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音声デバイス普及のためには、保育当事者の関係性分析が大事なのでは?

スマートスピーカーって、どうなの?

一時期とても話題になった「スマートスピーカー」だが、2019年はじめの段階でのある調査では、その所有状況は、6%を少し下回る程度の普及率だったようだ。
https://www.dentsudigital.co.jp/release/2019/0218-00356/index.html

 新しい技術の普及についての理論であるテクノロジー・ライフサイクルの理論によれば、新規のイノベーションが一気に普及し始めるのは概ね普及率16%を超えたあたりからであるとされている。むしろ、新規技術の商品やサービスでは、この普及率に到達できず、結局市場から消えてしまうことが、ままある。この普及率16%を超えた先の市場は「アーリー・マジョリティー」と呼称され、新規性というよりも、実利的に有用かどうかで採用の可否を判断する実利主義の多数派と整理されている。

 目下の普及率を見る限り、日本では、音声コミュニケーション・デバイスであるスマートスピーカーがこの普及層に到達するのは、まだまだ先のことのようだ。

 先の調査結果では、スマートスピーカーを持たない理由として、一般的に言われる「発声の恥ずかしさ」「音声認識精度」などよりも、「利用したいことがない」「どんなことができるのかよく分からない」「スマートフォンやPC、タブレットがあれば充分だから」などといった回答だったそうだ。音声コミュニケーション・デバイスの使い道に困惑している様子がうかがえる。


保育における子どもとの会話パターン

 さて、広い意味での「保育」(子育て)支援のための音声コミュニケーション・デバイスとは、どうあるべきなのであろうか?様々な「実証実験」は行われているが、実務で利用されるようになってものというのは、あまり耳にしたことがない。

 そもそも、「保育」に関連する音声コミュニケーション、すなわち会話、対話とは、どのようなものなのであろうか?

 保育施設における会話、対話の当事者は、子ども本人、保育者、保護者の3者が存在するが、そこに音声コミュニケーション・デバイスが加わると、会話、対話の組み合わせとしては、「子ども本人―デバイス」「保育者―デバイス」「保護者―デバイス」の3パターンが生まれることになる。

 また、3者間の対話、会話もあり得ることから、「子ども本人―デバイス―保育者」「子ども本人―デバイス―保護者」「保育者―デバイス―保護者」といった3つのパターンの3者間会話もあり得ることになる。もちろん、ロボットを含む全4者間の会話ということも想定はできる。

 これらの会話、対話の組み合わせの中で、ロボットの発話の意義、役割は共通なのか、それとも違いがあってしかるべきなのかは、検討すべきポイントだろう。ただ、保育施設というシチュエーションでは、「保育者ーデバイス」という組合せは、あまり意義を見出せないので、当面論じる必要はないと思われる。

 

保護者とデバイス

 まず、「保護者―デバイス」のシチュエーションは、スマートスピーカーの置かれた状況に比較的近い状態と言えるだろう。仮にそのような状態を想定するとすれば、園便りのような情報提供を主に担うことになるのだろう。つまり、「タスク志向型」の会話中心になるのではなかろうか。
 とはいえ、保護者の「子どもに関する問いかけ」に音声コミュニケーション・デバイスが応答していくという機能に発展していくためには、事実関係だけを淡々と情報提供する「レポートトーク」にとどまることなく、保育指針で定めるところの「保育所を利用している保護者に対する子育て支援」の一助として機能することが求められよう。
 そこでは、「保護者との相互理解」が求められており、保育所における子どもの成長や発達を保護者が実感でき、共感を生み出すような話法を備えた、会話機能が必要になるだろう。

 他方で、音声による応答については1ショットでの応答が必要という特徴がある。「巧言令色、鮮(すくな)し仁」ではないが、音声コミュニケーションにおいては、言葉数が多いというのは必ずしも高評価を得られるわけではない。1ショットのやり取り(の応酬)という、それなりに高度な機能が必要になることになる。


子ども本人とデバイス

 さらに、子ども本人と音声コミュニケーション・デバイス一般との関係では、やはり、子どもの発達への貢献を生み出すことができるかどうか、ということが重要だろう。子どもの言語の発達は、モノ(外界)、子ども自身、保育者/保護者の3面関係となる「環境構成」と「関わり」の中で進んでいくと一般的に考えられている。

 となると、「子ども本人―デバイス」というシチュエーションでは、デバイスが保護者(保育者)の立場で、子ども本人のモノ(外界)に対する関心などを喚起するような会話機能が求められるだろう。また、「子ども本人―デバイス―保護者」のシチュエーションでは、デバイス自体がモノとして、保護者の「関わり」を旨く引き出すような発話をすることが求められることになる。

 3者関係の中での音声デバイスについては、3面会話の中で、デバイスが存在する意味がよく分からないところであり、更に研究が進む必要があるだろう。 
 このように、保育、子育てという文脈における音声コミュニケーション・デバイスの利用シチュエーションについては、保育の当事者同士の関係性の分析を進め、その関係性ごとの機能を析出していくことが、その「使い道」理解を促すことにつながり、新技術導入時にーに見られる「普及の壁」を超えていくことにつながっていくのだろう。