼   健太郎 SENUMA Kentaro(ガラス / 秋田)
田中    元将 TANAKA Motomasa(陶芸 / 三重)
田村     一 TAMURA Hajime(陶芸 / 秋田)
富田    啓之 TOMITA Hiroyuki(陶芸 / 神奈川)
フクモ   陶器 FUKUMO Touki(陶芸 / 神奈川)
山口    由次 YAMAGUCHI Yuji(陶芸 / 愛知)
山田    浩之 YAMADA Hiroyuki(陶芸 / 滋賀)
和田山   真央 WADAYAMA Masahiro(陶芸 / 和歌山)
ほか

【装花協力・審査員】 Flower arrangement / Judge

山田    尚俊 YAMADA Shoshun(大和花道・家元)

【企画・ディレクション・審査員】 Direction / Judge

石橋    圭吾 ISHIBASHI Keigo(白白庵主宰) 

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http://www.pakupakuan.jp/exhibition/tsubo1.html

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