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スポーツ施設に収益性を

スポーツはメディアを賑わせるエンターテイメント性の高いコンテンツではありますが、スポーツ業界には昔から一つの大きな課題があります。

それは・・・

『箱(施設)にお金がかかりすぎて維持できない』

ことです。

今回はこの課題について問題提起と解決策の提案をしたいと思います。


Ⅰ:行政管理である

まず、スポーツ施設の収益性が低い理由の一つに、行政が管理していることがあげられます。

しかも、その中でも最もお金儲けに縁の遠い「教育委員会」が主管であることが多いのです。

教育委員会がスポーツ施設の運営に関わること自体に異論はありません。

体育指導などを通した知識や経験が、子供たちの健全育成や地域住民の健康維持に繋がることは間違いないからです。

しかし、教育に予算を割く文化・風習が無いこの国にとって、行政管轄で教育委員会主管の施設に十分な予算が組まれることは滅多にありません

利益を上げることをそもそも目的にしていない行政・自治体が、予算内で維持管理する。

つまり、行政管轄の施設に関しては「お金がかかりすぎている」のではなく「予算頼みで売上が全く足りていない」ことのほうが大きな課題なんです。

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Ⅱ:完成直後がピーク

十分な予算が無い施設にできること。

それは

自ら稼ぐ」か「コストを削減する

のどちらかです。

しかし「行政管轄の教育的な施設」はお金を稼ぐ仕組みや経験に乏しく、結果として「なるべくお金を使わないように」運営していくことになります。

そうなれば当然、最低限の維持管理がせいいっぱいになり、利用料という売上げを上げるための宣伝広告費なぞ使う余地はありません。(そもそも利用料を取っていないところも多いです)

結果として施設はみるみる老朽化していき、最新の設備を導入することもなく利用者はどんどん減っていく。

つまり全国のスポーツ施設の大半は、建設直後が機能性・利用者数共にピークで、「売上利益に拘り、設備投資や増改築・宣伝広告で利用者数を伸ばす」という『成長』が無いんです。


Ⅲ:儲けてはいけない

じゃあ、利用料を上げるなりして収益を上げて、設備投資や宣伝広告にお金をまわせばよい

普通ならそういう発想になりますよね。

しかしほとんどの行政管理のスポーツ施設では、地域住民から「適正」なお金を取ったり、サービス力を上げて値上げをしたり、スポーツ以外の事業を展開するようなことはしません。

それは自治体が直接管理していても、委託されている指定管理業者でもほとんど一緒です。

何故なら、自治体が建てた施設にはそういうルールが設定されているから。

利用料は〇〇円で固定

収益事業は行ってはならない

収益が上がる事業は利益の50%を行政に支払う

こういったルールが結局、「なるべくお金を使わないようにするほうが良い」という判断に繋がる状況を産み出しています。

ウン千万円・ウン億円という建設費用を税金で捻出した自治体が「あんなに税金を使ったのに、まだ住民からお金を取るのか」と言われたくない気持ちは分かります。

また、健康や教育は「お金を払ってまで取り組むものではない」という、地域住民の感覚に合わせざるを得ないことも影響を与えているのでしょう。

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Ⅳ:マネジメントできる経営者が必要

建設した後のスポーツ施設に、多額の予算を組み続ける自治体はなかなかいません。

基本的には予算を下げていきたい(より低い予算で委託できる団体に預けたい)と考えるのが普通です。

結果として維持管理に必要な最低限の予算で受注する民間も、経費の圧縮(安い人件費で設備投資もしない)という戦略で収益を残そうとします。

これではサービスの質は下がり、従業員の質も下がり、利用者も減っていく・・・完全に税金投入額を減らすことが目的になり、建設時に掲げた「地域住民の健康や活力を目的とした、住民の憩いの場」のようなスローガンが悲しく響く『まちのお荷物』になっていきます。


スポーツ施設に必要なのは、収益を上げるスキームと、継続的な施設や設備への投資、スタッフを教育し、事業や企画をブラッシュアップし続け、自力で運営を持続できる力をつけることです。

そのためには教育者や指導者だけではなく、「能力のある経営者」が施設責任者としてマネジメントを担当する必要があり、何より行政が「稼げる施設・稼げるルール」を前提に建設することが求められます。


Ⅴ:無限の可能性

では、スポーツ施設はただの金食い虫か!?という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。

世界中に、自力で維持管理費を稼ぎながら地域住民に利用されているスポーツ施設はたくさんあるわけです。

しかし、それは日本中にある自治体が管理するそれとは少し違います。


例えば「病院や整骨院、売店や保育園が施設の中にある」。

そう、家賃収入です。

人が集まる場所は商売ができる場所ですから、利用者のニーズに合わせたお店を入れて、不動産収入で儲ければ良いのです。


また、集客が見込めるスポーツ大会の誘致も効果的です。

どよ競技スポーツの規格に合う施設か?、近隣に宿泊施設はあるか?、駐車場にバスは何台停められるか?、観客スタンドの収容人数は?

このあたりは建設段階で行政や観光事業者と連携をとり、計画を練っておく必要がありますね。


他にもターゲットを絞った運動教室や中長期的なパーソナルトレーニング。ダイエットに繋がる個別サービスなどは、有料でもニードがあります。

送迎役で来る人をターゲットに、漫画喫茶や文化系のお習い事教室を併設するのもいいかもしれません。

その地域にいる「人の強さ」や名産品などの「地域の武器」を、スポーツ施設で活かす発想が大切です。

つまり、スポーツ指導や経営マネジメントができる人材で運営スタッフを固めることが、最も重要なことなんです。

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Ⅵ:まとめ

莫大なお金がかかる施設だからこそ、どうマネタイズするかは建設前に決めておく必要があります。

建設が始まってから(終わってから)「こういう規格にしておくべきだった」という話になってしまった施設をいくつも見てきました。


そして何より知っておくべきは、一見大きなイニシャルコストより、数年・十数年と経過すれば、蓄積するランニングコストのほうが大きくなるということです。

スポーツ施設は豊かなまちづくりに有効なものですが、建設することでそれが実現するわけではありません。

※『スポーツが持つ「まちづくり」の可能性と大きな課題』にも書いてます


スポーツ施設を豊かなまちづくりに繋げるためには、人を集めるためのマーケティングと、収益を上げられる仕組み、関わる企業や団体への還元、そしてそれらを実現・調整できるマネージャーの存在が必要なんです。


スポーツにはポテンシャルがあります。


しかしその力をスポーツ施設で発揮するには、「スポーツにはお金を払う価値がある」という価値観への自信と、今回提案しているような収益事業を積極的に行えるようにする自治体の意識改革、そして最後に触れた優秀なマネージャーの存在が不可欠なんです。

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